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あーくんあのね、きょうね。  作者: 吐 シロエ
ひとつおとなになる
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36/38

36 ぼろぼろなこころ

 あーくんが目覚めると、大きな木と果てしない大空が広がっていました。

 

 今までにあーくんは、この景色を何回か見たことがあります。そう、ニセモノさんがいる世界です。


「これは、まさか……!」

「こぐまさん、どうしたの?」


 目を見開いている人間のこぐまさんを不思議に思い、あーくんは首をかしげました。


 それもそのはず、こぐまさんにニセモノさんのことを話したことがありません。


「やぁ、あーくんにこぐま。久しぶりだね」


 そんな時でした。いつもの白いシャツに紺色のカーディガンをしたニセモノさんが、二人のもとにやってきました。


 どうやらまた絵を描いていたらしく、ニセモノさんのスケッチブックから『お友達』の顔が少しだけ覗かせます。


「うん、ニセモノさん久しぶり! ニセモノさんが、あーくんを連れてきたの?」


「そうだよ。ちょっとホラーな感じにしてみたんだけど、どうだった?」


 ニセモノさんが「怖かったかい?」と言うと、あーくんが「怖かった! あのね、あのね……」と言葉のキャッチボールを弾ませます。


「なぁ、しらばっくれんのもいい加減にしろよ。ニセモノさんよ?」


 二人の会話を終わらせたのはこぐまさんでした。いつもより目つきが悪く、どうやら怒っているみたいです。


「あはは、ごめんよこぐま。まぁ、君が怒るのも無理ないよね」


「どういうこと?」


 あーくんの純粋な問いに、ニセモノさんは困ったような顔をして笑いました。


「……僕はね、こぐまを助けられずに大人になった君なんだ。逃げたんだよ、こぐまの計り知れない闇が怖くてさ」


 あーくんの頭のなかで、幼いこぐまさんを拒絶したシーンが流れました。あーくんも一歩間違えれば、取り返しのつかないことになっていたでしょう。


「僕は自分のことを傷つけて、心もぼろぼろになった。それからリハビリみたいに絵を描いてる」


「……最低な人間だろ?」


 ニセモノさんの瞳は涙であふれ、にへらっと笑みを浮かべました。自分自身をあきらめるかのように。

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