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あーくんあのね、きょうね。  作者: 吐 シロエ
ひとつおとなになる
37/38

37 あいしてる

「そ、そんなことないよ!」


 あーくんは声の限りを振り絞って言いました。ニセモノさんが、あまりにも苦しそうに見えるのです。


「……。ありがとう。失敗作の僕に、そんなことを言ってくれるなんてさ」


 あーくんはもう、ニセモノさんに尋ねるのをやめました。ニセモノさんが笑うたび、今にも壊れてしまいそうで。


「僕はさ。本当はいない、空想の存在なんだよ。だけど苦しくてつらくてどうしようもなくて、気づいたらここにいた」


「笑っちゃうだろう? 友達を傷つけて、逃げた結果がこの有り様さ」


 今まで見たことのないニセモノさんの感情に、あーくんは驚きを隠せませんでした。


 大人になれば、あーくんもこんな風に変わってしまうのでしょうか。不安とニセモノさんに対する悲しみが、あーくんの心を締め付けます。


「……大丈夫だよ」


 気づけば、あーくんはニセモノさんを抱きしめて、頭をなでていました。


 ニセモノさんは目を見開き、熱い涙を流します。


「あぁ、そうか……。これが……」


「暖かい……」


 ニセモノさんにとって、あーくんはあまりにも眩しすぎました。自分とあーくんとでは何もかもが違う、そう気づいたのです。


「……ありがとう、本当の僕。いいや、あーくん。僕を救ってくれてありがとう。偽者で、どうしようもない心を受け入れてくれて」


「ううん、いいの。ニセモノさんも悪いあーくんも全部、あーくんだから」


 あーくんとニセモノさんは少し距離を取って、微笑みます。


 そして、あーくんはニセモノさんが消えかかっていることに気がつきます。


「ニセモノさん、消えちゃうんだね……」


「そりゃあそうさ。君は本当の僕を受け入れてくれた。それで僕の役目は終わり」


 寂しい顔をするあーくんに、ニセモノさんは目を閉じて語りかけるように言いました。


「……最後に一つだけ、いいかい?」


「なあに?」


「こぐまを、くらげを。みんなを愛してくれてありがとう。僕の宝物は、君にあげる」


「……いいの?」


「もちろんさ。ねぇ、こぐまも抱きしめてあげる。これで最後だから」


 ニセモノさんは少しだけイタズラっぽく微笑んで、腕を広げました。


「……くそっ。くそっ!」


 こぐまさんは顔を真っ赤にして泣きました。でも、怒ってはいません。


「今度会ったときは、これでもかって言うくらい優しくしてやる!」


「あーくんも、ニセモノさんのこといっぱいなでなでする!」


 ニセモノさんはにししっと笑い、心から幸せな笑顔を見せました。


「……ありがとう。愛してるよ、君たちのこと!」


 ニセモノさんは光に包まれ、消えていきます。


 心地いい風が、木の葉を舞い上がらせました。

次回で最終回となります…! 2019.2.26

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