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帰れない勇者パーティーがうちに住みつきました  作者: leemero


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「公園の勇者」

はじめまして。

『帰れない勇者パーティーがうちに住みつきました』を読んでいただきありがとうございます。

この物語は、異世界からやって来た勇者たちと、ゲーム会社で働く女性が織りなす現代ファンタジーです。

剣も魔法もない日本で、勇者たちがコンビニや電車に振り回されながら生活していく日常を中心に、少しずつ物語が広がっていきます。

ゆっくりとした共同生活を楽しんでいただけたら嬉しいです。

それでは、本編をどうぞ。

六月某日。

休日。

小鳥遊葵は公園のベンチに座り、缶ビールを片手にスマートフォンを眺めていた。

画面には遊び慣れたRPGゲーム。

魔王城最終決戦イベント。

勇者が仲間たちと共に魔王へ挑む。

そんなありきたりな展開だった。

「仕事でもRPG、休みもRPGか……」

苦笑する。

ゲーム会社勤務。

二十八歳。

独身。

恋人なし。

最近は残業続き。

休みの日くらいは何も考えたくなかった。

公園では子供たちが遊び、犬の散歩をする人が通り過ぎていく。

平和だった。

とても平和だった。

だからこそ。

その異変は誰の目にも明らかだった。

突然。

空気が震えた。

ビリッ、と耳鳴りがする。

「……なに?」

葵が顔を上げる。

目の前の空間が歪んでいた。

まるでガラスの向こう側が波打っているようだった。

周囲の人々も足を止める。

ざわつきが広がる。

そして。

閃光。

思わず目を閉じた。

次の瞬間。

ドンッ、と何かが地面へ落ちる音が響く。

恐る恐る目を開く。

そこには。

四人の人間が倒れていた。

「……は?」

黒い鎧を纏った青年。

金髪の女騎士。

銀髪のエルフ。

白い法衣の少女。

まるでゲームの中から飛び出してきたような格好だった。

だが。

コスプレにしては妙だった。

全員が傷だらけだった。

鎧はひび割れ。

マントは焼け焦げ。

剣には無数の傷。

つい数秒前まで本当に戦っていたかのようだった。

「救急車!」

「大丈夫ですか!?」

周囲が騒ぎ始める。

その時。

黒い鎧の青年が目を開いた。

青い瞳。

鋭い視線。

彼はゆっくりと起き上がる。

そして周囲を見渡した。

高層ビル。

信号機。

車。

見慣れない景色。

青年は眉をひそめた。

「ここは……」

その声には戸惑いが混じっていた。

続いて女騎士も目を覚ます。

「勇者様……!」

勇者。

その言葉に葵は反応した。

ゲームのやり過ぎだろうか。

頭がおかしくなったのかと思った。

しかし。

誰一人笑っていない。

全員が真剣だった。

青年は立ち上がる。

周囲の人々が後ずさった。

「魔王は……」

その一言で空気が凍った。

葵は思わず顔をしかめる。

勇者。

魔王。

女騎士。

エルフ。

神官。

どこをどう見てもファンタジーだった。

十分後。

パトカーが到着した。

警察官が状況を確認する。

当然だ。

公園に鎧姿の集団が突然現れたのだから。

「落ち着いてください。お名前をお聞きしても?」

青年は警戒しながら答えた。

「アルト・レイヴァン」

警察官がメモを取る。

「ご住所は?」

「レイヴェルト王国王都」

警察官のペンが止まる。

葵も思わず顔を覆った。

「職業は?」

「勇者だ」

終わった。

完全に終わった。

女騎士も似たようなものだった。

エルフも神官も説明が通じない。

警察官の顔から笑顔が消えていく。

一方で四人は本気で答えている。

噛み合わない。

どう見ても噛み合わない。

葵は深くため息を吐いた。

「面倒なことになったな……」

ぽつりと呟く。

すると。

不意に。

勇者――アルトと名乗った青年がこちらを見た。

その目には警戒も敵意もなかった。

ただ。

純粋な困惑があった。

道に迷った子供のような。

行き場を失った人間のような。

そんな目だった。

葵は頭を掻いた。

そしてもう一度ため息を吐く。

「はぁ……」

本当に面倒だ。

関わらない方がいい。

そう思う。

思うのだが。

放っておくのも後味が悪い。

それが小鳥遊葵という人間だった。

ただ一つ分かっていたことがある。

それは――

この四人を放って帰ったら、

きっと後悔する。

それだけだった。

その判断が。

後に彼女の人生を大きく変えることになる。

まだ誰も知らない。

読んでいただきありがとうございます。

長編になると思うので楽しかったと思ってもらえたらお気に入りにしてもらえたら嬉しいです。

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