13:神剣破壊
前日投稿前にキャンセルしたようで、2話同時投稿です。
71部に当る12話もありますので、ご注意下さい。
「この世界を救う為に、惑星を創ります」
開幕からデッドボールだったようだ。俺の言葉にその場の全員が何も反応をしない。
「す、すまないネ。順番に説明してくれるかな?」
そんな中、オルゲンさんが申し訳無さそうに言ってくるが当然だと思うので俺も謝る。
「いえ、俺が色々飛ばしすぎましたね。で、説明するにあたって神剣達にはお願いがあるんだ。君たちが個人であるならば、爺さんへ報告するのは全部聞き終わってからにして欲しい。これから話す内容は爺さんにとって不利益な計画だ。だけどもし上手く行ったなら、この世界で暮らす生命体は晴れて自由になれる。どうかそこを最後まで聞いてから判断して欲しい」
真摯に丁寧に言い含める。最後の証明が終わるまで、俺も半信半疑だ。だからこそ一緒に見届けて欲しいと思う。
『都合の良い話だな。だがお前は本心で言っているのだろ?』
「勿論、これが頭痛を我慢してるように見えるならしょうがないですけどね」
『……ふむ。個人であるならば、か。言葉通り我らは父上の作りし物だが、完全に支配されている人形という訳ではない。そこも関係があるのか?』
「有ります。勇者の方々もどうか聞いて欲しい。正直、言いだしっぺで既に色々と行動してる俺が言えた義理じゃないけど、一緒にこの道で良いのか考えて欲しいんだ」
その言葉を聞いてグルグさんが近場の手ごろな岩に腰を降ろす。
「お前の話を聞けと俺は感じる。『イグニス』も従え」
『まぁじっと待機してるよりはマシだからな』
「有難う御座います」
「僕は元よりそのつもりダ。『エアリア』も良いネ?」
『拒否したい所だが、報告するにも全容を知ってからでも遅くないだろう』
「有難う御座います」
「わ、私は先輩の意見を聞いてみたいです!」
『理解出来る話なら賛同しますが、万が一にも危険と判断したら私はすぐにでも敵と見なします。それでも宜しいですか?』
「勿論」
取りあえず聞いて貰えるようで安心した。そこに遠くから真由の声が聞こえてくる。
「あにぃぃぃ! 『フォレスティア』の人~~~!」
「イヤアアアアアアア?!」
地面に激突するんじゃないかってくらいの速度から、翼を広げて急ブレーキ。吊り下げジェットコースターより安易な両腕だけのフックを起点にブランと悲鳴の主が大きく揺れた。
「もうやだ……おうち帰りたい……」
「あにぃ、後は?」
「えーと、『ガミネラ』の人かな」
「おっけー! いってきまーす!」
「あんまり怖がらせるなよー」
また羽ばたいて、ぶっ飛んでいく真由。色々と流してるが、全部終わったら説教しようと心に決めている。
一旦話を中断し、ぐったりしている少女……かな。アルマと違って顔の作りも四肢も動物の鹿に近い亜人勇者に声を掛ける。
「えーと『フォレスティア』の方で良いですかね?」
「ニンニー・ポリアです……ちょっと……休ませて」
「あ、はい」
頼むように上げた前足、鹿のような外見なので蹄かと思ったが三本の指のような形になっていた。どうやら二足歩行はする様だ。
復活まで時間が掛かりそうなので話を進めようとすると、どうせなら全員揃うまで待てとグルグさんに止められる。
「二度手間になるだけだ。さっきの娘の速度ならそう変わらないだろう」
『すげぇよな。あれが『フリオニル』の勇者か。『エアリア』も顔負けの飛行だな』
『いえ、速度なら私の方が上かと。まぁオルゲンしか耐えられませんが』
『俺も誰か運ぶと消し炭になっちまうからな。ありゃ便利だよな』
『わたしのニンニーが死んじゃうかと思ったのよ、乗り心地は最悪なのよ』
談笑する神剣達の声、最後の声が『フォレスティア』か。ちょっと幼い感じの少女の声、妖精族を彷彿させるそんな感じの声だ。
『で、どうなってるのよ? 勇者が一同に介するとか、聞いた事も無いのよ』
「すいません、ガミネラの方が来たらもう一回話しますんで」
『まだ来てないの! わたしを待たせるなんて、あの子は本当にノロマなのよ!』
別にガミネラの人が悪い訳じゃないんだけどなと苦笑しながら、遥か遠くで行われている怪獣大決戦に目をやる。
黒い方の触手が巻き付き、それを爪で切り裂いて逃れるドラゴン。引き際にまた光線を吐いて、黒い方の一部が吹き飛ぶがすぐに内側から再生されていく。
その光景に少しでも自分が割って入れると判断した真由に頭が痛くなってくる。あの羽は元に戻るんだろうか……。
そんな事を考えながら待つこと暫し、先ほどより明らかに時間が掛かったが真由が戻ってきた。その手に提げているのは人では無く、お寺にあるような釣鐘状の金属だった。
ドスンとそれを地面に置いて、真由が言う。
「お待たせ~『ガミネラ』の人。ちょっと説得に時間掛かっちゃって」
「人……?」
鏡面のようにツルツルとした質感のメタリックな塊を凝視する。こういう生命体なのだろうか。触れようとすると、その中から声が上がる。
「形状変化、『全身鎧』!」
「うおぉ?!」
プレス加工でもするように、プシュンと人の形に圧縮される釣鐘。次第に細部の装飾がなされ、重厚な鎧姿の騎士だけが残った。
「どうも人相が悪いようでな、このまま失礼する。俺はウピヤエ、『ガミネラ』の勇者だ」
言いながら差し出してくる手を握り返しながらヘルメットの隙間を覗くと、赤い光がギョロリと動いた。人相……別次元の物じゃないだろうか。
それにしても神剣を変化させて鎧にしているのか。剣ってなんだっけと根本を考えさせられる発想だ。
「この格好じゃないと子供が泣くんだよ……」
「は、はぁ……」
この人もそれなりに苦労したのかなと察してしまうが、こうして話して居る分には普通の人だ。別に中身をどうしても見たい訳ではないので揃ったメンバーにお辞儀をして本題に入る。
「『フォレスティア』さんと『ガミネラ』さん。他の方には同意して貰ってますが、これから話す内容はどうか聞き終えるまで内密に。その後の判断は個々に任せます」
『それはさっきイグニスから聞いたのよ。面白そうだから黙ってろって言われたのよ』
『私ハ、ウピヤエノ判断ヲ尊重シマス』
電子合成音かな……『ハイランド』も大概だと思ってたけど、他も結構パンチが効いてる気がする。確かに外見に差異の無い奴らが個々を主張しようとするとこうなるのかなと少し考えてしまう。
「勿論、私に異存は無い。話を聞く為に態々空輸までされて来たのだ。帰るにしてもその時は歩いて帰るぞ?」
「時間が掛かったって……」
「高い所ダメなんだって」
俺の話が信用出来ないとかじゃないんだ……。近藤のような奴を想像していたが、俺と大差無いお人好しが多くて少しホっとする。もしかしたら近藤もこういう傾向があったのかもしれない。そう思うと少し心が痛む。
「では、最初はまずどうしてこうするのか。そこからですね」
その男が願った搾取するだけの神からの解放。せめてそれだけでも叶えてやりたいと俺は話し始めた。
◆
「この世界、アルテミアは閉じた世界です。七つの浮遊大陸と、小さな移動用の浮島。そして根底に封印された邪神。その要素だけしかない世界なんです」
「まさに神の箱庭か。星が見えないのも、星がそもそも無いからと言う事か?」
グルグさんの発言に頷いて肯定して、話を続ける。
「その通りです。この世界の目的は邪神を封じ、尚且つ爺さんが生命体の管理を練習する場所なんです。だから他の要素は必要無い。初めての挑戦だから手に負える範囲でしか創って無いんです」
『それでも父上はこの世界の管理をしっかりとしています。そこに何も問題はありません』
「そう、管理はしているんだ。でもその方法が違うんだよ『フリオニル』。皆さんに伝えたいのはその管理の方法だ。皆さんの故郷がどういう手法でやっているか判りませんが、例えば農作物が沢山採れて今の倍の面積を埋めるだけの種が手に入ったとします。ニンニーさんの世界ならどうしますか?」
「えー、普通に農地を増やして二倍育てれば良いんじゃない?」
「グルグさんなら?」
「同じようにする。農地の候補が無いなら余った分は売るなりするな」
「そうです。農地があるなら育成、無いなら余った分は処分しなくてはなりませんね」
「……ちょっと待ってくれ給エ。もしかして君が言いたいのは、魔族が定期的に攻めてきて大陸の生命体を殺す理由がそれだとでも言いたいのかイ?」
「その通りです」
「思った以上に……嫌な話をしてくれるネ」
かき上げていた前髪を垂らしながら、オルゲンさんが頭を抱える。他のメンバーも同様に渋い顔だ。
「ここは爺さんの世界。存在する生命体や現象に法則を定められる。封じている邪神には『定期的に生命体を殺す邪悪な存在』と定義して備蓄する神力を消耗させ、尚且つ『勇者には勝てない』と定義された部下を作るだけの存在です。勇者さえ居ればある程度で被害は収まり絶滅の危険も無い。更に拘束して管理している罪人の力も削げ、自分の将来の練習にもなり、そこに住まう生命体からは恩人として信奉される。爺さんに利益ばかりの理想郷、それがアルテミアです」
放っておけば賑やかしい神剣達すら黙ってしまった。俺の話に何一つ矛盾を見出せないのだろう。推論だと一笑するだけで簡単に否定は出来る。だけど、もし本当ならと考えればそんな軽い内容じゃない事くらい判ってくれるはずだ。
『わたし達は邪神を封じ、その悪意から生命を守るために造られた。そう言い聞かされたのよ。現に貴方の話でもわたし達の役目は同じ物、とう様の言葉に何も間違いは無いのよ』
「貴方達にとってはそうでしょうけど、貴方達はそこじゃない。存在自体が邪神と同じように創り変えられているんです」
『どういう事なのよ?』
少年神の言葉を思い出しながら『フォレスティア』に語りかける。
「貴方達の本分は邪神、いえ、『神を封印する力』です。最高位の神が自分の領地を任せた他の神を戒めるために行使する力。邪神を拘束するに当って爺さんでは手に余るその権能を、爺さんを信頼して預けた力そのものなんですよ」
『そんな事ある訳無いのよ! わたしの最初の記憶はとう様のお膝の上だったのよ!』
「元はただのこの世界風に言えば『封印術』だった純粋な力に、自然の摂理を模倣した属性を与え、捻じ曲げて自分の分体に閉じ込めた。それが本体だと思っている貴方達の核という奴です。だから正確に言えば今の貴方達が産まれたのはその瞬間。親というのは間違いでは無いかもしれません」
『そんなの証拠が無いのよ! ニンニー、帰るのよ! この子おかしいのよ!』
「証拠は今から見せます。そしてもし俺が間違っていて、騙されてるだけだったなら、好きにして下さい」
証拠の提示。俺の仕事の大部分はここに集約されるだろう。その為に指示を出す。
「真由、『ジャッジメント』を連れてきてくれないか。それで証明する」
◆
少年神の語った未来像、俺の希望する幸せな未来。それが本当に善意での提示だったのか、ただの悪魔の囁きだったのかこれでハッキリとする。
俺は自分の願いが叶うならと信じて賭けた。今更だがこれこそ傲慢じゃないかと思う。万が一失敗したらどれだけの迷惑が掛かるというのか。
自分の弱さを情けなく思う。信憑性も曖昧な甘い誘惑に乗り、行動している自分。だが、俺はあの少年神の熱意というか純粋に俺達を心配してくれているという気配に嘘は無いと判断した。
何回も騙されて尚、簡単に初対面の胡散臭い美味しい話を信じる自分にほとほと呆れるが、それ程までにその提案は俺にとって憧れる物だった。
そして今、目の前にある氷漬けから解放された神剣。これの核とされる部分を割る。少年神はそれで解放されると言っていた。
在り様を捻じ曲げ、封じ込め、属性という概念を混ぜ込んで尚支配には届かぬ最高位の神の力。それが解放されるらしい。要するに割って当たりが出たら俺の勝ち、単純な事。
一同が見守る中、まずは余計な邪神の方の黒い宝石を割る。質が悪いのか、簡単に割れて声が聞こえてくる。
『感謝する『ハイランド』の勇者よ。その節は迷惑をかけた』
「気にしないで、俺も似たようなもんだし」
礼節を重んじる騎士のような、男の声。『秩序』を司るのに相応しいと思う。
「今から何をするか判りますか?」
『話は聞こえていたし想像も付く。主も無く、支えていた大陸すら今や手を離れた私には最適の任務だろう』
「怖くは……無いですか?」
『死という概念は判らない。ただツカサの最後の夢が叶う可能性があるのならば、それでも良いかなとは思うよ』
「失敗したら化けて出てきて下さい。何百回でも御仕置きの雷受けますから」
『そうならないように祈ろう。兄弟達よ、これは私の意志だ。手出しは無用』
『見届けてやる、安心しろ』
『ハッハ、骨は拾ってやるぞ。ああ、俺達なら破片か』
『止めるのよ! 今は世界の安定に力を貸してないけど、絶対にそんな事ダメなのよ!』
『破壊は何も産み出さない。しかし、もしこれが本当なら私達は道を決めねばなりません。本当の安寧の世の中、マリエルとその子供には歩んで欲しい』
『『ジャッジメント』ノ意思ヲ了承シマシタ。静観致シマス』
『こんな事間違っています。マユ、早くこの邪魔な宝石を外すのです。一刻も早く父上に報せないと』
外野の声を他所に『ジャッジメント』に透明な宝石を押し込む。これで準備は全て終わったはずだ。
『相当硬いはずジャン。僕を使うジャン』
「変な気使うなって。これは俺の責任、全部俺がやる。それに今お前引っこ抜いたら大陸全部落ちちゃうだろ?」
地面に埋まったままの『ハイランド』にそれだけ言って、無造作に置かれた『ジャッジメント』の真上に陣取る。
「それじゃ、行きますよ」
『一発で頼むぞ。何回もは御免だ』
深く深く深呼吸をする。この一発で、この道が正しいのか決まると言っても過言じゃない。神剣を破壊し元の力として解放、少年神の言葉を信じさせる。
この場に居る誰もが知らない、神のみぞ知る真実を証明する。もし失敗したら本当にただの道化。変な神に唆されて世界の滅亡に手を貸した罪人。
しかし、成功したら。今よりも数段マシな世界が見えてくる。魔族とかそういう不条理な脅威に怯えない、普通の世界になる。そう信じて。
「我が足は、大地を揺るがす!」
俺の理想は本当に都合の良い物だと思う。別の世界の人達と笑顔で暮らす日常。そこには誰もが居て、騒がしく賑やかな平和な風景。全ての要素を無視した奇跡でも起こらねば叶わないはずのそんな未来。
「神力<大地の膂力>!!」
ありったけのマナで片足だけ強化し、願う。
「勇者ってんなら、一回くらい奇跡起こせってんだよなぁ!!!」
心からの叫びと共に、神剣の輝く宝石を踏み砕いた。そのまま地面まで踏み抜いて、柄の部分事へし折った状態の刀身が跳ねる。
カランと音を立てて地面に落ちた剣に変化は無い。再生する事も無く声も発しない。
『やっぱり嘘じゃないのよ! あんたその協力者に何かされて勇者じゃなくなってるのよ! もしくは頭痛を我慢しているのよ!』
静寂の中で『フォレスティア』だけが騒ぎ立てる。兄弟が破壊された光景のせいか、他の神剣達は何も言葉を発しない。
刀身は沈黙したまま、失敗という言葉が頭を過ぎる。やはりそんな都合の良い話は無かったのだろうか、俺の願いはそんなにも遠い物だったのだろうか。
『ニンニー、何してるのよ! 逃げるか戦うかするのよ! ああ、とう様にも報告をしないと』
「駄目! 『フォレスティア』待って!」
失敗したと放心する俺の変わりにニンニーさんが叫ぶ。そしてそれに返事をするようにジジっと電気の走るような音が聞こえた。
『『ハイランド』の勇者、君は証明された』
つい先ほどまで話していた相手の声に振り返る。飛ばされた刀身の表面を走る何本もの小さな稲妻が目に入った。
『兄弟達よ、この私が保障する。『ハイランド』の勇者に従え! 我ら主の力を己が物とし、更に主の子供らから搾取するだけの世界に我らが主の怒りは果てしないだろう! 我らの本分は罪人の拘束、それを思い出せ!』
響く声にまずグルグさんが立ち上がる。
「決まりだ。『ハイランド』の勇者……サカカミだったか? 水晶を寄越せ」
言われて慌てて取り出すと、奪うように一つ手に取り自身の神剣に語りかける。
「これでコレすら洗脳用具だったらと考えたらキリが無いな。どう思う『イグニス』?」
『お前が正しいと感じるなら間違ってないんじゃないか? いつもそうだろ?』
「違い無い、俺は俺の勘を信じる。覚悟は良いな『イグニス』」
『手加減はしろよ? そっちの水晶まで壊れたら駄目だろうしな』
グリとねじ込んで、神剣を天に向かって放り投げるグルグさん。おもむろに空手のような構えを取り、叫ぶ。
「我が熱意、全てを焼き尽くす! 神力<浄化の炎>!!」
落ちてきた神剣の赤い宝石を狙い違わず拳で打ち抜き、液体が蒸発するような短い音と共に拳が当った場所が消え去った。想像以上に地味だが物騒な術に思わず震える。
「な、何ですか今の……」
「触れた場所を蒸発させただけだ」
「ありえねぇ……」
簡単に言ってくれるが、やっぱり単純に力持ちになるだけでは生き残れない世界のようだ。立っている場所が違いすぎる。
ビクビクしながらも他の勇者に宝石を配布していく。拒む者は居なかったが、ユーニさんとニンニーさんは自分では壊せないと俺とグルグさんで代行する事になった。
『やだー! やめるのよ! わたしはこのままで居たいのよー!』
「我が熱意、全てを焼き尽くす! 神力<浄化の炎>!!」
ジュ。
容赦ねぇな……あの人だけは絶対に敵にしないようにしよう。戦闘民族の気配を感じる。そんな事を思いながら、足元の『アクエリア』を見る。
『必要な事と理解しました。さぁ一思いにお願いします。覚悟は出来ています』
やり辛い。何かこう処刑前の聖職者みたいで、修道女の幻影さえ見えるようだ。
「じゃ、じゃあいきますよ?」
『この身が果てて生まれ変わっても。マリエル、貴方の幸せを祈っています』
「あ、あぁぁあ……」
ヘナヘナと力が抜ける。別に死ぬ訳じゃないってのは『ジャッジメント』で判ってはいるのに、どうも罪悪感が先に出る。困り果てた俺の横からグルグさんが一発で処理してくれた。
「ふっ、度胸があるのか無いのか判らん奴だな。神に歯向かうくせに、物は壊せんのか」
「物っていう感じでも無いじゃないですか、俺にとっては一人の人間ですよ」
「珍しい考えだ。だが、判らんでもないな」
そのまま真由の方に呼ばれて行ってしまったグルグさん。
俺は地面に埋まったままの神剣へと近寄る。感慨深くその姿を見つめて、優しく問いかける。
「何か言い残す事は?」
『あの……何で僕だけ引導渡すみたいになってるジャン?』
「生まれ変わったら、その語尾治ってると良いな」
『病気みたいに言うなジャン!』
「色々あったよなぁ、良い思い出だったよ」
『だから故人を偲ぶようなのやめるジャン! 死ぬの? 死なないよね?』
「お前が居なくなっても折れた先の刀身は残る。皆お前を忘れないよ!」
『た、助けてー!』
叫び出したのを無視して神力を発動させる。
そこでふと、復活した後が性格が似た別物かもしれないと考えてしまう。
「ありがとな、結構楽しかった」
そこまでの冗談とは少しだけ違う口調で言ったが伝わったかどうか。
そしてその気持ちを抑える為に黒剣を持った自分を思い出す。これは必要な事、殺すわけじゃない。だがやり辛い気持ちを抑えるように、今までの鬱憤を思い出す。
「一度……本当に一度だけでもへし折りたかった」
『ジャン?』
「人を小馬鹿にして、重要な事を言わないで、ジャンジャンうるせぇその口調」
『ソ、ソウジ? 何かこの前みたいな顔に……』
カッと目を見開いて右足に力を込める。最早迷い無し!
「死ぃぃぃねぇえええ!」
『やっぱり殺意しか感じられないジャン?!』
思い切り振りぬいた右足。パッキーンと澄んだ良い音がして俺の長年の鬱憤は晴らされた。ちょっと清々しい気分になったのは内緒にしておこうと思う。
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