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A 清楚系の先輩・野村翡翠 その一

 キミは決心して言う。


「じゃあ、野村先輩と付き合いたいです!」


キミの決心とは裏腹に、シレンさんはあっさりと返事をする。


「はいね。まあ、友達の妹なんて関係がこじれたらうざくなるだけだし、幼馴染は近過ぎて恋愛の対象外だし、消去法で学校一の美人を選ぶわな」


「いや、そんな理由じゃないんだけど……」


「じゃあ、とりあえず野村先輩とやらに近づいて、仲の良い先輩後輩の関係まで持って行きますか! 私の言う方法で近づいて行きなさい!」


「分かったよ……。本当に大丈夫だろうな?」


「平気、平気! 私の恋愛じゃないし、振られてもそれがまた力になるから。人は振られる恋愛をして、成長していくものだから。それに失ってこそ、その物の本当の価値が分かるっていうし、赤の他人でそんな経験をするなんて、すごいお安い代償じゃないか。別に、お前の身体を持っていかれるわけでもないし、ガンガン攻めろよ!」


「メッチャ不安なんですけど……」


「ところで、君の部活は何なの? それによっても、作戦がうまくいくか左右するんだけど……」


「吹奏楽部だよ」


「またマイナーな部だね。まあ、作戦には有利に働くだろう。吹奏楽部なら、それなりに運動も必要だしね。これは、うまくいく予感がする!」


こうして、キミとシレンさんは一晩で、野村先輩を落とす作戦を検討する。



 ちなみに野村先輩のスペックは、ロングヘアーの髪型、顔はちょっと幼い感じの美人系、おっぱいもでかくDカップはある。近くを通り過ぎると、良い香りが漂うお姉さんタイプ。


 翌日の部活の帰りに、キミはシレンさんに言われた通りに、野村先輩に近づいて行く。シレンさんは影からそれを見守ってくれていた。


 キミは野村先輩に近づきこう言う。


「あ、昨日はどうも。野村先輩と話せてうれしかったです」


「ああ、水上君、こちらこそ……」


野村先輩は笑って、キミに応対する。笑顔がまた素敵で、キミはちょっと緊張している。シレンさんはキミと野村先輩の様子を見ながら、心の中で解説していく。


(これはシレンさんの心の声です。恋愛の参考にでもしてください:よし! まず、昨日の事でさりげなく話しかけ、ついでに好意を持っていることも示すことができた。掴みは良好だぞ、透!)


キミはシレンさんのガッツポーズを見て、勇気をもらい、野村先輩と更に話し続ける。


「オレも前から、野村先輩と話をしてみたかったんです。あ、まあ、美人だからってのももちろんありますけど……。でも、キミは先輩の吹奏楽に対する姿勢が見習いたくて、先輩の努力している姿を見て、素敵だなと思ったんです」


「ええ! まあ、ありがとう」


野村先輩はキミにそう言われ、照れくさそうに笑う。ちょっと、うつむいてる感じが、キミの心にキュン! とくる。もう、シレンさんのサインを見る余裕なんてなかった。


(よし! 美人に美人と誉めても、みんなに言われているからたいした好感度は上がらない。しかし、努力している所を誉められると、とたんに好感を持ってくれるのが人間だ! 


後は、わずかなコツで落とすことができる!

頑張れ、透! あれ? ちょっと、私を見ろよ!)


キミは緊張していたが、事前にシレンさんと練習した通りに話し続ける。


「先輩、他の人と比べても、全然息継ぎとかしないじゃないですか。キミ、腹筋とか、腕立て伏せとかしてるけど、全然呼吸が続かないんです。何か、コツとかを教えてもらえませんか?」


野村先輩は、キミが先輩の細かい所を見ているので、驚いたようだった。


「すごい、良く見てるのね。そんな細かい所まで……。うーん、じゃあ、私と一緒に朝の登校と帰りの下校をするとか? ほら、家がけっこう遠いから、運動になるかなって……。走ることでかなり肺活量が上がるからね。でもやっぱり、それはきついよね?」


野村先輩も、キミに対する好感度が上がったためか、かなり積極的な事を言い出した。


(しっゃあ! 来た! 吹奏楽などを習いたいという気持ちから、先輩の細かい点を見て、それを教えてもらいたいという理由で好感度を上げる荒技だ! 選択する細かいモノを間違えると、ストーカー扱いされるが、うまく決まれば効果は抜群だ! ポイントはみんながいる時にでも、観察できる点が好ましいぞ。


野村先輩も油断して、一緒に登下校とか言っちゃってるし、こりゃあ、もう決まったも同然だな! 後は、彼氏がいないかだ……)


キミはシレンさんを見て落ち着き、先輩が彼氏がいないかをチェックすることにした。


「いや、そうしたいのは山々だし、先輩に特訓を付き合ってもらいたいですけど、彼氏さんに悪いからな……」


キミは恐る恐る野村先輩を見るが、先輩は驚いた表情をしている。


「え? 私、彼氏なんていないけど……」


キミはその言葉を聞き喜んだが、シレンさんは冷静な表情をしている。


(ふっ、思った通りだ! 女性が美人過ぎると、大方の男は振られるのが怖くて近づいてこないからな。ケーキ屋に一人で入った時点で、私はその事実に気付いていたぞ! 


彼氏がいたら、デートスポットだから一人ではあまり来ないからな。まあ、彼氏がいた場合は、恋の相談ができる相手としてアピールしておくことだ。キミも好きな子ができたら、先輩に相談しても良いですか? 


先輩も困ったことがあったら相談してくださいね。力になりますよと言ってね。そう言うことで、先輩が失恋した時や彼氏と気持ちが冷めた時などに、彼氏になるチャンスが出て来るのだ。彼氏がいるからと、諦めるのではなく、チャンスを待つのがコツだ! 


まあ、今回は彼氏がいないようだから、ためらわずにお願いしろ!)


キミは先輩が彼氏がいないので、特訓がてら一緒に帰ることにする。


「じゃあ、一緒に登下校お願いします! 先輩の安全のためにも、精一杯努力します! 夜道はけっこう危険ですからね」


「あ、お願いします!」


(うまいぞ、透! 自分のメリットだけでなく、先輩のメリットも考えるとは……。一瞬、え? どうしようかなと思っても、夜道の不安から逃れるということで、意外と了承してしまう物だ。ポイントは、一緒に帰る相手が、私のためにそこまでするの? と思わせないこと。


あまりにも押し付けがましいと、逆に不安になってくるからね。自分のメリットがあるから、ついでに相手のメリットもしてあげようというのが、良い方法だ。透はあくまでも、運動のついでに先輩の家によるだけだからね。後は、一緒に居ても恥ずかしくないくらいのレベルでいけば良いわけだ)


「じゃあ、今日の帰りからお願いします。あ、オレの従姉も、今日は一緒なのでお願いしますね!」


「あ、そうなの? よろしく」


(うまい! 最初は、異性同士だと話も合わないから、相手の同性の友達を一緒にする方が良い。まあ、この場合はケースバイケースだから、母親や彼女の友達等が望ましいぞ)


こうして、シレンさんの作戦は見事に成功し、キミと野村先輩は一緒に帰ることになった。


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