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第20話

 日曜日。

 僕は電車に乗り、自分の住んでいる町からできるだけ離れた、大きめの町の駅で降りた。

 ここなら知り合いに出会うこともまずない。

 ナンパなんかしている恥ずかしい姿を誰にも見られなくて済むだろう。

 それにしても……。

 生まれてこのかた、ナンパなどというものをしたことがない。

 話に聞いたり、テレビドラマで見たりしたことはあるけれど、実際にナンパしている人を見たこともない。

 そんなことする人なんているのかな……。

 いや、いようがいまいが、僕はやらなければならないのだ。

 いざ声をかけようと思って周りを見回すが……、いないものだ。

 声をかけるのに良さそうな子が。

 容姿がどうというのではない。

 思いのほか、一人で歩いている女の子がいないのだ。

 たいてい数人で連れ立って歩いている。

 あるいは、カップルで歩いている。

 こっちは男一人。

 女の子数人のグループに、男一人じゃ声はかけられないし、カップル相手に声などかけられようはずもない。

 ああ、困ったな……。

 といって、ここで一人でもじもじ立っていても何も始まらない。

 僕はナンパをしなければならないのだ。

 周りを見回す……。

 あ。

 いた!

 一人、女の子がこちらに……、駅に向かって歩いてくる。

 誰かと待ち合わせかもしれないけれど、今はともかく一人だ。

 よし、声をかけよう。

「あ、あの……」

――と、声を出そうとしたけれど、出せなかった。

 動くこともできなかった。

 勇気が出なくて最初の一歩が踏み出せない。

 僕が動けないでいる内に、その女の子は目の前を通り過ぎていってしまった。

 僕の目の前を通り過ぎると、女の子は小走りになった。

 小さく手を振っている。

 女の子の視線の先に、その女の子に対して手を振り替えしている若い男がいた。

 待ち合わせだったんだな。

 まあ、駅前なんかに来る人のほとんどは待ち合わせだろう。

 僕みたいにナンパ目的で駅前に立つやつなんかいるのだろうか。

 また、人の流れを見る。

 小学生ぐらいの女の子が三人、連れ立って歩いていった。

 二十代と思われる女性の二人連れが通った。

 大学生ぐらいの女性が歩いていた。

 その女子大生と思われる彼女は、別の二人の女性グループと待ち合わせだった。

 なかなか、ナンパできそうな人が見つからない。

 向こうから女の子が歩いてきた。

 年の頃は、僕と同じくらいか?

 今度こそ、声をかけねば……。

 世界を救うために!

 僕は一歩を……、踏み出せた!

 僕は声をかけ……ることができたた!

「あ、あの……」

 突然、僕に立ちはだかれて、その女の子は怪訝な顔をした。

「ぼ、僕とお茶飲まない?」

 女の子は僕と視線を合わせないようにすると、ささっと横にずれて、僕から小走りで離れていった。

 明らかに不審者と思われたようだ。

 く……、ツラい。

 ナンパというのは、こんなにもツラいものなのか。

 これから先、いったい何人の女の子に声をかければいいのだろう……。

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