進化する主食──焼きそばパンに足すな、でも足せ
読むにはカロリーが高すぎる焼きそばパン物語です。
「なに言ってんの?」と思いながら読むのが正解。むしろ正義。
世界がたくあんで一つになるなんて、誰が予想したでしょうか。
「──それで、本日の議題は?」
部室に鳴り響く、真剣すぎるセリスティアの声。
木製の長テーブルに集うのは、いつものメンバー。
机の中央には、輝く一つの焼きそばパン。
いや、“焼きそばパン神”(※自販機から取り出しただけ)である。
「……でさ、なんで俺まで毎回ここ来てんの?」
カグラはお腹を鳴らしながら、自前の焼きそばパンにかぶりつく。
「それはカグラくんが“最初に選ばれし者”だからだよ!」
ミルミが元気にそう言って、謎の装飾(たぶん紙粘土)を付けた焼きそばパンを持ち上げた。
「……選ばれし者ってなんだよ。パン選んだだけだぞ」
「カグラの一口が、世界を救ったんだぞ」
「“第一咀嚼者”って肩書きあるんだからね」
アロマとセリスティアが、ドヤ顔で頷く。
「そんな称号いらねぇよ!!」
パンにまつわる謎設定が爆速で増える中、セリスティアが真剣に告げる。
「……で、私は思うの。焼きそばパンって最高よね」
「うん、わかるー!」
「認めよう」
「でも──それって本当に、完成されてるって言える?」
「──え?」
風が、止まった気がした。
部室内に、重たい沈黙が走る。
「新しい具材を、試してみるべきだと思うの……!
そう、焼きそばパンに、“進化”の可能性を!」
「いや待て、パンに未来背負わせるな!!!」
──こうして、“焼きそばパン進化論”会議が始まった。
最も無意味で、最も熱い、
パンの未来を賭けた一日が幕を開ける──!
「では、まずは私から提案を──」
セリスティアが席を立ち、パン神(自販機)の前に立つ。
その手には、すでに準備された“何か”があった。
「私が提案する進化系焼きそばパンは……これです!」
──バンッ!
「焼きそばパン with アボカドスライス!!」
部室がざわついた。いや、ざわついてるのはカグラだけだ。
「……いや、おしゃれカフェか!? カロリー気にするフェーズじゃないだろ焼きそばパンって!」
セリスティアは微笑む。
「でもほら、アボカドってヘルシーで、女子人気高いし……
ふわっとした舌触りが、焼きそばのモサモサ感を補完するのよ?」
カグラ「補完とか言うなよ!」
「味の調和、口内平和……これは焼きそばパンとアボカドの不可逆融合……」
アロマが謎に感動してメモを取り始める。
「さっそく食べてみて! カグラくん!」
「えっ、俺!? 試食係!?」
カグラは仕方なく、アボカド焼きそばパンを一口──
もぐ、もぐ……
「…………うん」
「うん?」
「…………ありっちゃ、あり」
「出た! 正直すぎてリアクション弱いやつ!!」
セリスティアはどこか誇らしげに微笑んだ。
「これは、“進化の第一歩”ね」
──だが、このあと。
カグラは思い知ることになる。
これが、“まともな案”だったということを。
「──では、次は私の番だ」
アロマが静かに立ち上がった。
彼女の手には、見慣れない銀色の金属ケース。
「この日のために、並列演算型・複合味覚構成器を開発した」
「何それこわい!!」
カグラが即ツッコミ。
アロマは無表情のままケースを開け、
中から取り出したのは──謎の青く光る液体。
「これは、“情報素子で構成された調味液”……。
焼きそばパンに塗布することで、食べる者の脳内に最適な味覚刺激を与える……はず」
「“はず”って言ったーーー!!!」
セリスティア「それ、前に私の髪溶かした液体に似てるんだけど?」
アロマ「進化とは、犠牲をともなうものだ」
ミルミ「わっくわく~!」
──そして。
塗った。
発光した。
パンが爆発した。
「うおおおおお!? パンが四次元に消えた!?」
「この部屋だけ時間逆行してる!? 昼ごはんがまだきてない!?」
アロマはメモ帳に書き残した。
『結論:焼きそばパンに“演算液”は合わない。』
「じゃあ次、ミルミいくね!」
「待て流れを引き継ぐな!!!」
ミルミは自信満々に、綿あめ+梅干しを取り出した。
「見て見て! 甘いのと酸っぱいの合わせたら、
“味覚のメビウス”が生まれると思わない!?」
「思わねぇよ!!!」
──ミルミ、焼きそばパンにどっさり綿あめを詰め込む。
その上に、梅干しを4個ぐらいねじ込む。
「いくよカグラくん、あーん♡」
「断る!! 全力で断る!!!」
セリスティア「でも、食べないと……この回、締まらないわよ?」
アロマ「ヒーローはいつだって試される側だ」
「ぐぅぅぅぅ……くそぉぉぉ!!」
──もぐっ。
「………………ぉ、」
「ぉ?」
「おええええええええええ!!!」
ミルミ「……おかしいな?“味のバグ”って聞こえたんだけどなぁ」
──このあとカグラは三次元的に倒れ、部室内は軽く時空が歪んだ。
それでも──
彼らはまだ、進化を求めていた。
「……もうやめようよ……」
カグラが机に突っ伏したまま、かすれた声でつぶやいた。
「焼きそばパンは……そのままでいいじゃねえか……」
鼻からうっすら綿あめが出ていた。
顔色は限りなく灰色に近い。
「カグラくん、まだ“たくあんバター焼きそばパン”が残って──」
「やめてッ!!」
──そのときだった。
ゴゴゴゴ……
部室の片隅、パン神(自販機)が、
突然唸り始めた。
「……な、なんだ!?」
ガコンッ!ガコンッ!
中から──一つのパンが、ズルズルと出てきた。
それは、ただの焼きそばパンではなかった。
パンの隙間から、きらりと黄色い輪切りがのぞいていた。
「……これは……」
セリスティア「……たくあん?」
アロマ「味覚時空の深層にある“真理”……まさか神が示した最終回答……」
ミルミ「“パン神の啓示”ってこと!?」
全員が固唾を飲んだ。
カグラが、震える手でそのパンを受け取る。
もぐっ。
──数秒の沈黙。
「……ッ、う、うまッ!!」
「!?!?」
「うまい……ッ! しょっぱさが焼きそばのソースを引き立てて、
たくあんのポリポリ感が新しい食感を生んで……」
「……これは、**“革命”**だ……!」
一同、震える。
パン神が静かに鳴った──
ピンポーン。
表示されたメッセージ:
【NEW MENU:Yakisoba-pan Deluxe ver.TAKUAN】
「……まさか、パン神が……認めたのか……?」
次の瞬間、部室の壁が開き、たくあん畑が現れた。
「どっから繋がってんだよこの部屋!!!」
──パン神、ついに進化を示す。
だが、それは“終わり”ではなく──“始まり”に過ぎなかった。
「速報です!」
謎のニュース番組が、部室の壁の液晶に突如として映し出される。
画面のアナウンサーはテンションがやたら高い。
「ただいま世界各国で“たくあん入り焼きそばパン”のブームが発生中!」
「日本、アメリカ、パンギア大陸、火星コロニーまでもがパンにたくあんを……!」
「なんで火星!? ていうかパンギア大陸復活してたの!?」
セリスティア「やっぱり……神の意志は、全次元に通じてる……」
アロマ「焼きそばパン……それは次元を超える“共通言語”だったのね」
ミルミ「うわあああ!焼きたくあんパンTシャツ出てる~~!」
──その瞬間。
カグラのスマホに通知が鳴る。
【焼きそばパンたくあん入り:国際標準食品登録のお知らせ】
【あなたは最初の咀嚼者です。名誉総代表に任命されました】
【なお、報酬はたくあん一生分となります】
「たくあん一生分……重いなあ!!!」
「でもちょっと嬉しい!!!」
部室の外では、もう焼きそばパンに行列ができていた。
「たくあん入りありますか!?」「俺、時代の先駆けになりたいんです!」
セリスティア「見て、カグラくん……これがあなたの食の冒険の成果よ」
アロマ「咀嚼とは、すなわち歴史を刻むということ……」
ミルミ「焼きそばパンこそ人類の夢だったんだよ!」
──カグラは空を見上げた。
澄んだ青空に、たくあんの輪郭をした雲が浮かんでいた。
「俺……もしかして……すごいことしちゃった……?」
──あれから数日
焼きそばパンたくあん革命は、すべてを変えた。
各国の首脳会談では必ずパンが供され、
宗教の祭壇には焼きそばパンが並び、
子どもたちの将来の夢に「たくあん職人」がランクイン。
人類はパンを中心とした統一国家「ユナイテッド・ブレッド・ネイションズ(UBN)」を設立した。
「なにこれこわい」
カグラは静かにパン神の前に立っていた。
かつての自販機は、今や聖堂の中心に据えられている。
「結局、俺は……なんだったんだろうな」
「たくあんに選ばれし者?」
「神の器……?」
「焼きそばの魂……?」
──そのとき。
パン神が静かにカタンと鳴った。
一枚のカードが排出される。
カグラが拾い上げてみると──
【新たなる使命:カレーパンとの“最終戦争”が始まります】
「……は?」
──世界の空が再び歪む。
「お前たくあんだけじゃなかったのかよおおおおおおおお!!!!」
バグってます。でもそれが正解です。
今回は“進化する焼きそばパン”がテーマでしたが、
結果として“パンが神話になる”という前代未聞の展開に。
人類に必要なのは、たくあんとギャグと焼きそばです。




