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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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赤いボタンが落ちてきたので、とりあえず踏んでみた

空から、落ちてきたのは──ボタンでした。


赤くて、目立って、でっかくて。

「押すな」とも「押せ」とも書いていない。だから、とりあえず──


 


今回もカグラは、深く考えずに世界をひとつ“踏み越え”ます。

ボタンの向こうに広がるのは、カオスか、それともユートピアか?

ギャグとバグの境界線がまたひとつ、曖昧になります。

朝だった。


カグラは目を覚まし、焼きそばパンをくわえたまま庭に出た。

特に意味もなく、ただのルーティンとして。


「……なんか赤いの落ちてるんだけど」


芝生の真ん中に、ぽつんと――ボタンがあった。


それは金属でできているわけでも、魔導装置でもなかった。

見た目は……ほぼ、プラスチックの赤いボタン。


しかも、英語でこう書いてある。


RESET


「……押すなってやつじゃん。絶対」


セリスティアが背後からのぞきこむ。

浮き輪はしてないが、頭には相変わらず意味のない日傘を差している。


「なんか……これ、存在がバグってる気がするわよ?」


「バグってんのは俺のスキルだけで充分だよ……ってか、なんでウチの庭に?」


「ていうか、何もない朝から“RESET”って……だいぶ不穏な始まり方ね?」


カグラはしゃがみ込んで、しばらくそれを見つめた。

そして、ポケットから新しい焼きそばパンを取り出し、そっとボタンの上に乗せる。


「とりあえず、焼きそばパン反応テスト」


「いや何その判定方法!? それで世界の命運とか測れんの!?」


焼きそばパンは、赤いボタンの上で静かに横たわっている。


沈黙――。


風が吹いた。

パンがちょっとだけずれて、カチッと音がした。


 


「──うわ押した!! お前のパンのせいで押しちゃったじゃん!!」


「いや、まだ起きてないだろ……たぶん」


だが、世界の空気が……わずかに揺らいだ。


「……なんか、景色の色、変わってない?」


セリスティアの指摘に、カグラはあくび混じりに空を見上げた。


確かに、いつもよりちょっとだけ“青い”。

いや、違う……空が“二重”になっていた。


「なんか……空が、2枚重なってる?」


「それってもう空じゃなくない!? 多次元に干渉してるやつじゃない!?」


庭の草が風に揺れた。

焼きそばパンはボタンの上でふにゃっとしている。


そのときだった。


 


──ガサッ


物陰から現れたのは、**“もう1人のカグラ”**だった。


「……あ」


「あ」


両者、顔を見合わせた。


「お前……誰だよ」


「お前こそ誰だよ」


「いや俺だよ」


「俺だって俺だし!」


「そっちの俺、焼きそばパン何味?」


「焼きそばパン味だよ!」


「……同一人物じゃねぇか」


セリスティアがふたりを交互に指差す。


「何この……ギャグみたいな量子重なり」


「たぶん、さっきのボタンで“座標がズレた”んだろうな。世界線が混ざった感じだ」


「専門的なこと言ってる風だけど、要は“お前のパンのせい”よね?」


「いや、パンはただそこにいただけなんだって」


と、そのとき。


ふたりの“カグラ”のあいだに、ズズ……っと地面が裂けた。


そこから現れたのは、ボロボロのマントを着た老人のような影。

異様に長いヒゲをなびかせて、呟く。


 


「ボタンを押したのは……そなたらか」


「え? どっち?」


「どっちでもない方だが」


「え、そんなのあり?」


 


そして老人は言った。


 


「──ボタンは、“観測不能な次元”の境界を破壊したのだ。

 世界はすでに、バグに呑まれつつある……」


 


カグラ×2「いや、またバグかよ!!!」


世界が“揺れている”──


草も風も光も、まるで読み込みミスを起こしたゲームのようにブレはじめ、背景がノイズまじりになっていく。


「やばいやばいやばい! 俺の世界がマインスイーパーになってる!」


「そっちじゃない俺の世界はドット絵になってるんだけど!?」


「しかも……音バグってね?」


「ゴポ…パァン……ピコーン……って鳴ってる、なにこれ怖っ!」


 


セリスティアが状況を確認しようと結界を展開するも、空間がすでに“干渉済み”で魔法が暴走。


「あ゛あ゛あ゛あ゛! 音程がバグってるー!!」


「それ俺じゃないぞ!」


「私もじゃないわよ!!」


──そして、画面中央に。


《バグ個体「カグラ=シノノメ」発見:収容処理開始》


という謎の赤文字が浮かび上がる。


「おい! 俺のせいにされてる!?」


「いやまあ……バグの中心にいたのお前なんだけど」


そのときだった。


 


──パキィィン!!


 


空間にヒビが入った。正確には、「次元」そのものがヒビ割れていた。


その裂け目から、ひとりの影がこちらに歩いてくる。


──白衣、眼鏡、うっすら寝癖。

──手にはトースト。

──どことなく頼れなさそうな雰囲気を漂わせる──


 


「……えっと、ここ、どこ?」


「誰!? っていうか、またカグラっぽいの来たーーー!!」


 


──次元Aのカグラ。

──次元Bのカグラ。

──次元Cの“メガネでトースト派”カグラ。


世界が、カグラで飽和し始めていた──。



次元の裂け目から、続々とカグラが流れ込んでくる。


──剣士カグラ(なぜか厨二病)

「貴様が……俺か……」

「誰!? なんで片目閉じてる!?」


──魔法学者カグラ(眼鏡・老成・オールバック)

「ふむ、理論的にはこの次元の崩壊は君の所為だな」

「ってお前もカグラかよ!!」


──アヒルに乗ったカグラ(沈黙)


「いやそいつ誰!? 何!? 無言で漂ってくんな!!」


 


セリスティアはもう限界だった。


「なんで次元が裂けたら、カグラばっかり出てくるの!? 何カグラユニバース!? いや怖いから!!」


 


そのとき──さらに空が“裏返る”。


真っ白な空間の奥から、何かが“降りて”くる。


──カグラ。


だが、明らかに異質だった。


ひとりだけ、色が“反転”していた。

肌は黒く、影が白く、目はバグったように光の粒子を帯びている。


「……この世界線のオレたち、限界きてんな」


 


異次元最悪のバグ──

オルタナティブ・カグラ、降臨。


 


「……世界、喰われるぞ?」


「パンじゃなくて!?」


 


彼が歩くだけで、空間に“ノイズ”が走る。

現実が“エラーメッセージ”の羅列で塗りつぶされていく。


 


セリスティア「もうやだこの世界……」


──カグラ(本物)「いや、まだだ。……俺には焼きそばパンがある!」


「オレには、焼きそばパンがある!」


その叫びとともに、カグラはポケットから取り出した。


──いつもの焼きそばパン。


……のはずだった。


だが、それは“全次元のカグラ”たちの共鳴によって、

**多次元特化型・焼きそばパン“オーバーライド”**へと進化していた。


「なんか……パンが……光ってる!?」

「しかも、エネルギー波を出してる!!」


 


異次元カグラたちが、それぞれのパンを掲げる。


「焼きそばパンこそ、存在の原点──」

「焼きそばパンが、時空を超える鍵……」

「パンは、記憶。意志。愛。そしてバグ!」


「うるさぁぁい!!!!!」


 


セリスティアの絶叫が宇宙にこだました。


その直後──


 


焼きそばパン・インパクト発動。


次元の裂け目から流入していた異常エネルギーが、

すべてパンの形で再構成され、

空へ向かって“焼きそば流星群”として打ち上がる。


 


「うおおおおおお!!! パンがッ!! 時空を……突き破ってッ!!!」


 


空は元に戻り、次元は安定を取り戻す。

あらゆる“カグラ”が、静かに元の世界へと還っていく。


 


そして、ひとつの“本物のパン”が、ふわりと舞い戻った。


「……あ。俺の昼メシ、戻ってきた」



空にパンはもう浮かんでいなかった。


けれど、確かにこの世界は“焼きそばパンに干渉された”のだ。

空間の歪みも、次元の穴も、すべて元通りになっている。


セリスティアは無言でカグラの隣に腰を下ろした。


「……で、今のって全部、あんたのスキルのせい?」


「さぁ? たぶん……“共鳴”しただけだと思うけど」


「何と?」


「焼きそばパンと?」


「焼きそばパンと??」


 


言ってから本人も混乱していた。


 


シオンがいつの間にか近くにいて、呟く。


「……パンは、記憶だ。

焼きそばパンは……記憶に刻まれた、熱き衝動……」


「おい、詩人ぶるな! ていうか全部見てたのかよ!!」


「焼きそばパンは、見届ける側であって、

焼きそばパン自身が、物語である」


「だから詩人ぶるなって!」


 


静かな夕暮れ。


パンまみれだった空間も、ようやく静けさを取り戻し──


 


「──なあ。今思ったんだけど」


「なによ」


「焼きそばパン……もうひとつ買っときゃよかったなって」


「そこに戻るの!?」


 


──こうしてまた、世界は平穏を取り戻した。


……たぶん。


赤いボタン、それはロマンであり、危険であり、押してはいけないもの……?


……だったら踏めばいいじゃん、ということで、

今回は「ボタン系異世界侵食ギャグ」をお届けしました。


カグラの“押し間違い”が、またひとつ世界を壊し──

なのに不思議と平和(?)な日常が続くこの世界。

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