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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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パンがない日、ミルミは暴走する

パンがない朝って、どうしてあんなに世界が終わったみたいに感じるんだろう。


冷蔵庫を開けて、そこに「いつものもの」がないだけで、

なんだか心までスカスカになる。

たかがパン、されどパン。


ホワイトガーデンの住人たちにとって、焼きそばパンはただの食べ物じゃない。

それは、“日常”であり、“安心”であり、そしてちょっとだけ“愛”でもある。


今回は、そんな焼きそばパンを愛してやまない少女──ミルミが主役。


彼女が“パンのない朝”にどうなってしまうのか。

そして、仲間たちがどんな風に彼女のために動くのか。

ギャグとほんのり感動が混ざった、パン騒動の物語をお届けします。

──朝。ホワイトガーデン。


 


陽の光が差し込むキッチンに、爽やかな鳥のさえずり。

草花の香り。湯気の立つ紅茶。……完璧な朝。


 


なのに、ミルミの顔は──


 


「…………ない」


 


冷蔵庫(通称:パンどん)の前で、彼女は呆然と立ち尽くしていた。


「……うそ、うそうそうそ……!えっ……ないじゃん!?ないじゃん!!?」


 


パンどんの中は、スッカラカンだった。


クロワッサンも、ベーグルも、カレーパンすらない。


あるのは空気と絶望だけ。


 


「焼きそばパンが……一個も……ないうううう!!!!!」


 


バァン!!!


キッチンの扉が吹き飛び、ミルミが超音速で廊下を駆け抜ける。


 


「たいへん!!やばい!!ちょっとマジで!!セリスちゃああああん!!!!!」


 


セリスティアの部屋の扉がバゴォ!!と開く。


「ふぁ……え……? なに?ミルミ……???」


 


「起きて!!今すぐ起きて!!重大事件発生中なの!!」


「え? なにが……?」


 


「パンがっ!!焼きそばパンがっ!!この世から消えたあああああ!!!」


 


「……また夢の話じゃなくて?」


「リアルなのっ!!現実世界でパンが断たれたのっ!!!」


 


ガチャ。リビングからカグラが顔を出す。


「おいおい、朝からデカい声で……って、は? パンどんが空だと!?」


 


一気に空気が変わる。


カグラが額に手をあててうなだれる。


 


「ああ……そういや昨夜、セリスが最後のパン食ってたな……」


「食べました(キラキラ笑顔)」


 


「おまえかーーーーーー!!!」


 


ミルミがセリスティアに飛びかかる。


「なんでよおおおおお!!!なんで食べちゃったのおおお!!」


「だって!ちょうど湯気が完璧だったのよ〜〜〜!!」


「その湯気!!私のぶんだったあああああ!!!」


 


リビングは朝から修羅場モードに突入。


シオンが通りかかり、一言だけ。


「……またパンが滅びたか」


 


(──ホワイトガーデン、朝からパンの危機。)


 


だがこれはまだ、序章に過ぎなかった。


ミルミの“パン欠乏”は、やがて**暴走進化バースト**を引き起こす。


──数分後。


 


ミルミはホワイトガーデンの屋根の上を跳ねていた。


 


「パン〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


 


その姿は、完全に“狩人”。

パンという名の獲物を求めて、庭から屋根、さらには井戸の中まで駆け回っていた。


 


「違う!この空気はあんドーナツの匂い!!焼きそばじゃないッ!!!」


 


ミルミは鼻をひくつかせ、何かを感じ取ると一瞬で方向転換。

それを見たシオンが、ぼそっとつぶやいた。


 


「……完全にパン探知型生命体と化してるな……」


 


セリスティアはお茶を飲みながら、ぽつり。


「……パン切れのときのミルミって、いつもより魔力が“濃い”気がするのよね」


 


「いや、てかあいつ重力無視して跳んでんぞ!?」


カグラが叫ぶ先で、ミルミは木の上から2回転半ひねりで空中ダイブ中。


 


「見つけたーーーーっ!!あれは……焼きそばパンの残り香!!!」


 


地面に落ちる寸前、地を蹴って壁を走り、物干し竿を飛び越え、

ついにはホワイトガーデンの結界装置に頭から激突。


 


バチッ!!


 


「ぎゃーーーー!!焼きそばパンの気配があったのにーーー!!!」


 


「……結界、無傷か。すごいな、あのパン防衛力」


「ちがうでしょ!ミルミの身体がやばいのよ!!」


 


パンどんの扉の前では、カグラが冷蔵庫を開けたり閉めたりしながらぼやく。


 


「いやマジでどうすんの?マジで一個もパン残ってないぞ?」


「近くの町で買ってくる?」


「間に合う? あのテンションで昼まで持たないわよ……」


 


そのとき、ミルミがリビングに飛び込んできた。


「あったああああああああ!!」


 


「えっ!?マジで!?パンあったの!?」


 


「──パンの記憶がっ!!!!」


 


「ねぇそれ!実体じゃないやつじゃん!!!」


 


がっくりと崩れ落ちる一同。


ミルミはというと、両手を天に掲げながら叫んだ。


 


「私はこの世界で!パンの記憶とともに生きるしかないんだああああ!!」


 


「誰かこのパン病、なんとかしてええええええ!!!」


 


──暴走はまだ続く。


その裏で、セリスティアが静かに立ち上がった。


 


「……仕方ないわね。こうなったら、“あれ”を使うしかないわ」


 


「“あれ”?」


 


「伝説のレシピ……《幻の手作り焼きそばパン・ホワイトガーデン式》。

 いまこそ、再現してあげましょう……彼女のために」


 


カグラの顔がひきつる。


 


「え?お前、料理できたっけ……?」


 


セリスティアの目が光る。


 


「任せて。パン作りは、気合いと魔力よ」


「──まずは、焼きそばから!」


 


セリスティアが高らかに宣言すると、

ホワイトガーデンの空気がどこか緊張感を帯びた。


 


「……いや、パンじゃなくてそっちからいくんかい」


カグラのツッコミは華麗にスルーされた。


 


「いい? 焼きそばパンは“ふたつの魂”でできてるの。

 片方がパン、もう片方が、焼きそば。どっちかが雑だとバランス崩壊!」


 


「いや、そこまで言う?ただの炭水化物with炭水化物だろ……?」


 


セリスティアは魔導調理室の中央に立ち、スカートのすそをちょっと持ち上げて気合を入れる。


 


「……私、できるかしら。料理、そんなに得意じゃないのに……」


 


「セリス、お前の“そんなに”は結構やべーからな?」


 


「うるさい!パンのためよ!」


 


──魔導火炉点火!

──調理術式《温風操作:中加熱》展開!


 


ジュゥゥゥゥッ!!


空中で鍋がくるくる回り、ソースと麺が風に舞う。


だが──


 


「うわっ!?あっつ!!」


バシャァッ!!


油が暴走、ソースが爆散、焼きそばがカーテンに直撃!!


 


「ぎゃーーー!!魔導カーテンがソース色にううう!!」


 


「俺の朝、返せぇぇぇ!!!」


 


──焼きそば、失敗。


キッチンは、もはや“戦場”。


セリスティアはうなだれて、床にしゃがみ込む。


 


「……やっぱり私には無理なのよ……私、普通にパン屋さんに頼んだ方がいいかも……」


 


そのとき、静かに近づく影。


「ふふふ……いいのよ、セリスちゃん……がんばったねぇ……」


 


「ミ、ミルミ……?」


そこにいたのは、パジャマ姿で目がうるうるの**パン難民ミルミ**だった。


 


「そのへんの床に落ちてるやつでいいから……ちょっとだけ、焼きそばパン味がほしいの……」


 


「いや、食うな!床のやつ食うな!!」


カグラが必死に止める。


 


そのとき──パンどんの中で、何かがカタリと音を立てた。


 


「……今、音しなかった……?」


 


セリスティアがパンどんをそっと開ける。


中には──


ふんわり温かいパン生地の原型と、

なぜか**“焼きそばパン レシピ(魔導レリーフ付き)”**が仕込まれていた。


 


「……これって……」


 


「パンどん、やるじゃん……!!」


 


セリスティアはもう一度、立ち上がる。


「……パンどんが応援してくれてる。じゃあ、やるしかないわね……!」


 


彼女は再び調理台の前に立ち、目を閉じて深呼吸した。


 


「次こそ、焼いてみせる。

 “このパンが、ミルミを救うパンになる”って──そう思って作るわ!」



「こねる……こねる……愛を込めて、こねる……」


 


セリスティアは魔導レシピを見ながら、生地を手でこねていた。

その額には汗、指先には小麦、心には……焦り。


 


「え、なんで急にアナログ?」


カグラが背後で突っ込む。


 


「パンは……手で作るものなのよ!」


 


「さっきまで空中で焼きそば回してたくせに……」


 


「うるさいわね!このパンは、心で焼くの!!」


 


パンどんの中で、魔導レリーフがぼんやりと光っている。

“焼きそばパンを作る者よ、心得よ──パンは記憶、焼きそばは情熱”


 


「熱っ……!!」


オーブンから魔力の熱風が吹き出す中、

セリスティアは決して手を止めなかった。


 


(焼きそばはガルドに任せたかったけど……いないし!)


(いや違う、私がやるって決めたんだから……!!)


 


「こねて!伸ばして!包んで!トーストして!!」


 


「トーストしてって言い方おかしいけど、なんか勢いで納得してしまう自分が悔しい!!」


 


シオンがふと、窓の外を見てつぶやく。


 


「……ミルミ、今、あの木に登ってるぞ」


 


「えっ、パン探して?」


 


「いや、“幻のパンの実”を収穫する儀式って言ってる。

 たぶん幻覚見えてる」


 


「やばい急がないと!!!」


 


──焼きそば完成。

──パン生地、発酵完了。

──愛と魔力、充填。


 


セリスティアがそっとパンを取り出す。


「……焼けた……!」


 


ふわっ。


あの匂い。


ソースの香ばしさと、ほんのり甘い生地の香り。


 


カグラがつぶやく。


「おい……これ、マジで……」


 


「……焼きそばパンじゃん……!!」


 


その瞬間、ミルミが木の上から空を見つめ──


 


「……きた……きたああああああああ!!!」


 


そして──飛んだ。


 


「パン、ダイブ!!!」


 


屋根を蹴り、木の枝を使って三段跳び、

リビングの窓をバァン!!!と突き破って──


 


「いただきまーーーす!!!」


 


──焼きそばパン、着地と同時に空中で受け取り。

そのまま一口かじって、ミルミの目がうるうると潤む。


 


「……あったかい……」


 


その声は、どこか泣きそうだった。


「この匂い、この味、この……やさしさ……」


 


セリスティアがふっと笑う。


「……焼きたてだからね」


 


──パンは、記憶。

焼きそばは、情熱。


そして、それを届けるのは──


 


“ちょっとだけがんばった誰か”の、やさしい手。


──しばらくの沈黙。


 


ミルミは、ほんのり湯気の立つ焼きそばパンを

ゆっくりと、ゆっくりと味わっていた。


 


さっきまでの騒がしさが嘘のように、静かで、あたたかい時間が流れていく。


 


「…………やっぱり……好きだなぁ、この味」


 


その声はいつもよりずっと小さくて、ちょっと切なくて、

そして、どこまでも真っ直ぐだった。


 


「焼きそばパンがあるとね、なんか、世界って大丈夫な気がするの。

 なんでだろうね?」


 


誰も答えなかった。

でもその沈黙は、ちゃんとミルミに届いていた。


 


セリスティアはミルミの隣に腰を下ろして、パンどんを撫でる。


「……なんだかんだ、私たち……パンに救われてるのよね」


 


カグラも頷く。


「マジで。ただの主食のはずなのに、なんか特別なんだよな……」


 


シオンはぼそっと言う。


「……パンとは、“食の記憶装置”だ。魂の保存形式。たぶん」


「黙って食べような!?」


 


全員、同時にパンをかじる。


 


ジュワ……サク……。


 


それだけで、全部わかる気がした。


 


パンどんの中には、いつの間にか新しい焼きそばパンが一個だけ、

ぽつんと入っていた。


 


「……あ」


 


ミルミが気づく。


「これ……次の誰かのためのやつだね」


 


セリスティアが、静かにうなずく。


「うん。今度は私たちが、誰かの“焼きそばパン”にならなきゃね」


 


ミルミはにぱっと笑った。


「よーし!じゃあ明日もまた、がんばって起きるよ!朝からパン争奪戦だね!!」


 


「そっち!?もっと内面的な学びをだな!!」


 


カグラがずっこけるなか、

ホワイトガーデンの空が、少しだけ夕焼け色に染まっていった。


 


──焼きそばパンがある。

それだけで、今日はちょっと幸せだった。


 


明日も、きっと、パンとともに始まる。


今回の主役はミルミ。

バカみたいに焼きそばパンを追いかけて、バカみたいに全力で喜んで。

でもその“全力”って、本当は一番まっすぐで、忘れちゃいけない気持ちなのかもしれない。


日常の中にあるちいさな幸せ。

それを探して走る彼女の姿は、ギャグの中に、ちょっとだけ心を打つものがありました。


君が、今日ひとくちでも笑ってくれたなら、それで大成功です。

──それじゃ、次のパン話でまた会いましょう!

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