「友達の友達の話なんだけど、」
さいべり屋です。
黒ヤギさんから記念ステッカーをいただいた話をしていたら、夫から怨念のこもったエピソードを聞かされたので、面白いから晒してみることにします。
ええと、仮に友達の友達としましょうか。彼はとある外食チェーン店の熱烈なアンチです。
それというのも、長くてねちっこい理由がありまして。
今のようにお絵描きしてくれるAIがいるわけでもない、それなりにCG人口が少なかった頃のお話です。
彼はリーマンの傍ら、イラスト仕事で小銭を稼いでいました。
彼は当時付き合っていた彼女が公募で小金をせしめようとしているのをみて、
自分もなにかやってみようと思ったらしい。
そんな彼が目をつけたのが、某巨大外食チェーンのロゴデザイン公募。
賞金もさることながら、街に自分のデザインが飾られたら嬉しい。
彼は気合いを入れて応募しました。
果たして某チェーン店のデザインは刷新され、彼は浮き立ちました。
——俺のデザインだ!
配色から手製のオリジナルフォントに至るまで、彼の作品にそっくりです。
採用されたんだと大喜びしたものの、待てど暮らせど某社からの連絡は来ません。
心配になってよくよく見ていると、文字の配置が若干違うような気もしてくるし、
他作品の空似ということかもしれない。
誰かほかの人が採用者として発表されているのかもと、
某社のホームページを確認してみますが——
——ない。
他の受賞者どころか、企画ページ自体が見当たりません。
妄想癖のある彼女なら、「え、夢? ホラー?」とか言うところですが、
彼はとりあえず企業に問い合わせをすることにしました。
ホームページに電話番号が載っていなかったので、彼はお問い合わせフォームからメールを送ってみます。
——こんにちは。
——ロゴマークの公募、結果発表しないんですか?
——どなたが採用されたんですか?
——企画ページ無くなったのなんでですか?
——採用されたの、僕のにそっくりなんですけど。
返事は返ってこなかったそうです。
そうなると、無名の個人にできることは、当時はそんなになかったらしい。
しばらくはねちっこく問い合わせしたりしていたようですが、そのうち諦めたみたいです。
今ならSNSで拡散して炎上、っていう手段もありますけどね。
——それから◯◯年、彼はそのお店には一度も食べに行ったことがないそうです。
まあでも、仮にそれが本当だったとしてですよ。
巨大企業が数万数十万の賞金出し惜しみして、一生モノのアンチを錬成するものでしょうか?
意味が分かりません。
ねえ、やっぱり夢だったんじゃないの~?
謎です。
……あ、友達の友達の話ですよ。




