27 にせもの
「大丈夫かい?」
涙で目を赤く腫らせたあーくんを心配して、男の人は優しいあーくんの頬に触れます。
「……うん。ごめんなさい」
あーくんは皆を怒らせてしまったことに責任を感じているようで、男の人は穏やかな口調であーくんの頭を撫でました。
「あれは皆、偽者なんだ」
「皆が君を責めている訳じゃない。だから、大丈夫」
「……そうなの?」
「うん、そうさ。僕が嘘をついていたらハリセンボンしよう」
あーくんはその言葉に聞き覚えがありました。あーくんがよく間違う、『嘘ついたら針千本飲ます』の約束だからです。
「お兄さんは、何者なの?」
「うーん……そうだなぁ」
男の人は間を開けて、困ったように答えます。
「君の偽者。『ニセモノさん』でいいよ」
「ニセモノさん……」
男の人は自分をニセモノさんと名乗りました。
よく見れば髪型や目の色があーくんにそっくりで、服は違えど、男の人は正にニセモノさんと言ったようです。
「あ」
あーくんは前にニセモノさんと出会ったときに、お父さんに似ていると言っていました。
「どうかしたのかい?」
「ニセモノさんは、あーくんのお父さんなの?」
お母さんによれば、あーくんのお父さんは遠いところにいるらしいです。
それであーくんは、お父さんが夢の中で会ってくれるのだと思っていました。
ニセモノさんは驚いて目を見開きましたが、やがてうつむいて目を伏せました。
「……ううん、違うよ。確かに僕は君のお父さんに似ているけれど、君のお父さんじゃない」
「じゃあ、お兄さんは誰なの?」
あーくんの純粋な問いに、ニセモノさんは戸惑います。
「僕は君の偽者で……そう。僕の正体が分かるのは、君がもう少し大きくなってからだ」
「……ごめんよ」
ニセモノさんはやるせない気持ちで、あーくんの頭を撫でて呟きました。




