焼きそばパンを食べ終えるたびに世界がリセットされるんだが
今日は、焼きそばパンをひとつ食べきるたびに
世界がリセットされる話です。
意味はわからなくて大丈夫です。
作者も途中からよくわかってません。
「パンがバグる」とか「パンが神になる」とか、
そういう話はもうすでにやりましたが──
今回はもっと静かで、もっと狂ってます。
おそらくこれは、“炭水化物系ループもの”として
世界初の物語です(※知らんけど)。
では、ごゆっくりどうぞ。
──それは、いつも通りの朝だった。
カグラは、拠点のテラスで焼きそばパンをかじっていた。
天気は良好、風も穏やか、焼き加減も完璧。
そして何より──このパンは今日も、うまい。
「……やっぱり朝は焼きそばパンだな……」
何気ない一口。
けれど、その一口を飲み込んだ瞬間──
カグラの視界が、“パンの袋の裏面”みたいにぐしゃぐしゃっと歪んだ。
「──うわ、なにっ!?なんか来たぞ!?焼きたて幻覚か!?」
耳鳴り、白いノイズ、そして──
気がついたときには、カグラはベッドの上にいた。
「……朝?」
さっきとまったく同じ景色。
テラスから差し込む光、鳥の鳴き声、
そして、手元には──
「焼きそばパン……?」
再び、袋に入った状態の焼きそばパンが手にあった。
しかも、まだ食べてない。
カグラ「おかしいって!さっき全部食っただろ!?
セリスティアが“それ私の分だよね?”って言いかけて──……」
バッと振り返ると、奥の部屋からセリスティアが顔を出した。
セリスティア「おはよ〜、って、それ私の分だよね?」
カグラ「出たーーーーーッ!?再放送か!?夢か!?パンの呪いか!?」
──この時、カグラはまだ知らなかった。
これが、“パンを完食するたびに世界がループする”
壮大な炭水化物リセットの始まりであることを……。
「いやいやいや……おかしいだろコレ……!」
カグラは焼きそばパンを持ったまま、テラスをウロウロと歩き回っていた。
「味は同じ……焼き加減も同じ……でも、袋の“しわ”がさっきと違う……!」
袋の角が微妙に左側に折れていて、いつもならつかみやすい右手側がぺちゃんこ。
──そしてなにより決定的なのが、ソースの位置が違う。
「さっきは、第一口目でソースがドバッて出たはずなのに……今回は、右端に集まってる……!」
カグラ「……パンでタイムリープって、なに!?
焼きそばパンが時間の管理者なの!? 主食のくせに!?」
そこへ、セリスティアがコップを持ってやってくる。
セリスティア「なにうろうろしてんの。食べないの?」
カグラ「いやあの……ちょっと待って、さっき食った記憶あるんだってこれ!」
セリスティア「寝ぼけてる? それ、私が昨日用意した分でしょ?」
──まるで、全員が1周目の記憶を持っていないかのような反応だった。
「……これ、やべぇやつだ……ループものだ……!」
パン片手に崩れ落ちそうになるカグラ。
そのとき、部屋の隅からひょっこり顔を出したのはミルミ。
ミルミ「あ、カグラおはよー! 今日も焼きそばパン? 私は焼きうどんパン作ったよ!」
カグラ「また意味不明なパン出してきたなお前は!?っていうか!この展開さっきも見たぞ!」
ミルミ「え? 初対面みたいなリアクションやめてよぉ〜」
──世界は、焼きそばパンを一口かじるたびに、
微妙に“何かがズレた状態”でリセットされている。
まだ断定はできないが、
カグラは確かに「さっき一度、この朝を終えていた」感覚を持っていた。
「……一つだけ確かめてみるか……」
カグラは、意を決して──
再び、焼きそばパンを一口、かじった。
──シュウウウウ……という音と共に、視界がパンの湯気のように揺れ始める。
「うわあああ、まただああああ!!」
気がつくと、またベッド。
朝。
光。
テラス。
パン。
「三周目だああああああ!!!!!」
──世界は、焼きそばパンの完食と共に、
巻き戻る“パン型タイムループ構造”に突入していた──。
──三周目。
カグラはもう、パンを見つめる目が完全に“世界の理を知った者”になっていた。
「……こいつが、リセットスイッチだとしたら──」
思わずパンに向かって話しかけてしまう。
「お前……何者なんだよ……ただの炭水化物じゃなかったのかよ……」
セリスティア「朝から何と会話してるの?」
カグラ「パンと」
セリスティア「そろそろ本格的に医者呼ぶよ?」
だが、カグラは無視して、
パンの包装にメモを書き込むことにした。
──《このメモが次のループで残っていたら、世界は連続している》──
再び、焼きそばパンをひとくち。
シュウウウ……
──そして、再起動。
四周目。
「……あー、また戻ったかー。慣れてきたなー(泣)」
だが。
手元のパンには、メモがなかった。
「……なるほど。記憶も物も、全部リセットされるのか」
ということは──
「このループを超えるには、“パンに直接書く”しかねぇ!!」
ミルミ「え、カグラ何やってるの!?パンにマジックで呪いの文字書いてるよ!?」
セリスティア「やめなさい、それ私の分も兼ねてるのよ!!」
カグラ「だってループしてんだってば!!俺だけ時空のナナメに取り残されてるんだよ!!」
アロマ「……なるほど、“焼きそばパン観測問題”……興味深いわ」
なぜか一人だけ深く納得しているアロマ。
カグラ「せめて、誰か一人くらい記憶引き継いでてくれよ……
俺ばっかこんな……世界の具にされてんのか……」
そのとき──
セリスティアが、ぽつりとつぶやいた。
セリスティア「……カグラって、毎朝“同じパン”食べてるわよね」
カグラ「……!!?」
セリスティア「ちょっと不思議だったの。焼きそばパン、私が用意してない日もあるのに」
カグラ「……おい、まさか……お前、記憶──」
セリスティア「ふふっ。まさか、ね?」
──世界は確実に、少しずつ“変わって”きていた。
パンの焼き加減だけでなく、
人間の意識までもが、“焼き直され”始めている──
「ふふっ。まさか、ね?」
──そのセリフが、
カグラの中に決定的な違和感を生み出していた。
(いやいや、ちょっと待て……
あいつ、さっき“私が用意してない日もある”って言ったぞ……?)
カグラ「……セリスティア、お前……いつの話してる?」
セリスティア「ん? 今朝の話よ」
カグラ「それ、前にも言ってた気がするんだけど」
セリスティア「“前”? いつの前?」
カグラ「……いや、やっぱなんでもない……(ヒントはそこにあるのに!!)」
──情報は断片的だが、“誰かが少しずつ記憶を持ち越し始めている”。
つまり、焼きそばパンのループには“干渉可能な条件”が存在する。
カグラ「……よし、次は“食べ終わらない”でループできるか試すか……」
パンの端っこだけをかじって、
“中途半端な一口”でとどめてみる。
──……何も起きない。
「……なるほど、“完食”が条件か……」
そして次。
ミルミが持ってきた「焼きうどんパン(※カレーパンみたいな見た目)」をあえて食べてみた。
──……何も起きない。
「やっぱり、焼きそばパン限定か……!」
アロマ「……観測条件が狭いわね。“焼きそば”という具材自体に、何か意味があるのかも」
カグラ「そう、なのか?」
アロマ「たとえば、“長くて複雑に絡む構造”──
これはタイムループそのものを象徴してるのかもしれない」
ミルミ「うどんは、ダメだったのかぁ〜」
カグラ「お前のパンは問題外だ!なんでうどんとパンを合体させたんだよ!」
ミルミ「え〜?『主食 on 主食』はロマンでしょ〜!」
──検証のすえ、
“焼きそばパンを完食する”という条件でのみ、
このループは起こると判明した。
そして──
カグラはもう一度、セリスティアに訊くことにした。
カグラ「……もしさ、お前が、“昨日と同じ朝”を繰り返してたとしたら……どう思う?」
セリスティアは、少しだけ笑って言った。
「それって、“同じパンが続いてる”ってこと?
だったら、きっと“何かが焼き足りない”のよ。だから、やり直しになるの」
「……それって、“パン理論”としては納得できるけど……なんか深ぇよ!?」
──この世界は、まだ焼き切れていない“何か”を探している。
カグラがその“答え”を見つけるまで、
ループは続くのかもしれない──。
──六周目。
焼きそばパンを食べきり、また“朝”がやってくる。
カグラはもう、驚かない。
起きて、ベッドから起き上がり、
テラスへ向かい、焼きそばパンを確認する。
「よし、焼きムラ……右に寄ってる。前回と違うな」
袋のシワ、ソースの位置、焼き目、空気の入り方、
すべてが、微妙に“違う”。
(毎回、“どこかが変わってる”……これは、
このパンが“時間”を記録してる……?)
──そこへ、またセリスティアが現れる。
「おはよう、って、それ私の分よね?」
カグラは静かに聞き返す。
「……なあ、セリスティア。お前、デジャヴ感じたりしないか?」
セリスティア「んー? 最近ちょっとパンが“先に見た夢”みたいに思えるときはあるけど?」
──明らかに、記憶が“焼き戻され”つつある。
カグラ「……この焼きそばパンさ。食うたびに俺、同じ朝に戻されてんだよ」
セリスティアは一瞬だけ止まり──そして、冗談めかして言う。
「じゃあ、次から焼きそばパンじゃなくて、バゲットにしてみたら? 長いし、時間も伸びるかもよ?」
カグラ「……お前、実は全部わかってるんじゃねぇのか……?」
ミルミも顔を出す。
「じゃあ今度、私が超長時間焼成の“タイムパン”作ってあげる!」
アロマ「構造上、最初から焦げてるでしょうね……」
──そのとき。
テラスの空が、ピクリとノイズのように揺れた。
「……あ?」
空の端が、“モザイク”のように崩れている。
まるで、現実の一部だけ“描画ミス”を起こしているかのように。
「おいおいおい、ちょっと待て……」
──次の瞬間。
草の上に、見覚えのない“パン”が落ちていた。
USB型パン。──あの、未来で渡された“パンの記憶”に酷似した物体。
「なんでここに……!? 俺、まだ未来に行ってねぇぞ!?」
セリスティア「……それ、私のじゃないわ。初めて見た」
アロマ「干渉が早まってる……まだ“それ”が現れる周回じゃないはずなのに」
ミルミ「すごいねー!パン、勝手に時空越えてきたよー!」
──何かが、
この世界のルールを超えて、侵入してきている。
カグラ「……いや待て、それって──
このループ、俺が“ただ食ってるだけ”の話じゃないのか?」
──世界のほころびは、“パンの記憶”を通じて拡がり始めた。
そして、
次に焼きそばパンを完食したとき──
もっと大きな“ズレ”が、世界を襲うことになる──。
──七周目。
いや、もしかすると、もっと前から始まっていたのかもしれない。
カグラはもう、パンを“ただのパン”として見ていなかった。
焼き加減、ソース位置、包装のしわ、記憶の重なり──
すべてが、“世界のログ”のように感じられた。
「……やっぱ、こいつ……“パンドライブ”なんじゃねぇか?」
USB型パン。
世界の崩れ。
そして“何かの記憶”が、少しずつ漏れ始めている。
──そのときだった。
空に、巨大なパンのマークが浮かび上がった。
いや、“パンのマーク”というより──パンそのもの。
「おい……空が、食パンになってねぇか……!?」
セリスティア「……“目覚め”が始まったわね……」
カグラ「え?なんでお前だけ“意味わかってる感”出してんの!?」
ミルミ「うわー!でっかいパン!あれ、神様のパンだよ!たぶんバター入り!」
アロマ「観測レベルを超えてるわね……空間そのものが、記録装置としての構造に“上書き”されてる」
──そして空間に、声が響いた。
「パンの記録者よ、選ばれし者カグラ=シノノメよ」
カグラ「え、俺!?ついに名指し!?嫌な予感しかしねぇ!!」
「貴様は、幾度もの焼成を越え、“パンの本質”に近づいた」
「だが、その代償として──“現実”の耐久が限界を迎えつつある」
──空に開く、巨大な裂け目。
その先に見えるのは、“未定義のパン”たち──
クロワッサン型次元、カレーパン領域、蒸しパン暗黒面──
「最終焼成が始まる。
汝が最終のパンを食らうとき、“記録は確定”され、すべてのループは終わる──」
カグラ「いや“最終のパン”って何!?そんなパン用意した覚えないけど!?」
──その瞬間、手元にあった焼きそばパンが、黄金の光を放ち始めた。
セリスティア「……それが、“始まりであり終わりのパン”──“ZSP-∞”」
カグラ「名前がラスボスすぎるんだよッ!!!」
──パンを食べるか、拒むか。
それが、“この世界の最終焼成”を決定づける。
「……俺がこのパンを食えば……世界は、焼きあがる……」
カグラは深く息を吐いた。
「だったら──
焼きそばパンとして、生き様を示してやるよ。
語らねぇ、舞わねぇ、飛ばさねぇ。かじる。ただそれだけだ──」
──ガブッ!!
パンをかじった瞬間──
世界が、黄金の蒸気に包まれた。
空が溶け、時がほどけ、
“パンに記録されていた全てのループ”が、同時に再生されていく。
ミルミ「うわあ〜!焼きたての記憶が空に流れてる〜!!」
アロマ「……記録再構成完了。“ZSP-∞”、焼成完了」
セリスティア「……ふふっ。パンが、私たちのすべてだったのね……」
──そして、
カグラが目を開けると、
そこは、見慣れたテラスだった。
焼きそばパンは、袋ごと空っぽ。
「……終わった……のか?」
セリスティアがふっと笑って言う。
「おかわり、あるわよ?」
──そしてまた、パンが焼きあがる音が、
どこかで静かに、鳴っていた。
というわけで、
『焼きそばパンを食べ終えるたびに世界がリセットされるんだが』
最後までありがとうございました。
パンを一口かじるごとに“世界が微妙にズレていく”──
そんな話を朝から真顔で書いていた自分が、
一番ズレていたかもしれません。
今回は、「ループ系×パン」という絶妙に終わってるテーマの中で、
ギャグをしつつ、微妙に神話っぽい雰囲気を詰め込む挑戦でした。
「パンは語らない。かじるだけだ」
というカグラの名言(?)は、我ながら気に入ってます。
次はどんなパンが世界を救うのか──
それとも、救わないのか。
焼きそばパン神話は、まだまだ続く。
また次回、どこかの“焼きたて世界”でお会いしましょう。




