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初夏の走馬灯  作者: 一ノ瀬慎弥
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彼女との日常

4.

「これって商売する気あるんですか?」

仮採用のバイトで初めて店に来た彼女の率直な感想だった。表情を見ると呆れたを通り越してただ驚いてるだけである。

「これだとお客さん来ないでしょう。うん、絶対ダメだと思う」

1人で何か納得したようである。

「とりあえず、商品の配置とか店の雰囲気とか、いろいろ変えたいんですけど、いいですよね!」

変えてもいいか?ではなく変えるとの宣言である。

自分としてはこだわりとかは全くなかったので、どうぞご自由にと回答したら、彼女は早速いろいろと店の中を改造し始めた。


そんなところに例の翁がやって来た。やって来るなり、彼女がいることに驚いたみたいである。

「なんじゃ、なんじゃ、こんな店でもバイトを雇う余裕があったとは驚きじゃのう」


反論の余地もないので黙っていた。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」


「いや、この店の店主とはちと顔見知りでなぁ。どうせ暇じゃろうと思うて話相手になって貰おうと思うてきたのじゃが、邪魔したかのう?」


「いえいえ、そんなことはないですよ。片付けとかは私してるので、お構いなく〜」


「そうか、ならちと店主を借りるかのう。悪いねぇ」


こちらを振り向いた翁の顔はニタニタ笑っていた。

明らかに彼女のことをネタに自分を揶揄う気満々である。


仕方ないので彼女を雇う(といってもまだ仮ではあるが)経緯を話すこととなった。


「要はナンパなわけじゃろ。全く店もロクに営なむ訳でもないのに隅に置けぬ奴よのう」


人の話からどうやったらナンパしたに繋がるのやら、全く…。


「まあ、それにしても、お前さんよりかは店の経営とか向いてそうじゃがなぁ」


彼女の手で片付いていく店の様子を見ながら言った翁の言葉に自分も納得してしまった。

これでは、本採用するしかないなぁと思っていたら、翁に見透かされたのか、またニタニタ笑っていた。


「まあ、お前さんの店だから、どうしようがお前さんの勝手じゃが…」


そこで急に真顔になり、声を押し殺して

「まあ、彼女に裏の事はバレないようにしなよ。でなければ、分かっているな?」


「分かっているさ」


「ならいいさ」


また、いつもの翁の表情に戻り、

「さて、儂はそろそろ帰るかのう、あ、そこの彼女さん、店主に手を出されんように気をつけてのう」


余計な事を言いやがって。



5.

彼女がバイトに来てから1週間が過ぎた。

彼女が店の商品の配置や内装をいろいろ手がけてくれたおかげで、店の雰囲気は今までの商売をやる気があるのか怪し、陰鬱とした感じでなく、少しオシャレな感じへと変わった。

更に、彼女が手作りしたお店のビラを街頭で配ってくれたこともあってか、今までよりお客さんの数が少し増えた感じであった。

彼女に言わせると、きちんとお客さんが入ってくれないと自分のバイト代を払って貰えるか怪しいからとのことであったが。


と言っても、今までよりお客さんが増えたくらいなので、時間が余ってることもあり、彼女とはいろいろな話をした。

彼女の学生生活とか、趣味の話とか、取り留めもない話ばかりであったが、彼女と話している時は楽しかった。ちなみに少し前に彼氏とは別れて今は相手はいないそうだった。


1ヶ月が過ぎたくらいに、店の終わりに彼女を食事へと誘った。いつものお礼とか、断られないようにいろいろ言い訳を考えていたが、彼女はすんなりO.Kをくれた。

街の夜景が綺麗に見えるお店で、彼女は喜んでくれたようだった。

食事の後、夜の街を少しぶらぶらとして、別れしなに彼女に告白をした。

返事はO.Kだった。


それからは、お店の後に食事に行ったり、彼女の家で彼女の手料理を作って貰ったり、たまに店を休みにして一緒に遊びに行ったりした。

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