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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第5章

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森の中でお弁当

この顔ぶれで行くのか……。

セリウスは内心で、そっとため息をついた。

本当は、こうなるはずではなかった。

自分がリリアーナに質問を投げ、話に引き込み、その隙にローデンとラニアが自然に距離を縮める――そんな算段だったのだ。

だが現実は。

「この辺りの薬草なら、リリアーナより俺の方が詳しい。何でも聞いてくれ」

そう言って胸を張るエドモンドに対して、

「お引き取りください」

などと言えるはずもない。

その間に、リリアーナは準備を終えていた。

「遅くなっても大丈夫なように、お弁当を用意しました」

そう言って、鞄を軽く持ち上げる。

「それは……夕方まで薬草を採集するつもり、ということかな?」

エドモンドが確認するように言った。

「そうです」

リリアーナは迷いなく、はっきりと答える。

「ほら、ラニアも。薬草を入れる籠、これを背負って」

差し出された籠を前に、ラニアは少し顔をしかめた。

「……面倒くさい」

そうぼやきながらも、結局は大人しく籠を背負う。


エドモンドの案内と説明は、実に的確だった。セリウスが投げる質問にも一切淀むことなく答え、それぞれの薬草が好む環境、適切な採取の仕方、使用方法まで、順を追って丁寧に説明していく。

さすがに、この土地で生きてきた者の知識だ。セリウスも何度か感心したように頷いていた。

その間、リリアーナは黙々と薬草を採集している。慣れた手つきだ。ある薬草には傷めぬように根元を押さえ、必要な分だけの葉を選び取る。

ラニアはその横にしゃがみ込み、無言のまま籠を差し出したり、茎を持ったりと、自然に手伝っていた。

会話は少ないが、動きに無駄はない。長く一緒に過ごしてきたのだと、一目でわかる息の合い方だった。

ただ一人、ローデンだけが違っていた。周囲の気配に神経を張り巡らせ、時折、森の奥や背後に視線を走らせる。薬草にも、説明にも、ほとんど興味はない。

(……こうなるよな)

ローデンは内心でそう呟いた。

セリウスが思い描いていた“狙い”は、どう見ても外れている。

(これは、完全に単なる野外調査だ)

表情には出さず、ローデンは静かに周囲の警戒を続けた。


「随分奥まで来た。ここで昼にして、そろそろ引き返そう」

エドモンドがそう言って立ち止まる。確かに、城からはかなりの距離を歩いてきていた。

休憩場所を決めると、自然と座る位置が定まった。エドモンドとラニアが、リリアーナを挟むように腰を下ろし、セリウスとローデンは、少し距離を取って向かい側に座る。

包みから出てきたのは、手で持って食べられる簡単なサンドイッチと、飲み物。

飾り気はなく、豪華とも贅沢とも言えない内容だった。

それでも――森の静けさと、歩き通しだった身体のせいか、一口かじった瞬間、セリウスは思わず目を細めた。

(……驚くほど、美味いな)

ローデンも同じことを感じていた。

特別な味付けではないはずなのに、不思議と満たされる。

木々を渡る風の音と、鳥の声。

その中で食べるだけで、ただの弁当が、この上なく贅沢なものに変わっていた。


弁当を食べ終え、さて帰ろうかと、皆がそれぞれ荷物を手に取った、その時だった。

「少し、待っていてほしい」

セリウスがそう言い残し、森の奥へと歩いていく。小用だった。

……婦女子もいる以上、できるだけ離れた方がいい。男ばかりなら、こんな気遣いも要らないのだが。

そんなことを考えながら、木々の間を進んでいたセリウスは、ふと足を止めた。

……血の臭い。それに混じる、獣特有の生臭さ。空気が、明らかに変わっている。

近い。

相手は、こちらを見ているのか。それとも、既に間合いを測っているのか。もし、今ここで背を向けたら――襲われるだろうか。

背中を、冷たい汗が伝った。

足に力が入らず、身体が言うことをきかない。逃げることも、振り返ることもできない。


ただ、森の静けさだけが、不気味に続いている。

セリウスは、乾いた喉を鳴らし、つばを飲み込んだ。

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