清楚系の先輩・野村翡翠 その二
予想以上に展開が付いていけないキミに、シレンさんはキミが困った時にアドバイスをくれると言う。ちょっと、昇降口で話をする。
「さて、第一関門は突破した。しかし、戦争において、これは奇襲が成功したに過ぎない。本番はこれからだ。
ぶっちゃけ、部活仲間同士で帰るなんて事好くある事だからな。せいぜい恋人になるきっかけを掴んだに過ぎない。
この帰り道の会話で、恋愛プラグが立つか、キモいと見られるかが決まる!」
「そんな……。オレはどうすればいいんですか?」
「ふっ、素直な良い質問だ! ようやくわたしの実力が分かってくれたかね。まあ、安心しろ。この話題を振っていけば、うまくいくはずだ!」
シレンさんはキミにカンぺを渡す。どうやら困った時は助けてくれるようだが、基本は自分で努力しろということらしい。キミはカンぺを見て、シュミレーションする。ある程度の自身ができた所で、野村先輩に合流する。
キミは野村先輩と一緒に下校することができた。時刻は七時で、もう暗かった。シレンさんは邪魔にならない位置にいて、付いて来る。はたから見たら、野村先輩がキミの彼女のように見えるだろう。くっう!
野村先輩はしばらく歩くと、話掛けてくる。
「もう、真っ暗だね。ごめんね。早く帰りたいだろうに……」
「いえ、先輩の安全のためです。喜んで! まあ、今日は従姉のシレンもいるから、走って帰れませんけど……」
キミがそう言うと、野村先輩はにっこりと、シレンさんを見て微笑みかける。
「ああ、昨日の……。仲良いの?」
「こいつ、最近引っ越して来たばっかりで、友達が少ないんですよ。しばらくしたら、他の誰かと仲良くしてると思いますよ」
「どうだか、しばらくしたら、オレ達、付き合ってますとか、報告して来そうな雰囲気だけど……」
野村先輩のきつい言葉に、シレンさんはきつい言葉で返す。
「金持ってないこんな奴と付き合うわけないだろ! 男は所詮、金だよ、金!」
一瞬の沈黙が訪れる。
野村先輩は決死の思いで、この沈黙を破ってくれた。
「ふーん、現実主義なんだ。でも、年収何百万円稼いでるっていう基準で付き合わない方が良いと思うよ。だいたいの男性は年収五百万円以下だから。お金は大切だけど、それだけで幸せが決まるわけじゃないからね」
野村先輩の親切なアドバイスを、シレンさんは不適切な発言で返す。
「ああ、そうですね。見た目は清楚だけど、私生活は乱れてるかもしれないどっかの誰かさんと同じですよね!」
シレンさんは満面の笑みで、野村先輩を見る。
シレンさんの一言により、なぜかキミは修羅場に遭遇してしまった。
「へー、そういう偏見は持たない方が良いですよ。やっぱり、外見も内面からにじみ出て来ますから。今は綺麗で可愛いって言われていても、しばらくしたら、内面の汚ないモノがどろどろ出て来て、外見も醜くなってしまいますからね」
「ああ、さすが、経験者は違いますね。あなたもその姿を維持するのは、大変でしょうね。かなりお金をかけているんじゃないですか? 全く、どこから費用を捻出しているのやら」
「いえいえ、私は内面が綺麗だから、そんなにコストも手間もかからないんですよ。あなたこそ、かなり無理しているんじゃないですか?
無理は逆に、美容を損ないますよ。まず、あなたの心を治して、そこから外面も変えないと、無駄な浪費するだけですからね」
「それが、あなたの努力から得た答えなんですね。私も、あなたのように末期で、すぐに改善が必要になる前に、心を清楚に保つように努力しないといけませんね。アドバイスありがとうございます!」
「いえいえ、もう手遅れかもしれませんが、せいぜい努力することは重要ですよ。無駄かもしれないですけど……」
白熱する野村先輩とシレンさんの話し合いをキミは止める。これ以上は、キミの精神が耐えられないと感じたからだ。
「ちょっと、男の幻想を打ち壊すような話はやめてくれませんか? オレ、まだ夢を見ていたい年頃なんです!」
キミの言葉を聞き、二人はフォローしてくれる。
「ああ、まあ、結婚すれば嫌でも見るようになるからな。今の内に現実を知っておいた方が良い。
キャバクラとか、女の子の集まる所で仕事してる男性は、女性不審に陥ってホモに走る場合もあるからな。今の学生の内に、ある程度は覚悟しておかないと……」
「そうよね。それに、女の子はこうやってどろどろ言ってるうちに、何かしらの共感を持って仲良くなるものだからね。自分の不幸は嫌だけど、他人の不幸は面白がるなんて好くある話だしね!」
「そうそう、クラスで優等生や美人をハブにしたり、精神的ないじめ系が好きなのは女の子だもんね!」
キミは二人にツッコミを入れる。
「どっちも心が汚れてるじゃんか!」
キミのツッコミは失敗したようだ。キミ達は黙ってしまい、かなりの時間が過ぎる。キミは焦っていた。このまま野村先輩を家に帰すのは、男としてダメな気がしていた。
なんとか、延長しなければと考え出す。キミはコンビニを見て、起死回生の手を思い付いた。そのコンビニはミニストップであり、今話題の人気商品のプリンが発売されていた。
「あの、コンビニによっても良いですか? ここの最近出たプリンが美味しいんですよ。良ければ、奢りますよ!」
キミがそう言うと、二人は食い付いて来た。
「仕方ないな。用事も無いし、いいだろう!」
「ちゃんとスプーンももらって来てね!」




