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帰れない勇者パーティーがうちに住みつきました  作者: leemero


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妙な違和感

八月に入った。

グリーンハイツドラゴンの廊下には朝から蝉の鳴き声が響いている。

外へ出るだけで汗が滲むような暑さだった。

それでも住人たちの日常は変わらない。

有斗はホームセンターへ。

莉愛奈はスポーツジムへ。

瀬玲奈は買い物へ。

しおりは今日も部屋に籠もっている。

そして部長は窓際で昼寝をしていた。

平和な一日だった。

「有斗くん」

昼前。

ホームセンターの売り場で商品整理をしていると、先輩スタッフが声を掛けてきた。

「これお願いできる?」

指差した先には大きな棚があった。

かなり重そうだ。

有斗は頷く。

「分かりました」

そして普通に持ち上げた。

周囲のスタッフが固まる。

有斗は気付かない。

本人にとっては当たり前だった。

昼休み。

休憩室でおにぎりを食べながら窓の外を眺める。

駐車場には何台もの車が並んでいた。

その中に一台だけ目を引く車があった。

黒いセダン。

高級そうな車だった。

どこかで見た気がする。

そう思った。

だが理由までは分からない。

しばらく見ているうちに車は走り去っていった。

それだけだった。

夕方。

仕事を終えて帰宅する。

共有スペースでは瀬玲奈が夕食の準備をしていた。

味噌汁の匂いが漂っている。

莉愛奈も帰宅したばかりらしい。

制服姿のまま麦茶を飲んでいた。

「おかえりなさい」

瀬玲奈が笑う。

有斗も自然と頷いた。

少し前なら想像もできなかった光景だった。

食事中。

有斗はふと昼間のことを思い出した。

「なあ」

全員の視線が向く。

「誰かに見られている気がした」

静かな食卓にその言葉が落ちる。

「見られてる?」

葵が聞く。

有斗は頷いた。

「敵意はない」

「知り合い?」

「分からん」

それが正直な答えだった。

知らないはずなのに。

どこか引っ掛かる。

そんな妙な感覚だった。

莉愛奈は真面目な顔になる。

「護衛は必要ですか」

「いや」

有斗は苦笑した。

「大丈夫だ」

そこまで大事ではない。

少なくとも今は。

しおりがスマホから顔を上げる。

「人気者」

「何がだ」

「ホームセンターの」

有斗は意味が分からなかった。

瀬玲奈が吹き出す。

葵も笑う。

莉愛奈だけが少し考えていた。

本当にそうなのかもしれないと思ったらしい。

食後。

有斗は共有スペースの窓から外を見ていた。

街灯が点き始めている。

どこにでもある住宅街だった。

それでも違和感だけは消えない。

自分でも理由は分からない。

だが勇者として戦ってきた経験が告げている。

何かが近付いている。

そんな気がした。

その頃。

駅前の高級マンション最上階。

広い部屋の窓から夜景が見えていた。

一人の男が静かにコーヒーを飲んでいる。

机の上には数枚の書類。

その中の一枚にはグリーンハイツドラゴンの写真が写っていた。

男はしばらくその写真を見つめる。

やがて小さく息を吐いた。

「……そうか」

それだけだった。

何を考えているのかは分からない。

男は書類を閉じる。

そして再び窓の外へ目を向けた。

夜の街は静かだった。

有斗はまだ知らない。

自分を見ている人物がいることを。

そして。

その人物との再会が、もうすぐそこまで迫っていることを。

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