37 あいしてる
「そ、そんなことないよ!」
あーくんは声の限りを振り絞って言いました。ニセモノさんが、あまりにも苦しそうに見えるのです。
「……。ありがとう。失敗作の僕に、そんなことを言ってくれるなんてさ」
あーくんはもう、ニセモノさんに尋ねるのをやめました。ニセモノさんが笑うたび、今にも壊れてしまいそうで。
「僕はさ。本当はいない、空想の存在なんだよ。だけど苦しくてつらくてどうしようもなくて、気づいたらここにいた」
「笑っちゃうだろう? 友達を傷つけて、逃げた結果がこの有り様さ」
今まで見たことのないニセモノさんの感情に、あーくんは驚きを隠せませんでした。
大人になれば、あーくんもこんな風に変わってしまうのでしょうか。不安とニセモノさんに対する悲しみが、あーくんの心を締め付けます。
「……大丈夫だよ」
気づけば、あーくんはニセモノさんを抱きしめて、頭をなでていました。
ニセモノさんは目を見開き、熱い涙を流します。
「あぁ、そうか……。これが……」
「暖かい……」
ニセモノさんにとって、あーくんはあまりにも眩しすぎました。自分とあーくんとでは何もかもが違う、そう気づいたのです。
「……ありがとう、本当の僕。いいや、あーくん。僕を救ってくれてありがとう。偽者で、どうしようもない心を受け入れてくれて」
「ううん、いいの。ニセモノさんも悪いあーくんも全部、あーくんだから」
あーくんとニセモノさんは少し距離を取って、微笑みます。
そして、あーくんはニセモノさんが消えかかっていることに気がつきます。
「ニセモノさん、消えちゃうんだね……」
「そりゃあそうさ。君は本当の僕を受け入れてくれた。それで僕の役目は終わり」
寂しい顔をするあーくんに、ニセモノさんは目を閉じて語りかけるように言いました。
「……最後に一つだけ、いいかい?」
「なあに?」
「こぐまを、くらげを。みんなを愛してくれてありがとう。僕の宝物は、君にあげる」
「……いいの?」
「もちろんさ。ねぇ、こぐまも抱きしめてあげる。これで最後だから」
ニセモノさんは少しだけイタズラっぽく微笑んで、腕を広げました。
「……くそっ。くそっ!」
こぐまさんは顔を真っ赤にして泣きました。でも、怒ってはいません。
「今度会ったときは、これでもかって言うくらい優しくしてやる!」
「あーくんも、ニセモノさんのこといっぱいなでなでする!」
ニセモノさんはにししっと笑い、心から幸せな笑顔を見せました。
「……ありがとう。愛してるよ、君たちのこと!」
ニセモノさんは光に包まれ、消えていきます。
心地いい風が、木の葉を舞い上がらせました。
次回で最終回となります…! 2019.2.26




