36 ぼろぼろなこころ
あーくんが目覚めると、大きな木と果てしない大空が広がっていました。
今までにあーくんは、この景色を何回か見たことがあります。そう、ニセモノさんがいる世界です。
「これは、まさか……!」
「こぐまさん、どうしたの?」
目を見開いている人間のこぐまさんを不思議に思い、あーくんは首をかしげました。
それもそのはず、こぐまさんにニセモノさんのことを話したことがありません。
「やぁ、あーくんにこぐま。久しぶりだね」
そんな時でした。いつもの白いシャツに紺色のカーディガンをしたニセモノさんが、二人のもとにやってきました。
どうやらまた絵を描いていたらしく、ニセモノさんのスケッチブックから『お友達』の顔が少しだけ覗かせます。
「うん、ニセモノさん久しぶり! ニセモノさんが、あーくんを連れてきたの?」
「そうだよ。ちょっとホラーな感じにしてみたんだけど、どうだった?」
ニセモノさんが「怖かったかい?」と言うと、あーくんが「怖かった! あのね、あのね……」と言葉のキャッチボールを弾ませます。
「なぁ、しらばっくれんのもいい加減にしろよ。ニセモノさんよ?」
二人の会話を終わらせたのはこぐまさんでした。いつもより目つきが悪く、どうやら怒っているみたいです。
「あはは、ごめんよこぐま。まぁ、君が怒るのも無理ないよね」
「どういうこと?」
あーくんの純粋な問いに、ニセモノさんは困ったような顔をして笑いました。
「……僕はね、こぐまを助けられずに大人になった君なんだ。逃げたんだよ、こぐまの計り知れない闇が怖くてさ」
あーくんの頭のなかで、幼いこぐまさんを拒絶したシーンが流れました。あーくんも一歩間違えれば、取り返しのつかないことになっていたでしょう。
「僕は自分のことを傷つけて、心もぼろぼろになった。それからリハビリみたいに絵を描いてる」
「……最低な人間だろ?」
ニセモノさんの瞳は涙であふれ、にへらっと笑みを浮かべました。自分自身をあきらめるかのように。




