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婚約破棄された令嬢は変人公爵に嫁がされる ~新婚生活を嘲笑いにきた? 夫がかわゆすぎて今それどころじゃないんですが!!  作者: 杓子ねこ


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【書籍発売記念】番外編.もこもこ着ぐるみパジャマ品評会

 春うららのクイン領。各地で種蒔きも終わり、芽吹きを迎え、活気づく季節。

 

 一人での視察を終えたシエルフィリードがクイン家屋敷に戻ってくると、大広間では〝もこもこ着ぐるみパジャマ品評会〟が開催されていた。

 

「……?」

 

 性格は温和、否定的な感情を表に出すことの少ないシエルフィリードも、さすがに腕組みをして首をかしげ、もう一度しげしげと大広間を見まわした。

 

 大広間には、晩餐会のようにいくつかのテーブルが置かれ、それぞれにもこもこの羊毛でできた着ぐるみのパジャマが並べられていた。

 どうやら商人らしい参加者たちが肌触りを確かめたり、職人らしい格好の者から話を聞いたり、実際に試着したりしている。

 

 それはものすごくシュールな光景だった。

 

「あっ、シェル様!」

 

 大広間を忙しく行き来していたテオドシーネが、シエルフィリードに気づいて歩みよってきた。テオドシーネの両腕にも、もこもこが抱えられている。

 

「テオ、これはなあに?」

「もこもこ着ぐるみパジャマ品評会です」

 

 同じ文言の書かれた横断幕を指さしながら、テオドシーネが答える。それは先ほどシエルフィリードも目にしたものだ。

 

「やっぱりそうなんだ……」

 

 わかるような、わからないような、わかってしまったら困ったことになる気がするような……。

 戸惑うシエルフィリードに、テオドシーネがバツの悪そうな顔になった。

 

「説明しておりませんでしたかしら……?」

「うん、聞いてなかったと思う」

「それは申し訳ありませんでした。驚かせてしまいましたね」

 

 もこもこを抱えたまま、テオドシーネが頭をさげる。

 

 公爵夫人となり、領地経営の補佐となったテオドシーネは、クイン領内でも王都との連携でも様々な政策を打ち出した。

 楽しそうに働く姿はシエルフィリードを幸せな気持ちにさせてくれるが、なにせクイン領は広く、計画段階のものまで含めると政策も多い。共有しきれていない部分もあったのだろう。

 

「クイン領は比較的涼しい気候ですから、羊毛産業も盛んですよね。王都との販路もできましたし、何か新しい事業を起こせないかと考えていたのです」

 

 従来どおりの衣料品に加え、たとえば端切れを再度ほぐしてフェルトにしてみたり、ぬいぐるみを作ってみたり、と試すうちに、着ぐるみパジャマを思いついたのだという。

 

「ほかにはない品物ですし、インパクトも抜群です。新しい物好きの王都で売れるのではないかと」

「なるほど……」

 

 そう聞けば、シュールだと思っていた光景がまさに品評会の様相を呈してくる。

 

 シエルフィリードが呆気にとられたくらいだから、テオドシーネの言うとおり、印象に残るだろう。

 各テーブルにはもこもこの羊着ぐるみもあれば、もこもこのウサギ着ぐるみもあれば、もこもこのトラ柄着ぐるみ、さらにはもこもこのドラゴン着ぐるみまで、様々なものがある。

 気になって手にとった商人たちは、クイン領の羊毛の質の高さに驚いているようだ。試着する者が多いということは、それだけ商品に求心力があるということでもある。

 知名度をあげ、そこから上質さを認知させるのには最適な戦法……。

 

(……なのかな?)

 

 はっきりと腑に落ちないところはあるものの、シエルフィリードは納得することにした。テオドシーネと家令、それに領民たちの努力の結晶である。

 

「いまから準備を進めておけば、次の冬には販路にのせることができます。うまくいったら西辺領とも提携して大々的に……」

 

 未来を語るテオドシーネの瞳は生き生きとしていて、紅潮した頬がかわいらしい。

 テオドシーネはシエルフィリードのことをかわいいとよく言うけれども、シエルフィリードからしてみればこうしてたくさんの表情を見せてくれるテオドシーネもとてもかわいい。

 

 初めて出会ったときから、テオドシーネはまっすぐで、自分の置かれた状況を冷静に把握しつつも未来を見つめていた。自分に何ができるかを考えていた。

 だから好きになったのだ。

 

「シェル様?」

 

 ふふ、と笑い声を漏らすシエルフィリードの顔を、テオドシーネが覗き込む。

 

「テオが楽しそうでよかったな、と思って」

 

 素直な気持ちを告げれば、テオドシーネも破顔する。

 

「ええ、シェル様に出会えて、毎日が楽しいのです。もこもこ着ぐるみパジャマは種類をたくさん開発しましたし、赤ちゃん用から大人用、男女のサイズも取り揃えているんです。ぜひシェル様も日替わりで着てくださいね」

「……ん?」

 

 なんだか最後にまた予想外の言葉が聞こえたような、と思ったものの、テオドシーネに手を引かれて立ちよったテーブルで、笑顔の職人たちが商品の説明を始めたので、シエルフィリードは黙っておくことにした。

 

 

 各種もこもこ着ぐるみパジャマは予定どおり翌シーズンに発売された。

 テオドシーネの狙いどおり、人目を引く見た目と品質の保証された羊毛の上質な手触りは相乗効果を生みだし、王都のみならず王国じゅうで瞬く間に人気を博した。

 

「日々の仕事疲れが癒やされる」という理由で、最近心労の多かった国王や、その右腕であるユフ侯爵までもこもこ着ぐるみパジャマを購入したということは、当のテオドシーネも知らないことであった。

お久しぶりです~!

第3回アイリス異世界ファンタジー大賞にて【銀賞】を受賞しました本作が、いよいよ書籍発売となります!

3/4発売、紙書籍は早売りが始まっているところもあるようです。


イラストはねぎしきょうこ先生にご担当いただきました。

本編ボリュームアップして、テオもシェルも大活躍。かぶりものもボリュームアップしております。笑

大活躍部分をすごく素敵なイラストにしていただいてます!


一迅社様のサイトへは↓↓下部のリンクから↓↓

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