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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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焼きそばパン、時空をこえる

焼きそばパンが、また世界を狂わせようとしています。


こんにちは、作者です。

今回はあらゆる勢力が「パン」に過剰反応するという、よくわからない回です。


でもね、よく考えたら、

この物語、最初からよくわからないんですよ。


カグラが無敵だの、パンで空間がバグるだの、

そのたびに「いやそんなバカな」って思いながら書いてます。

たぶん読者の皆さんも、同じ気持ちで読み進めてるんじゃないでしょうか。


……ようこそ、仲間です。


というわけで、今回も世界はバグり、焼きそばパンは熱々です。

どうぞ、笑いながら召し上がれ!

静かだった。

あまりにも、静かすぎた。


 


朝の《せれす亭》は、結界に守られた庭園に、

ほのかな魔力の風が流れていて、空気までパンの香りがする。


 


……それはまあ、カグラが毎朝焼きそばパンを温めているからだ。


 


「よし……今日もいい焼き加減だな……」


 


小さくうなずいてから、カグラはパンをひとくち、もぐもぐ。


セリスティアが奥で結界チェックをしていたが、

ちらっとこちらを見て、ため息まじりに言った。


 


「カグラ、それ五日連続じゃない? もう焼きそばパンと結婚すればいいのに」


「いや、するかも。俺の中じゃもう両想いだし」


「はぁ……」


 


平和だった。


それだけに──この後のことは、誰にも予想できなかった。


 


 


──ぽとん。


 


「あっ」


 


手が滑った。

焼きそばパンが、芝生の上に、ちょん、と落ちた。


……その瞬間だった。


 


 


「……空間、揺れた?」


 


セリスティアが振り返った瞬間、

落ちたパンが、ゆらりと空間に沈んでいった。


 


重力でも、風でもない。

まるでそこだけ、世界のデータがバグって“抜け落ちた”かのように。


 


「おい、今の見たか!? 焼きそばパンが……時空に吸い込まれたかも」


 


カグラがまじ顔で言った。

セリスティアは数秒フリーズしてから──


 


「えっ、なにその“比喩”……え、比喩じゃないの!?」


 


叫んだ。


 


「いやだって今、パン、なんか変な風に消えたよ!? 芝の下じゃないよね!?」


 


「うん、たぶん。いや確実に」


「確実に!?!?」


 


 


朝の庭に、緊急警報が鳴った。


 


……いや、鳴ったのはセリスティアの叫び声だった。


「──ここ、だな」


 


カグラが指差したのは、さっき焼きそばパンが落ちた場所。

芝生の上に、妙なうねりが残っていた。


魔力の渦でもなく、風でもなく、ただ空気がぐにゃっと曲がっている。


 


「ねえ……ほんとに、パンが時空に吸い込まれたって言ってるの?」


「うん。ていうか、あのとき“ちょっとラグった”んだよな。世界が」


「それ絶対ろくでもないやつ……」


 


セリスティアが冷や汗を流しつつ、慎重にその地点へ魔力を注ぐと──


 


ひゅるるんっ!


 


空間が反応した。

さっきまで曖昧だった渦が、ぽっかりと“穴”になった。


 


「開いたああああああああああ!?!?」


「おお、焼きそばパンの次元ゲートか」


「もうちょっと警戒しよ!? ていうか名前おかしいよ!!」


 


カグラは、まるでエレベーターのボタンでも押すかのような軽さで、その“穴”に手を伸ばした。


 


「……あった」


 


その手には、あの焼きそばパン──ただし、半分次元にめり込んでいる状態──が握られていた。


 


「すげぇ、これ……多分“向こう側”と“こっち側”の両方に存在してる状態だ」


「うん、知ってる? そういうの、“次元共振体”って言うんだけど……パンに起きるの、おかしいからね!?」


 


セリスティアが頭を抱える横で、カグラは

「うーん、なんかぬるいな」

とか言いながらパンをもぐもぐ再開していた。


 


「いや、食べるなよ!? そういうパンじゃないよ!?」


「だってほら、食べられるし。食べられるうちはパンだろ?」


「理屈として最低ランクの正論だわ……」


 


──このときセリスティアはまだ知らなかった。


このパンを通じて、カグラのスキルに新たな“バグ”が発現しはじめていることを──。


「……あのー、セリスティア? なんか上空がチカチカしてない?」


 


カグラが焼きそばパンを半分ほどかじったところで、空にバグのような亀裂が走った。


 


「ちょっと待って!? 今のパンの一口で空が壊れたの!?!?」


 


セリスティアが頭を抱えると同時に、庭の上空に不自然な“ログエラー”のような模様が浮かび上がる。


 


《観測不能エリアにて因果干渉を検知──再調整中》


 


「うわ、出た……世界律のシステムメッセージ……!」


 


しかもその後、結界の端に、あの黒ローブの“観測者”のホログラムがチラッと浮かんで──


 


「……“パン”に干渉されている……だと……?」


 


とか言い残して消えた。


 


「いやいやいやいや、さすがにパンに反応すんなよ!? カグラ、なに食べてんのほんとに!!」


「焼きそばパン。安心と信頼の市販品。たぶん」


「たぶんって言うなぁああああ!!!」


 


 


そのとき──


庭の中心に設置されていた石像が、**ぶおおおおん!**と光り出した。


 


「なに!? なんか発動した!?」


 


セリスティアが結界を確認すると、次の瞬間──


 


時空が“巻き戻された”。


 


「ちょ、え、今って朝!? また最初に戻ってない!?!?」


「……デジャヴ感すごいけど、パンはちゃんと焼けてる」


「そこじゃないのよ!!!」


 


 


パンひとつで時間がゆるっと巻き戻る。

カグラの“???”スキルが、確実に何かを引き起こしている。


だが──当の本人は、まるで気づいていないようだった。


 


 


「セリスティア。やっぱこの焼き加減、5日目が一番美味いわ」


「うん、今6日目になってるよ。何周目か知らないけど」


 


 


そのころ、世界の観測機構では非常警戒レベルがひっそりと引き上げられていた。


対象:“観測外個体カグラ・シノノメ”

理由:パン由来の次元干渉、未解明


「……静かだな、と思ったら」


 


気づけば、シオン=ヴァレアが庭の隅に立っていた。

どこから来たのかは不明。いつものことだ。


彼は片手にカップ(中身不明)、もう一方の手にはなぜかパンの包み紙を持っている。


 


「また現れたな、“意味深メガネ”」


「いや、俺メガネかけてないし」


 


カグラのツッコミにも特に表情は変えず、シオンはふと空を見上げた。


 


「この空間……さっき、一度“巻き戻された”な?」


「お、さすが。焼きそばパンがバグったっぽい」


 


その返答に、シオンはほんの少しだけ目を細めた。


 


「君の存在そのものが、世界律と逆位相で共鳴してる。

パンという媒体を通して、それが一時的に現象化したのか……」


「いや、パンでそんなSF単語言われても困るんだけど」


「パンとは概念だ。焼きそばとは記憶だ。

君のスキル“???”は、もはやそれすらも栄養源にしているのだろう」


「もっと困るよ!!」


 


セリスティアががっくりと肩を落としながら、そっとカグラに耳打ちした。


 


「ねえ……この人、いつもこうなの?」


「だいたいこう。でも今日はわりと話がわかる方」


「これで!?!?」


 


その間も、シオンは庭の空間を見つめている。


 


「君の存在は“記録されない干渉”を起こしている。

本来なら、この空間のすべては君を中心に歪むはずなんだが──」


 


「……歪まない。むしろ安定してる。なぜなら」


 


シオンはゆっくりと、最後の一言を口にした。


 


「君が“パンを手にしている限り”、世界は君を安定状態と誤認しているようだ」


 


「パンを!? パンを!?」


 


セリスティアが再び崩れ落ちた。

その横で、カグラはいつものように焼きそばパンをもぐもぐしている。


 


「ま、いいんじゃね? パンは世界を救う。多分」


「パンを食べてるだけで世界に誤魔化しが効くとか、どういう存在なの……」


 


 


──カグラ・シノノメ。

観測不可能な異常性。パンにより仮初の安定を保つ、世界最大のバグ男である。


 

──王都、王立魔術院・中央記録塔。


魔術院監察官・メルゼス・クローディアスは、机に額を押し当てながら唸っていた。


 


「……また、記録ログが焼きそばパンで破損している……」


 


ここ数日、魔術院の観測魔導ログに、

“焼きそばパン”由来と思われるバグと観測ズレが多数記録されていた。


しかもその都度、「例の人物」──


 


「カグラ・シノノメ……お前というやつは……」


 


かつてないほどの低音で、彼は呟いた。


 


 


──魔王領、通信監視塔。


魔王軍情報部の少女・アロマは、無言でデータを眺めていた。


隣には、いつものように浮かれた様子のミルミがぴょんぴょん跳ねている。


 


「ねぇねぇ! アロマ! ログにパンって出てるよ!」


 


「パンだ」


「パンだねー!」


 


アロマは無言のまま、**“焼きそばパン・干渉由来異常波形”**というデータをモニタに映し出した。


 


「このパターン……前回、魔王様が“結界ごと吹き飛ばされた”時と一致する」


「パンこわっ!?」


 


アロマは神妙な表情で言った。


 


「これは……“禁術・焼きそばパン結界穿孔波”かもしれない」


「ちがうと思うよ?」


 


 


──そして、どこかの虚空。


世界律管理機構の“観測者”たちが、またしても顔を歪めていた。


 


「……まただ。シノノメ個体が“食事”を介して観測外に遷移した」


「観測不能……物理反応無し……彼は今、焼きそばパンに“潜伏”している」


 


「彼のスキル“???”が……パンと結合した可能性があるな」


 


“観測者”たちは神妙な面持ちでうなずき合った。


 


「──パンを、排除するしかない」


 


 


──かくして、

カグラの手元にあったたった一つの焼きそばパンをめぐって──


 


王国、魔王軍、観測機構──

世界の三大勢力が、奇しくも同じ結論へと至っていた。


 


「パンを確保せよ」


 


その指令は、次元を超えて放たれる。


 


 


──全ての始まりは、昼下がりにひとりの少年がもぐもぐしていただけだった。


 


「……ん? 今なんか、すごくくしゃみ出そうだった気がしたけど気のせいか?」


「いや、完全に誰かに狙われてる顔してるよ、それ」




その日、「せれす亭」の前には、なぜか人影が増えていた。


 


「……よし、結界も張り直したし、パンも焼けたし、完璧!」


セリスティアが満足げに焼きそばパンを天板から取り出す。


そして、異変に気づいた。


 


「……え?」


 


庭の向こう、森の端──


なぜかフードをかぶった人物たちが物陰からこちらをのぞいていた。


その数、十数人。


 


「…………」


 


そしてそのすぐ近くの空間から、魔王軍の紋章を刻んだ転移魔法陣が現れる。


 


「!? ……ちょっ、なんでここに魔王軍!?」


 


さらには、空に王国旗のついた飛行艇が浮かび──


 


「“焼きそばパンを回収せよ”──全軍、突入!!」


「やだもう意味わかんないよおおおおお!!」


 


 


こうして、“せれす亭”に三勢力がパン回収に来るという謎のカオス事態が発生。


セリスティアは混乱の極みだった。


 


 


──そして、その中心。


 


「…………すぴー……」


 


縁側で昼寝している少年がひとり。


手には半分食べかけの焼きそばパン。


 


世界が、パンを巡ってざわめいていた。


それでも彼は、穏やかな寝息を立てていた。


 


「……焼きそばパン……増殖しろ……むにゃ……」


 


 


──次回、


『パンが世界を滅ぼすとしても、俺は食う』

お疲れ様でした。


カグラが昼寝してる間に、パンを巡って三勢力が激突寸前になるとは、誰が想像したでしょう。

……まぁ、セリスティアは絶対してたと思う。


あと、魔王軍と王国と観測者たちが、

そろって「焼きそばパンがヤバい」って思ってるの、ちょっとした奇跡ですよね。

※何もヤバくありません。たぶん。


それにしても、「???」スキルの真相には迫ってませんが、

少しずつ“世界の側”がカグラをどう見てるのか、わかってきた気がします。


次回はタイトルの通り――


『パンが世界を滅ぼすとしても、俺は食う』


世界崩壊も腹ペコも、等しくヤバい!

ご期待ください!

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