空から焼きそばパンが降ってくる日
前回の焼きそばパン×時空SFに続き、今回は「修正パッチ会議」から始まるドタバタパンバグギャグ。
カグラの“指突っ込み事件”によるパン世界の混乱と、ジルド・リリィ・シオン・アロマなどレギュラーキャラ総出演で送るにぎやかな一編です!
「なあ、空って……あんな色だったっけ?」
俺は朝のパンをかじりながら、空を見上げた。
どこまでも青い空──のはずが、そこには直径500メートルの焼きそばパン型の穴が空いていた。
「…………」
「…………」
俺とセリスティア、無言で焼きそばパンを口に運ぶ。
「いやいやいやいや、絶対おかしいだろッ!? なんで空に穴!? てかアレ、パンの形してるんだけど!?」
セリスティアが、珍しくトーストを口にくわえて走らずに大騒ぎしていた。
「これは……いよいよ“空間の限界”が来たのかもしれませんね」
シオンがどこからともなく現れて、まるで季節の挨拶みたいにそんなことを言い出す。
「お前いつも唐突だな!? “おはよう”くらい言えや!!」
そのとき──
空のパンの穴から、“あんパン型の隕石”が落ちてきた。
「おい、あれどう見てもコッペパンの化け物じゃねぇか!!」
「一応、焼き立てみたいですね……香ばしい……」
シオンが真顔で天体の分析してるのを横目に、俺は叫んだ。
「誰だよ! 宇宙ベーカリーに注文入れたヤツは!!」
──ここに、宇宙規模のパン災害が始まろうとしていた。
「こちら、地球代表・シノノメカグラ。宇宙ベーカリー《ヤキタテ・ネビュラ》との通信に成功……って、なんだこの状況!?」
俺は、謎の電波をキャッチしたトースター型のデバイスを前に叫んだ。
『こちら《ヤキタテ・ネビュラ》。本日のご注文は「コッペ型隕石パン」と承っておりますが、お間違いありませんか?』
「間違いだよ!! 誰がそんなの頼んだよ!? てかお前らどこからオーダー取ってんだよ!!」
セリスティアが小声でつぶやく。
「……私、ちょっとだけ“焼きそばパンをもっと世界中に広めたい”って、空に向かって願ったかも……」
「お前かァァァ!!」
そこに、また隕石──もとい、メロンパン型の小惑星が大気圏突入を開始。
「まずい、これこのままだと、世界が“朝食”になるぞ……!」
シオンが静かに立ち上がる。
「このままでは、時空そのものが“モーニングセット”と化す……対応が急務です」
「頼むから、語彙を戻して!?」
俺は決意する。
「……こうなったら、俺のバグ能力で“宇宙ベーカリーの配送ルート”を書き換えるしかねぇ!」
セリスティアが驚いたようにこちらを見る。
「そんなこと、本当にできるの……?」
──できる。
俺のスキル、“???”の本質は、
「世界の演算ルールに干渉し、意味不明な現象を引き起こす」
つまり、配送ルートだって、
焼きそばパン1個分ずらすことができる──!!
「スキル《???》──発動!」
叫ぶと同時に、俺の背後に巨大な焼きそばパンの輪が浮かび上がる。
神々しく回転しながら、パンは淡く光を放っていた。
「な、なんだあれは……!?」
「パン……なのに……宇宙が見える……?」
周囲がざわつく中、俺はトースター端末に手をかざした。
「この宇宙ベーカリーの配送データに、焼きそばパンのエラーコードを……ぶち込む!!」
その瞬間、トースターの画面がバグった。
映し出されたのは──
『配送ルート:変更完了。目的地を“並行宇宙・第三パン惑星”に再設定しました。ありがとうございます。』
──世界線、ずらし完了。
「やった……! これで、地球に隕石パンは届かない!」
が。
セリスティア「えっ、でも待って。それって、パンの代わりに何が届くの……?」
俺「…………」
シオン「……気配を感じる。これは、“ジャムバターロールの雨”……!」
──上空から、超高速で落下する無数のパンたち。
あんパン、カレーパン、バターロール、クロワッサン……
俺「やばい、バグの副作用で“パンだけで天候が決まる世界”になってる!!」
セリスティア「それって、梅雨入りならぬ、“焼きそば入り”?」
俺「どんな気象現象だよ!?」
シオンが淡々とメモを取っていた。
「今後のパン予報:明日は焼きカレーパン、午後はベーグルのち時々くるみパン、でしょう」
「誰が得すんだその情報!!」
──空は、パンで覆われていた。
「──市民は落ち着いてください。これはパンです。繰り返します、これはパンです」
街中のスピーカーが、完全に意味不明なアナウンスを繰り返していた。
人々は傘をひらきながら逃げ惑い、空から降るジャムパンに「甘すぎるぅ!!」と叫んでいた。
「……やばくない? 俺のスキル、だいぶ現実に干渉しすぎてない?」
俺が首をかしげていると、となりでセリスティアが真顔でパンをキャッチしていた。
「でも、これはこれで──悪くない味」
「食べるな! 落ちてきたやつだぞそれ!」
「ふふっ、地面に落ちる前にキャッチしたからセーフ、ってことで♪」
シオンはというと、パンに混じって落ちてきた焼きそば麺だけを空中でピンセットで回収していた。
「この“焼きそば断片”、観測値が通常の約142,857倍の密度に達している……」
「なんでそんな正確に測ってんの!?」
そこへ、どこからか通信が入る。
『こちら宇宙ベーカリー本部。地球配送に不具合が発生したため、全パンを“凍結”します』
その瞬間──空のパンが全部凍った。
「……あれ? 今、降ってきたパン……空中でピタッと止まった……?」
「氷パン状態……?」
「バグってるけど止まってる、つまり……これは平和では?」
その場に、ゆっくりと静寂が戻ってくる。
「……あ、でも今度は冷たいのが落ちてきたら痛くない?」
「確かに、カチカチのフランスパンが直撃したら……」
「……ちょっと帰ろっか」
──こうして、世界を救った(?)戦いは、パンくずを残して終わったのだった。
世界中の空で、無数のパンが宙に浮かんだまま静止していた。
しかもそれぞれが凍っており、「氷結パン」として新たな災害指定を受けようとしているらしい。
「おい、なんかニュースで“超低温パン注意報”って言ってたぞ」
カグラは焼きそばパンをかじりながら、氷パンを背に日向ぼっこしていた。
その後ろで、セリスティアが氷パンを利用してかき氷を作っている。
「これはこれで、新しい冷菓文化が……!」
「いや、食べるなってば!」
一方その頃、王都では。
ジルド=フォン=グランツ(※1話でカグラにぶっ飛ばされたエリート様)が、宙に浮かぶパンを前に頭を抱えていた。
「この現象は……常軌を逸している……!」
「なぁにビビってるのよ、ジルド!」
リリィ=ハートフィールド(※金髪ツインテ・脳筋お嬢様)が、浮かぶパンに跳び蹴りをかまし──
「ふんっ! パンごときに、私の回し蹴りが効かないだなんてぇぇっ!!」
「物理無効パン……!? あれは我々の想定を超えた“食”かもしれん……!」
「お黙りなさいジルド、黙ってジュースでも飲んでなさい!」
──そんなわちゃわちゃな日常に戻りつつある中。
宇宙ベーカリーの広報が、空から電波でメッセージを流した。
『このたびは当店の“全銀河対象テスト配送”により多大なご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます』
『つきましては、本日より──地球に宇宙ベーカリー出店を正式に決定いたしました』
「えっ……」
「えっ……?」
──こうして、人類はバグから逃れた代わりに、“宇宙のパン文化”を受け入れる道を選ぶこととなった。
宇宙ベーカリーの地球出店が決定した日。
世界中のニュースは、パンと戦争とSFとスイーツを混ぜたような混乱に包まれていた。
「……なんか、全部終わったな」
カグラは宇宙ベーカリーの軒先で、無料サンプルの焼きそばパンをもぐもぐ。
「けど、なんか……こう、落ち着かないよね……」
セリスティアが周囲を見回す。王国も魔王軍も一時停戦状態で、街にはパン屋が急増。
「そういや、魔王軍と人類の戦争って……今どうなってるんだ?」
「たぶん……“パンで一時休戦”ってやつ?」
どっちの陣営も、今はベーカリー開店フィーバーで忙しいらしい。
「……ま、いいか」
「“焼きそばパンが世界を救った”とか、ちょっとカッコいいし?」
「そんな話、後世に残っていいのかな……」
──と、そのとき。
空から降り注いだのは……バグ修正用の、**“新しいソース”**だった。
「うわ、マジで降ってきた!!」
「焼きそばパンの具が……更新された……?」
バグは修正された。
だが新たな何かが──再び、世界を変えようとしていた。
世界は平和だ。
たぶん。
いや、たぶんじゃダメだろ。
でも今は──
「朝は焼きそばパンだな!」
──完!
“バグは修正されたが、パンは残った”。
それがこの世界の真実です(?)
次回はいよいよ──「パンと戦争の間にある日常」か、それとも「宇宙ベーカリーと人類の同居」か!?
引き続き、ギャグとバグと焼きそばパンで世界をめちゃくちゃにしていきましょう!




