儀式
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全天アトラス : 稼働中
擬似天球ミュール : 起動中
ミリシアフォルダ : ロード中
SCENE LOAD
TITLE : 儀式
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今日は、大事な日だ。
大人達はそう言う。
おじじも言う、とてもうるさい。
でも、私にとっては違う。
今日は大事な日だ。
儀式が始まる。
巫女様の手の一振りが。
静かに進むその動きが。
広い部屋に響く鈴の音が。
息をするところも。
鼓動だって聞こえそう。
静寂さえも音に聞こえる。
一瞬でも目を離したくない。
離せない。
全てが、今、そこに。
もう!さいっこう!
巫女様すてきーーーーー
きゃーーー
何これ何これ最高なんですけど!!
いやー、この日をどれだけ待ち侘びたか!
まず、あのお顔可愛いと綺麗の両立とか凄い最高きゃーーーー
手の動きとか、なめらかなのに力強さも感じるとか、もうほんとどうなってんの?
シャンッ
この鈴の音がまた良いのよねーー。
シャンッ
シーンとした部屋に響く鈴。
はぁぁ、染み渡るーー。
シャンッ
シャンッ
いつまででも見てられる、一年中やんないかな?
あ、ダメか巫女様農作業してるんだった。
普段はあんな感じなのに、この前イタズラしたロイドのお尻叩いてたな。
シャンッシャンッ
シャンッ
こんな時は流石にイタズラ小僧共も静かだな、ヨシヨシ。
私の巫女様タイムを邪魔するなぞ万死に値する。意味わからないけど。
痛っ
いけない、ソワソワしすぎて隣のマリーに突かれた。
あ、マイク笑ってる、後で締める。
シャンシャンシャンシャンシャン
静かな部屋に鈴の音。
目の前には憧れの巫女様。
なんて至福の時間。
シャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャン
今日は巫女様サービス満載だなー
鈴の音大放出。なんてね。
シャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
あれ?ここ、
こんなに響いたっけ?やりすぎじゃない?
巫女様間違えた?まさかねー。
シャン!!
痛っ!
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
急に音が大きく。
響く響く響く響く響く響く響く
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
なんで?なに?
誰も気づいてない?
え?私だけ?
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
頭に響く
体の中にまで音が入ってくるみたい
痛い痛い痛い痛い痛い。
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
い いた い
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャ
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RET:FOUND
PROC::VERIFY_INSTANCE
FLAG:CONSISTENT
PROC::AUTHENTICATION
KEY:ACCEPTED
LEVEL:GRANTED
PROC::FINALIZE
STATE:CLOSED
PROC::CONNECT
PORT:ALLOCATED
LINK:OPEN
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音が
消えた
誰も
動かない
巫女様も
動かない
音が
何も
しない
呼吸の音が
うるさい
鼓動の音が
うるさい
思わず飲み込んだ
喉の音も
うるさい
なにも
聞こえない
ドンッドンッ!!!
「なに!?」
突然大きな音が
外から?
急に大人達が騒ぎ出した。
泣いちゃってる子も居る。
何?外?外が?外がどうしたの?
今も、大きな音と振動が来る。
聞いた事ない、雷とも違う、大きな木を倒した時の音も違う、知らないけど、すごく怖い音。
え?これ、悲鳴?
ウソ、何?なんで?
あ、お母さん。
リゲルも、お家だ。
こんな大きな音、泣いてるかも。
行かなきゃ!
「おい!待ちなさい!出ちゃダメだ!」
邪魔な大人の隙間を抜ける。
すばしっこさで私に敵うわけないでしょ!
足が止まった。
呼吸が乱れる。
震えてる?
なんで?
目の前が
真っ赤に燃えてる
落ち葉を集めて焚き火したのより
ずっとずっと大きな火が
里を焼いてる。
体が勝手に走り出す。
どう走ってるのかも分からない。
見えるものもわからない。
真っ赤な火も
真っ赤なナニかも
何かの声も
なにも今は見えない見ない見たくない
お家へ!
早く!
急に大きな影が目の前に。
避けようとして
「え?人?」
思わず止まる、止まってしまった。
人のような形の、人じゃないみたいにゴツゴツした格好の何かが。
分からない、けど何か、怖い。
「ドッグ4よりドッグリーダへ、反応確認、対象発見」
「ポイントΣ2-6、対象は10歳程度の女児、肩までの赤毛、青目、紫の服着用」
「これより回収を試みる、至急増援要請」
「了解」
なに?なんなの?
よくわからない事を言ってる怖い人
わからないけど、私を見てる。
真っ赤に光る目が、こっちをじっと見てるのが分かる。
ジリジリと警戒してる動物みたいに近づいてくる。
思わず後ろに下がる。
下がっちゃダメだ。
前へ!
小さく身を屈めて、股の間を抜ける。
お父さんに追いかけられた時に編み出した技だ!
必死に走る、夜なのに明るい。
火の明かりと、空?空が明るい?なんで?
体は限界なのに、頭は余計な事ばかり考える。
それに、私
10歳じゃない
12歳だ。
ほんとどうでも良い。
すぐに息が切れる
何かに躓く
家へ
転んだ
痛い
家へ
飛び越える
何を?
踏んだ
何を?
家へ
苦しい
家へ
声が聞こえる
マリアさんかな
家へ
あの角
先にお家が
急げ
そうだ
リゲル
おもちゃ
直さなきゃ
泣いちゃう
お母さん
約束
したんだ
毎朝
お勤め
一緒に
決めた
毎日
一緒に
なかった
熱い?
煙が
匂い?
燃えてる?
何が?
お家は?
「ようやく追い詰めたな」
後ろから聞こえた声に、思わず振り向く。
「こいつか?なんだただの小娘じゃないか」
冷たい声に肩がすくむ
私を見てる?
見てないみたいに見てる?
「早く回収しろ!わしは忙しいんだぞ!全くこんな田舎まで連れ出しよって、研究が遅れたらどう責任取るつもりだ!」
大きな声に震えがくる
あの怖い人がいっぱい
右も左も
「こんな小娘がなぁ、本当か?」
「ハッ。反応は間違いなくこの少女から出ております」
分からない事をずっと言ってる。
何も分からないのに、私を狙ってる。
「ふん、まあ良い調べればすぐに分かる、違ってもサンプルくらいにはなるだろう」
捕まえる?
なんで?
逃げる?
どこへ?
お家
ない
誰か
「周りも気にせんで良いぞ、どうせ全部焼くんじゃ」
え?
全部?
みんな?
焼く?
もう
何も
聞きたくない
見たく
ない
音も
色も
匂いも
全部
全部
嫌だ
「所詮小娘か、縮こまってる今のうちに回収しろ!」
「はっ!」
嫌だ




