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  隣に住んでる幼馴染の火野紅葉 その二

キミと紅葉のデートする日の朝になった。キミは寝つきが悪かったが、何とか起きることができた。シレンさんはいつも通り目覚めが悪いので、まず起こすことにする。


布団をはぎ取り、無理矢理起こす。シレンさんはパジャマ姿なので、躊躇なく布団から引き離す。


「眠い、だるい、調子が悪い。お前ら二人だけで行ってくれ……」


シレンさんは駄々をこね始める。


「いや、さすがに初日でそれは……。理由として、あんたを楽しませるために行くんだから……。ちゃんと起きて、ついて来て下さいよ」


「ちっ、何が悲しくて、他人のデートに参加しなきゃならないんだか。お前らのラブラブぷりを観察してろとか、拷問じゃね? マジ行きたくねえよ……」


「あんたが言い出した事じゃないかよ」


「はいはい、分かったから出ていけ! 乙女の着替えシーンを覗いちゃ駄目だぞ」


「今の会話に乙女要素があったのだろうか」


キミはシレンさんが着替えるのを待たずに、紅葉の家を訪ねる。


「おーい、お前も寝てるのか? 約束、忘れてないか?」


紅葉の家から返事はなかった。仕方なく、キミは紅葉の家のポストから、彼女の家の合い鍵を取り出した。


紅葉がキミを起こす時があるように、キミも紅葉を起こす方法を知っていた。そのため、鍵のありかも知っている。


「どうせ寝てるんだろう。起こしに行ってやるか?」


キミは鍵を開け、紅葉の部屋に突入する。キミは紅葉の部屋まで来て、ノックをする。さすがに、この前のパンツ姿だったら、お互い気まずいからな。


「おーい、生きてるか? 約束の事忘れて寝てるのか?」


紅葉の部屋から返事はない。


「仕方ない、入るぞ!」


キミは紅葉の部屋のドアを開ける。すると、目の前が真っ暗になった。


「なーに、乙女の部屋にずかずか入ってるのよ! て、あれ、ヒットしちゃった? 冗談のつもりだったのに……」


そこにはバスケットボールを投げつけた紅葉の姿があった。キミは不意を突かれ、しばらく倒れた。紅葉は荒々しく介抱する。


「ちょっと、冗談でしょ? 起きて!」


シレンさんはその声を聞き付け、紅葉の部屋に直行する。キミの姿を見て診断する。


「ああ、これはもう駄目ですね……。頭の方は治らない。どうやら、先天性のもののようだ。まあ、あなた責任を取って、こいつが起きるまでおんぶしてくださいよ。


どうせ、こいつもエロい事考えていたから、こうなたんです。お互い自業自得ですよ!」


シレンさんはキミに的確な診断をする。


「ああ、あなた、何勝手に人の部屋に入ってるのよ。まあ、助けてくれてありがとう」


「とりあえず、風呂場に行って、こいつを目覚めさせよう。息ができないと知れば、嫌でも起きて来るだろ!」


「透、死んじゃわないかな?」


「まあ、最悪の場合は人工呼吸を頼みますよ」


キミは二人に連れられ、紅葉の家の風呂場に行く。そこで頭から水を掛けられた。


「つめて! なんだ?」


「あ、起きた、良かった!」


「これで起きなかったら、頭を浴槽に突っ込んだのだが……」


「殺す気か?」


キミと紅葉は、シレンさんに突っ込む。


「なかなかのハモリ具合、私達の入る隙間が無いね、ネコーズ」


シレンさんはそう言って、ネコーズで腹話術をする。


「そやな、奴らの二人だけの世界にしたり……」


唇が動いているぞ、唇が……。

紅葉はシレンさんの冗談を見て言う。


「え? この子、かなりヤバい?」


「かもしれん。温かい目で見守ってやってくれ!」


こうしてキミ達は、ようやく動物園に向かうことになった。自転車に乗って移動する。


 キミ達は動物園に着き、入場した。キミは紅葉の手を引き、歩き出す。


「じゃあ、行くか!」


「ちょっと、何ナチュラルに手を繋いでんのよ? 放しなさいよ!」


そう言って、手を離そうとする紅葉に、シレンさんが近付く。


「このカップルが多い動物園内で、手を繋がないのは逆に不自然だ! しかし、嫌なら仕方ない。間にネコーズを挟んでと……」


シレンさんは、キミの手にネコーズの右手を握らせ、反対の手を紅葉の手に握らせる。


「ちょっと、なんか、異星人を捕まえたみたいになってるんですけど……」


「ネコーズがおかしなことに変わりはないだろ。ネコなのに人間以上の推理力、まさに異常だ!」


シレンさんの行動を見て、紅葉が悪態を吐く。


「あなたが間の方がしっくりくるけど……」


紅葉の言葉を聞き、シレンさんは怒り出す。


「失礼だな! 誰が異星人だ! 私はネコーズぬいぐるみを抱え、バカな男がフリーと勘違いした所をカモるから、手は繋げない!な、消去法でお前ら二人が手を繋ぐのがベストなんだ」


「異星人というより、ハンターか! 分かったわよ。手を繋ぐくらいどうってことないし」


紅葉はキミの手を繋ぐ。ちょっと汗で緊張したようだ。キミも緊張で震えているから分かる。シレンさんはキミ達のぎこちない動きを見て笑う。


(ふっ、所詮は経験もない小娘、あっさりと罠にかかってくれたわ! この方法は恋人との距離を縮める方法だ。


身体の距離と心の距離は一致するという心理学を元に、編み出したテクニックなのだ。


相手との心の距離を近づけたいのならば、相手との身体の距離をいかに近づけるか考えればよいのだ。


ただし、ただ近づけばいいというものでもない。


 人間にはパーソナル・スペースと呼ばれる空間があり、相手との人間関係によって、近づいても許される距離が決まっている。


それは大体、親しい友人であれば約45センチ、恋人だと15センチくらいだ。


 従って、擬似的に15センチ以内にまで近づけるような状況を作り出せば、二人の距離が近い事を相手が自己観測して、こんなに近づいていると、恋人同士みたいと思い込み、それにふさわしい感情を作り上げてくれるのだ。


これは、一緒に食事を取る場合にも応用できる。テーブル席ではなく、カウンター席に並んで座るのが良いのだ。その方が、お互いの距離が近くなるからね。


映画とかで、恋人同士がバーで飲むのもそういう工夫があったのです。まあ、高校生なら回転寿司やラーメン屋のカウンターで我慢しとけよ。お酒は二十歳に成ってから!)


こうして、キミ達は動物園を回って行くことになった。キミは緊張していたが、嬉しさも込み上げていた。

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