14 だいじないばしょ
あーくんが最後に目覚めた場所は、真っ暗闇の世界です。
今までの場所とは違い、どこかほの暗さを感じました。
ゆっくりとお月さまの色をした目を開き、あーくんは周りを見渡します。
「あーくん、怖いの……」
そう言って抱きしめたはずのこぐまさんが、いないことに気づきました。
「こぐまさんがいないのは、さびしいの……」
あーくんはずっと、こぐまさんを信頼していました。
五年間ずっと一緒にいたこぐまさん。寝るときもいつも一緒で、抱きしめないと落ち着かない、あーくんが大好きな小熊のぬいぐるみ。
「うっ……ぐすん」
あーくんの瞳から涙が流れました。しかし、この世界では下に落ちるはずの涙は、上へと吸い込まれていきます。
「こぐまさん、ごめんなさい……。けんかして、ごめんなさい……」
その時です。あーくんと同じように、すすり泣く声が聞こえてきました。
よく見てみると、その人は縮こまって涙を流しています。
「だいじょうぶ……?」
その人は短い茶色の髪をしていて、つぶらな黒い瞳をしていました。
まっさらな白い長袖シャツを身に包み、黒い短パンと真っ赤なリボンが目立ちます。
あーくんは、似たような人を見たことがあるような気がしました。けれど、なかなか思い出すことができません。
「大丈夫じゃない……」
茶髪の人はそう言いつつも、涙をぐいっと拭って立ち上がります。
「おれ、ずっと待ってるんだ」
あーくんは何か分からなくて、首をかしげました。
「おれとずっと一緒にいてくれて、大事にしてくれる人を」
途端、あーくんは茶髪の人に抱きしめられました。あーくんは目を見開いて固まってしまいます。
「ずっと、待ってた」
あーくんは一つの可能性を口に出します。
「こぐま、さん……?」
すると小さかった茶髪の人が、人間のこぐまさんの姿へと変わっていきます。
「あぁ、そうだ。旦那が大好きなぬいぐるみの、こぐまさんだよ」
こぐまさんは優しい笑みを浮かべ、右目から温かい涙を流します。
真っ暗な世界が、あーくんの部屋に変わります。そこにはくらげさんもいました。
「めでたしめでたしー」
くらげさんは、二人の写真をガラケーで撮影します。
「えへへ、めでたしだね」
あーくん達に幸せな空気が包まれていきます。
「おい! オレはまだ旦那と冒険してねぇぞ! それに……」
「それに?」
「なぁにー?」
あーくんとくらげさんは、何の気なしにこぐまさんを尋ねます。
「まだ話したいことがいっはいあるんだよ! まだベッドで『ぼよんぼよん』もしてねぇし!」
「あ、ほんとだ!」
あーくんは納得して軽く手を叩きました。
「ほらぁ、こぐま。やっぱりこぐまは一人ぼっちじゃないし、愛されてるじゃん」
「うっ、うるせぇな!」
くらげさんはこぐまさんをからかって、ガラケーの再生ボタンを押しました。
『ずっと、待ってた』
「ぎゃあぁぁぁ!?」
「恥ずかしい……。やめろ、本当……」
こぐまさんの顔はリボンよりも赤くなり、恥ずかしさで顔をおおいます。
「これからも、ずっと一緒だねぇ。ひゅーひゅー」
「うるせぇぇ!!」
こぐまさんとくらげさんの喧騒は、お月さまが空に映るまで続きました。
勘違いされる方もいるかもしれませんが、まだ完結はしてないです…!




