この味だけは、忘れられなかったんだ
今回のテーマは「記憶×パン×バグ」!
とんでもない組み合わせなのに、ちゃんとそれっぽくなったのが不思議です。
ちょっとだけ切なくて、かなりギャグで、だけど心に残るパン回でした。
あと、焼きそばパンってやっぱり最強だよね。
カグラは今日も、焼きそばパンを握っていた。
朝、昼、夕、そして夜中の小腹タイム。常に握られていたそのパン。
「おかしいな……焼きそばパンって、こんな味だったっけ?」
──その瞬間、世界が揺れた。
文字通り、パンの包装紙から光が漏れた。
セリスティア「それ、記憶に封印されしパンじゃない!?」
カグラ「は!? 封印された記憶ってパンに宿るの!?」
ミルミ「わかる! わたしも昨日、食べたメロンパンで小学生の時の記憶戻ったよ!」
カグラ「それは糖分のせいじゃないの!?」
──だがそのとき、現れた。
謎のフードをかぶった男が、カグラのパンを見て呟く。
「……それは、俺の……パンだ……」
カグラ「いや、どこの!?〇ーソンで買ったぞ!?」
セリスティア「まさか……記憶喪失者!?このパンに導かれて……!?」
謎の男「……“あの味”だけは、覚えていた……でも……俺は誰だ……?」
ミルミ「恋!これは恋だよ絶対!!」
アロマ「ロマンチックな破滅フラグ」
──パンをめぐる記憶の旅が、いま始まる。
そしてカグラは気づいていなかった。
この一件が、世界の“味覚”を揺るがす戦いになることを……!
「というわけで、パン屋だ!!」
カグラのテンションが爆上がりしていた。
セリスティア「ねえカグラ、それもう“記憶探し”じゃなくて、“ただのパン屋巡り”になってない?」
カグラ「変わってねぇよ!? 元からパンだよ!?」
──一行がまず訪れたのは、〈焼きたてベーカリー・ブリオッシュ異界支店〉。
そこには、異世界各地から取り寄せたパンがずらりと並んでいた。
ミルミ「おぉ~!見て見て!このパン、“食べた瞬間だけ5歳若返る”って書いてあるよ!」
セリスティア「それって、永遠にお肌ツヤツヤになれたりするのかな……?」
カグラ「でも食べ続けたら胎児に戻らない!? 大丈夫!?」
謎の男(記憶喪失)「……この店じゃない。もっとこう、……あったかくて、優しい、あの味……」
アロマ(端末ポチポチ)「現在、同様の“記憶に引っかかる味”を検索中……該当店舗、3421件──」
カグラ「多いわ!!」
──そして2軒目。〈思い出パン工房・なみだの味支店〉。
「店長が常に泣いてる」という噂の感動系パン屋だが──
店長「泣いてなんかいないよ……花粉症なんだよ……」
カグラ「なんかリアルに哀しいな!?」
──しかし、またも“記憶の鍵”は見つからず。
セリスティア「うーん……あの人が探してるのって、パンそのものじゃない気がするんだよね……」
カグラ「え、どういうこと?」
セリスティア「たぶん、パンに宿ってた“誰かとの記憶”。その味を、無意識に探してるんじゃないかな」
ミルミ「やっぱり恋じゃん!」
アロマ「恋じゃなかったら逆にこの旅きついです」
──謎の男の記憶に、何があったのか。
彼が探し続ける“あの味”の正体とは──?
3軒目のパン屋《空想酵母》に到着したころ、
一行は奇妙な違和感に気づき始めていた。
「……あれ、このパン屋、さっきも来たような……?」
ミルミが眉をひそめる。
セリスティア「えっ?でも、看板には“初出店記念セール!”って書いてあるよ?」
カグラ「ってことは……俺たちの記憶の方が変なのか?」
──その瞬間、空間に“バグの縞模様”が走る。
視界の端が、ノイズのように揺れた。
アロマ「……観測バグ、発生。空間履歴と記憶ログが、一部食い違ってる」
セリスティア「……それって、記憶を喰われてるってこと?」
アロマ「可能性としては高い。“記憶を保存せずに上書きする現象”が進行中──」
謎の男「……やっぱり……そうか。俺が、俺を覚えてないのは……“あいつ”のせいだ」
カグラ「“あいつ”って……まさか、お前を消したやつがいるってのか?」
男は黙ってうなずいた。
男「……最後に覚えてるのは、“赤く焼けた空”と……“誰かの声”」
「“そんなパン、食べちゃダメだ──”って……誰かが叫んでた」
セリスティア「……!」
ミルミ「うわ、急に雰囲気シリアスに!?」
アロマ「ギャグで塗り固めてたのに急旋回ですね」
──すると、空間が一層ぐにゃりと歪んだ。
アロマ「まずい。今の“記憶再生”で、過去の断片が干渉領域を生んだ」
セリスティア「過去と今が、パン屋を通じて繋がっちゃってる……!」
カグラ「なにその“世界のパンの中心でバグが叫ぶ”みたいな現象!?」
──この世界のどこかに、“記憶を削り、改ざんする”バグが存在する。
その正体は……パンなのか。誰かなのか。あるいは──
──“赤く焼けた空”の中に、少年がいた。
記憶喪失の男──彼の“かつての姿”。
小さなパン屋のカウンターで、無邪気に笑っている。
「ねぇ、これ、おれが焼いたんだよ!今日はバターを多めにしてみた!」
目の前に立つのは、長い三つ編みの女の子。
どこかセリスティアにも似た、優しい目をした誰か。
少女「ふふっ、上手に焼けたね。じゃあ……このパン、特別な名前つけようよ」
少年「え?名前?」
少女「うん。“覚えていてほしい”から──“メモリーブレッド”って、どう?」
少年「おぉー!なんか強そう!」
少女「パンだからね。強くて、おいしいのが正義だよ」
──しかし、空が焼け落ちていく。
現実と記憶の境界が燃え、崩れ、混ざりはじめる。
謎の男(現在)「……あのとき、パンは……焼けたまま、置いてきた」
「店も……あの子も……全部……バグに喰われたんだ」
カグラ「……それで、お前の記憶も?」
男「“メモリーブレッド”に宿ってた記憶だけが、かろうじて残った」
セリスティア「だから……“あの味”だけを覚えてたんだね」
──彼の記憶が戻ったことで、世界の歪みが加速する。
空間に“黒焦げの縞模様”が広がっていく。
アロマ「来る……観測バグの本体、“記憶を喰らうもの”が──!」
カグラ「うおおお!パンが……空間ごと焼き焦がされてんぞ!?誰だよこんな演出考えたの!!」
ミルミ「世界がサンドイッチされてるぅぅ!」
セリスティア「こうなったら──カグラ、行くよ!」
カグラ「えっ!?なんか“最終回テンション”になってない!?」
──パンの記憶に呼び寄せられた“バグ”との直接対決へ!
「我は──メモリア・バグリア」
空間の裂け目から現れたのは、
パンのようでパンでなく、
記憶のようで記憶でない、黒焦げの存在。
まるで“無数のパンの記憶”が融合し、腐り、膨張し、
バグとなって塊になったような──
カグラ「なんだこいつ!?焦げたクロワッサンに呪われたバケモン!?」
セリスティア「もうパンって認識してないよねそれ……」
アロマ「形状、記憶の断片と未焼成バグの複合体。コード名:『パン焼き失敗バグ』です」
ミルミ「だっさ!!」
──だが、やつの力は本物だった。
一瞬で周囲のパン屋を侵食し、空間そのものを“思い出の断片”に変える。
セリスティア「う……頭の中に、知らないパン屋の記憶が……!」
カグラ「俺も!“小学校の時の給食の揚げパン”がよみがえってきた!!」
ミルミ「それ懐かしすぎて逆に強いヤツじゃん!」
──しかし、カグラの身体に異変が起きる。
彼の“???”スキルが、自然に発動していた。
アロマ「カグラの記憶領域が……“バグとの接続”を拒絶してる」
セリスティア「つまり、バグに“効かない”……!」
ミルミ「記憶すらバグらない、チートな無敵バグスキル発動じゃーん!!」
──カグラは右手に、いつものように焼きそばパンを握る。
「……俺のパンの記憶は、お前になんか渡さねぇ!」
その瞬間、焼きそばパンがまばゆい光を放った。
セリスティア「まさか……パンの記憶が、抗体になってる!?」
ミルミ「パンでバグ浄化!?それアニメだったら絶対最終回!」
アロマ「ここ、冷静に記録しときます」
──焼きそばパンの力により、メモリア・バグリアは崩壊しはじめる。
だが、消える直前──
「我を焼いたのは……おまえたちの、“記憶”だ……」
そう言い残し、バグは霧散していった。
──こうして世界は元に戻った。
けれど、男は言う。
「全部思い出したよ。でも、パンの焼き方だけは、まだ……お前らから学ばせてくれ」
カグラ「教えねぇよ。見て盗め」
セリスティア「え、教えてあげようよ?」
ミルミ「え、なにそれ青春の味?」
アロマ「まとめ:パンは世界を救う」
──翌日。
カグラたちは、セリスティアの《パン工房せれす亭》にいた。
焼きたてのパンの香り。穏やかな時間。
そして、あの記憶を取り戻した男も──見習いとして厨房に立っていた。
男「えっと……この焼きそばパンは……こう、ソースをもうちょい多め……?」
カグラ「バカ!多すぎたらパンがベチョるだろ!」
男「う、うぅ……!」
ミルミ「カグラ先生、パンに厳しすぎぃ!」
セリスティア「もう、そんなに怒らなくてもいいのに……」
アロマ「“焼きそばパン道場・鬼のシノノメ師範”で記録しました」
カグラ「勝手に記録するなッ!」
──ふと、男が焼いたパンを一口食べる。
「……うん、まだまだだけどさ……でも、ちょっと思い出す味だ」
「“あの子”と食べた、メモリーブレッドの味──」
カグラ「そいつは良かったな」
セリスティア「うん。また誰かの記憶に、なるパンを作れるといいね」
ミルミ「で、最終的にこのパンが神格化されて、世界の根幹に干渉するの?」
カグラ「するな!やめろ!!フラグ立てるな!」
──こうして、またひとつの“バグの記憶”は終わりを迎えた。
でも、パンは今日も焼かれる。
焦げることも、破裂することも、たまにはあるけど──
その香りは、誰かの心をそっと包むから。
セリスティア「……カグラ、今日のパン、ちょっと焦げちゃった」
カグラ「またバグか!?」
セリスティア「ううん。うっかり寝ちゃっただけ」
カグラ「それはそれで問題だろ!?」
──日常は、焼きたてパンのように続いていく。
いつかこの世界が崩壊しても、焼きたてパンの香りは残る……
そんな気持ちで書きました(どんな気持ち?)




