(ジョニー・ビー・バッド)4
冒険者パーティ、コモネーゼの面々の困惑を無視して、
ジョニーの影に潜むデストリシアン達が喧しい。
『ヘルハウドって美味しいのか』
『犬種は食わんぞ』
『温めたらどうだ』
『ホットドックは嫌いだ』
『チリソースが苦手なんだろう。
お前はお子さまか』
『何にしろ、討伐は決定だ』
遂には念話でジョニーに要求して来た。
『ジョニー、うちらで行っても良いか』
デストリシアンは蝙蝠から枝分かれした魔物。
形は蝙蝠そのもの。
黒くて小さい。
目はジョニーと同じオッドアイ。
左が黒で、右は赤。
ジョニーがとある事情から召喚を行った。
それで現われたのがデストリシアン。
スキルを視ると、形にしては出来物だった。
そこで都合五匹を召喚して名付けした。
ポーラ、ポーリン、ポール、ポレイシャ、ポロポロ。
今日はジョニーの影に三匹が潜んでいた。
ポーラ、ポール、ポロポロ。
ポーリンとポレイシャは留守番で、妹リリーと弟トムの護衛に付かせた。
ジョニーは三匹を表に出す事はしない。
「デストリシアンは暇な時に散々遊び歩いているだろう。
今日は隠れているんだ」
そうなんだ。
常日頃は三匹は護衛の任に付くが、残った二匹は手空き。
そんな時は暇に飽かせて自由行動。
好きにして過ごしていた。
良く見るのは海との戯れ。
大波小波の波頭を障害物として、
その間隙をスレスレに抜いて飛んで遊んでいた。
彼等にとっては波に打たれた奴は負けなのだそうだ。
飛べないジョニーはそんな彼等を羨ましく感じた。
勿論、ジョニーにはスキル《飛翔》があるので、
デストリシアンに混じって遊ぶ事は出来る。
しかし、それが人目に付いたら・・・。
そう思うと、気軽に《飛翔》は起動できない。
それはそれとして、偶にだが海中から海の魔物が飛び出して来て、
襲い掛る事があった。
その時のデストリシアンの反応が、より面白い。
襲撃して来た魔物の影にスキル《ダークダイブ》で応じた。
ボクシングのカウンターの感じで相手の影に飛び込み、
そこから手近な波頭の僅かな影に向けてダイブ。
その繰り返しで翻弄するのだ。
翻弄する訳を聞いて驚いた。
「だってお遊びだから」
それは鳥類からの襲撃にも言えた。
襲われる前提のお遊びで、それをも楽しんでいた。
しかし、今回のヘルハウンドはそうではないだろう。
三匹の雰囲気から、仕留める方向に舵を切る、と見た。
だからジョニーは三匹を宥めた。
『皆にデストリシアンの本気の力は披露したくない。
全力で隠すよ』
ジョニーの力が上がったように、デストリシアンの力も上がっていた。
特にHPやМPの数値に顕著に表れていた。
共に75であったものが今では135。
おそらくジョニーの目に触れぬ大樹海で暴れ回ったのだろう。
当然だが、魔物討伐で。
ジョニーはデストリシアンを宥め終えると、護衛のアレックスを見た。
察しの良い彼は苦笑いのまま言う。
「変な事は考えていませんよね」
「変とは酷いな。
これでも真剣なんだよ。
巧くすればヘルハウンドが獲れる。
しかも僕達は無傷。
どう、良いと思わない」
「お母様に怒られますよ」
「それは僕が一生懸命に謝るからさ、良いよね」
僕達の遣り取りが彼等の耳に届いたらしい。
リーダーのデビットがこちらを振り返った。
僕はそのデビットに話しかけた。
「ねえデビットさん、僕のスキルは聞いてるよね」
いちいち説明しなくても、この手の話題は噂として広がり易いもの。
「多少は」
それなら話は早い。
「家庭教師はリネア・ルーダさん。
そのリネア・ルーダさんのお墨付き。
僕の雷魔法は上級なんだよ。
それでヘルハウンドを狩りたいと思わない」
表向きは雷魔法上級。
実際は【始祖龍の加護】《電撃》である事は誰にも内緒にしてた。
十才児の秘密の一つや二つ、大した事ではない。
デビットの目が輝いた。
「上級ですか、それは素晴らしいですね」
輝かせながら続けた。
「生憎、私は雷魔法の上級を見た事がありません。
それは一体どういうものですか」
ああ、そこからか。
「この場合、効果的なのは敵を一ヵ所に誘い込んで、
範囲攻撃する事かな。
ヘルハウドを攻撃するのは初めてなので、
一撃で殺せるとかは思っていないけど、
それでも足止め程度のことは出来るとは思う」
討伐とは言っても、獲物を爆散される事ではない。
売り物になるように狩ることだ。
出来れば毛皮等の部位は無傷に近い形で欲しい。
他のメンバーが関心を寄せて来た。
僕とアレックスを取り囲む。
真っ先にSランクのモーリスから尋ねられた。
「魔力暴走の危険性は」
「それは克服した。
ネイル様のお墨付きだよ」
「それなら安心ですね。
問題は討伐後の事です。
工房の会長が一番怖いのですが」
工房の会長は母のニコール。
実際に怒ると怖い。
水魔法特級に裏打ちされたものだけに、余計にガクブルだ。
それは彼等も同じらしい。
おお、同士達よ。
僕は神妙な顔で応じた。
「僕が先頭に立って怒られる、それでどう。
・・・。
ああ、そうだ、怒るのを忘れるほどの成果を挙げたらどうかな」
Aランクのアンドレが声にして笑った。
Aランクのマチュウが窘めた。
「笑い事じゃないぞ」
Bランクのシモンが僕の話を引き取った。
「それでやろうじゃないか。
まずは沢山の魔物にヘルハウンドを混ぜる。
それで駄目だったらお坊ちゃんがお母様を謝り倒す」
余計にアンドレが腹を抱えて笑う。
モーリスがデビットに尋ねた。
「ヘルハウンドを誘き寄せる方法を知ってるか」
「番の場合はまず雌を狙います。
すると雄が怒って向かって来ます。
・・・。
今回は弓で雌を狙いましょう。
当てては駄目ですよ。
毛皮を傷物にしたくないですからね」




