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蕾の花  作者: 夜凪
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さて、オチです。

…………オチてるのかな?

みなさまこんにちは。

リューシュといいます。

黒目黒髪の美少女です。


自分で「美少女」言うなって?

私も、正直、一族みんな似たような顔をしてるので、自分の顔が特別整ってるって気はあんまりしないけど、まぁ、お世話してくれてる侍女さん達が口を揃えてそう言うので、たぶん、そうなんだろうと思う。

と、言っても侍女さん、2人しかいないけどね。

あとは護衛のおじさんが1人。いつでも部屋の扉の前に立ってます。

正直、とても強そうには見えないけど。

てか、たぶん、素手だったら勝てる自信あるわ、わたし。


ある日突然、視察の名の下やってきた大国の王様に、なんでか目をつけられて拉致られました。

で、王宮に向かう旅路で早速手をつけられかけたんだけど、実年齢言ったら終了でした。


未成年に手を出したらダメだよね〜。

良かったよ。王様の国がそこんところ厳しい国で。

おかげで貞操は守られたんだけど、今更国に返すのもシャクだとばかりに後宮で籠の鳥にされてます。

いや、そこは帰そうよ。

なんなら、ほぼ同じ顔で従姉妹に成人済みの姉さんいますんで。

って、訴えてみたけど華麗にスルーされました。

大人のメンツ、面倒くさい。

素直に間違えましたごめんなさい、すればいいのに。


ここのお城。

山の斜面に建ってるせいで、建物細切れで渡り廊下でつないである状態。

で、後宮は管理のしやすさのためか(ようは浮気予防ね)、本気で断崖の上に張り付くように作られてます。

本宮とを繋ぐ渡り廊下は一本だけで、そこの扉の前には物々しい警護の方々。私の部屋の前にいるおじさんが可愛く見えるレベルで。

そこを通らずに忍んで来ようとしたらまさに命がけな立地に代々の王様の意地を見たもんね。

俺の嫁に手は出させん!的な。

これ作った大工さん、マジでリスペクト。

ちなみに何気なく建築史調べてみたら、何人も落ちてお亡くなりになってました。な〜む〜。


そんな建物のさらに端。

もう、なんかの嫌がらせでしょ、これってくらい端っこの一角にわたしの部屋はありまして。

で、子供に用はない!とばかりに王様はやってきません。

まぁ、ご飯は美味しいし、侍女さん優しいし、文句はないんだけどね。

ただ、なんか成長を手ぐすね引いて待たれてる感がハンパないと言うか……、養殖されてる気分になるんだよね。


自由も制限されてるんで、部屋の中で本読むくらいしかやる事なくて本当に暇。

うちの一族、戦闘狂よりで女でも馬術に武芸一般仕込まれてたから、この閉じ込められてる状況ってかなり辛いんだよね。わたし的に。

体動かさないとストレス溜まる!

そりゃぁ、ため息の1つや2つ出るってもんでしょ。


だいたい、無理やり連れてきた挙句に軟禁生活ってなんなの?

そんで、あと2年くらいして成人したら美味しくいただかれちゃうわけ?

確かに、王様まだ若いしかなりの美形の細マッチョ(襲われかけたから知ってるんだな。なかなかに鍛えられてましたよ?)だけど、…………無いなぁ〜。

だいたい、権力に傘を着て無理やりってのが、まず、生理的に無理。


自分の要求が通って当然って思ってる俺様な態度も鼻につくし、なんで後宮のお姫様、あんなに媚び媚びなんだか。わけわからん。

確かに最高権力者だけど、お外にはもっといい男、たくさんいるよ?たぶん。


なんてことをぐだぐだ考えてぼんやりしてたら、気づいたら大人しい子認定されてた。

実家じゃじゃじゃ馬扱いだったんですけど?

なんなら体術なら同世代の男子には負け知らず、兄様とは五分五分で、師範からは将来有望のお墨付きもらってたんだけど。

あぁ、どこかで「ありえない」って爆笑してる声が聞こえるなぁ。

あいつら、今度あったら覚えてろ?


に、しても、逃げるにもここは断崖絶壁のうえ。

どうしたもんかねぇ……ってぼんやり外を眺めてたら、川向こうの対岸から、光がチカチカ眩しい………って、うん?一族の合図だね、これ。

耳を澄ませば遠く鳥の声に真似た笛の音。

『大人しくしとけ?助けに行く?』


さて。

どうやるのかはわからないけど、とりあえず、成人(タイムリミット)まで1年以上はあるし、お手並み拝見としましょ。

あ、了承の為になんか投げとこう。

これで良いか。

投げたリボンはヒラヒラと綺麗に落ちていきました。

ちなみに暖色が了承、寒色が拒否ね。


そこからは、大人しくホームシックにかかった演技をしつつ、夜中にこっそり筋トレして、連絡待ちのため暇さえあればベランダに出る日々。

リボンやハンカチ、偶然狙って落とすのもめんどくさくなってきたので、最近ではお花を持って出るようになりました。

物落とすのが好きな子供と思われてそうだな……。

まぁ、くるくるヒラヒラ宙を舞って落ちるリボンや花は綺麗だし、ある意味、数少ない娯楽ではあるけど……。


そうして季節が一巡りして、ソロソロ成人(タイムリミット)も近づいてきたなぁって頃に、ようやく逃げる算段がついたんだけど……。

なんと、幼馴染達(あいつら)張り出した露台の下に穴掘りやがってた。

なんでも途中までは天然の洞窟が通ってたみたいで、それを利用したんだって〜〜。

仮にも王宮の下?に穴掘るとか……バカだあいつら。

バレたら首チョンものだよ?


まぁ、固い岩盤掘るバカがいるとは考えもしなかったんだろうから、そういう意味では警備もザルだったみたいで、日中もガンガン掘ってたみたい。

おかげで成人(タイムリミット)に間に合ったって笑ってたけど。


それが間に合わなかったら、忍び込んでの正面突破を目論んでたみたいだから、確かに、穴掘りの方が安全だよね。

本当に良かった、間に合って。

私のために血が流れるなんて、後味悪いにもほどがある。

幼馴染達が負けるとは思わないけど、無傷とはいかないだろうしね。


そうして、フライングで王様が来そうなのを、こっそり顕示欲強い妃の1人に情報流すことでうまく回避した次の日。

自殺偽装の元、うまく露台の下の足場に飛びつき脱出。万が一に発見された時の時間稼ぎも兼ねて、穴を崩し埋め戻しながら駆け抜け、ようやく、自由の身になったんだ。


優しくしてくれた侍女さん達には悪いけど、どうしても生理的に無理な男の嫁になる気にはなれなかった。ごめんね。


幼馴染とハイタッチして、目立つ黒髪を短く切り染め粉で色を変えたら出来上がり。

手摺り越しでない、青い空の下。

私は両手を広げ、大きく伸びをした。

うん、自由だ〜〜!!!


親元に迷惑かけそうだから、しばらくは国許には帰れないからしばらくは放浪生活だって言ったら、なんでか幼馴染と旅することになった。

幼馴染達は幼馴染達で私を逃がすのが万が一バレたら一族に迷惑かかるかもしれないしって、念のため縁切りして来たから帰るに帰れないらしい。

本当に馬鹿だ、こいつら。


ま、世界は広いし、私を閉じ込めようとするものももう無いし、心強い仲間もいるし、楽しもう。

とりあえず、新鮮な魚介類が食べたいから海方面、向かうかな?

幼馴染達と競争するみたいに獣道を駆け抜けながら、いつの間にか私は笑ってたみたい。

久しぶりに声だして笑った自分に気づいて、可笑しくなって、さらに笑いが止まらなくなる。


ねえ、王様?

どんなに豪華なドレスもご飯も、意味がない人間もいるんだってこと、知らなかったのかな?

繰り返される愛の言葉は上滑りして、とっても気持ち悪かった。

例え極上のものを押し付けられたとしても、望まないものなら意味が無いんだってこと、いつか王様に教えてくれる人がいると、いいね?

バイバイ!







こうして、籠の鳥は逃げ出したのです。


読んでくださり、ありがとうございました。


遊牧民族のイメージです。

体が資本だよね、と幼い頃からみんな鍛えられる→幼馴染で競争→戦闘狂、な、感じ。


土地に固執しないので、嫌になったら一族揃って国を出ちゃうくらい自由なので、女の子が逃げたのがバレたところであまりダメージはないと思われます。

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