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幕間 忍び寄る影

12月も気が付けばもう終わるヨ! ということで。

幕間と、数日したら次話もあげます。

「よし、今日もがんばるか」

 軽く気合いを入れてから、ボクは補充用に届けられたケーキをショーケースの中に並べた。

 最近は夏休みということもあってなのか、平日でもかなりのお客さんが入るようになって、ケーキの消費量が一気に伸びていた。


 やっぱり八月限定、五色のケーキは大人気で、だいたいどのご主人様も三種類セットで召し上がるのが普通だ。三つじゃ足らなくて、もう三つ食べる方もいらっしゃるくらいだから、よっぽどアレはみんなに受け入れられているらしい。確かにあのケーキはボクも大好きだし、この前巧巳からもらった紫と黄色はすでにおいしくいただいてしまっているから、この大盛況はある程度予想済みだったけど、まさかここまでとは思っていなかった。


「あーもう、今日もやられたよ……」

 あぁ、美味しそうだなぁと思いながら、ショーケースを閉めると、今日のパートナーの愛水さんがむーと唸りながらお店に出てきた。

「また、ですか?」

「もーここまでくると勘違いじゃないね」


 ここの所、フォルトゥーナでは、一つの問題が勃発していた。

 ロッカー室に置かれている備品が少しずつなくなっているのだ。使っていたペンとか、紙とか、携帯用の鏡なんかまでなくなっているから、これはもう確実だろうと思う。


 いままでは、些細なものばかりがなくなっていたので、なくしただけ? とか思っていたけれど、ここまで頻度が多いとどうかとも思う。最近の我々はなるべく貴重品はロッカーの中に鍵をかけてしまいつつ、餌として「オーナーが使って、残り毛のあるホテルのブラシ」なんかを置くようにしている。

 それも先日なくなっていて、オーナーから、やだわっ、あたしにも春がきたのねぇーとかくねくねしてたけど、まあ、忘れてあげることにしようと思っている。


「もしかしたら、誰かが出入りしてるのかも……」

「うわ、音泉ちゃん。怖いこと言わないでよー」

 情けない声を上げる彼女を見ながらボクもおでこにしわを寄せた。

 食器類やらグッズ商品なんかはやられていないし、金銭的な損害はまだほとんどないんだけれど、精神的にこの、物が徐々に勝手に無くなっていく感覚というのは、かなり怖いものがある。


「金銭目当ての荒らしじゃないと思うんですけどね……千絵里さんにまた連絡したら、今週の日曜に様子を見に来てくれるって」

「日曜って……まだ五日もあるじゃないの……」

 そう言って、愛水さんははぁ、とため息をついた。

 そう。今日はまだ火曜日だ。千絵里オーナーも忙しい身なのはわかっているけど、こういうときは早く対処してほしい。


「それまでは自衛するしかないってことですよね。貴重品とかはなるべく置きっぱなしにしないこと」

 犯人はどうにも、夜に部屋に入ってるらしい事はわかっていた。裏口から侵入してってことも可能かもしれないけど、厨房の横を通らないといけないから、昼間の侵入はけっこう厳しい。誰かが入れば必ず誰かが気付くはずなのだ。

 ロッカー室で鍵がついている所を壊した形跡はないから、ちゃんとそこらへんに荷物を置かずにきちんと保管をすれば平気だろうとは思うんだけど……それでもやっぱり気持ち悪いので、なるべく物は置かないに限る。


「でもさーそれでも……他にも怖いことあるじゃない……」

「盗撮ですか?」

 愛水さんはこくりと肯いた。本当に不安がっているようで、いつもよりちっちゃく見えた。思わずぎゅっとしたくなるくらい可愛らしい。

 確かに侵入者の目的は、「盗む」だけとは限らない。外からビデオカメラなんかを「置く」ことも十分に考えられる。

 でも、ボクには彼女を安心させる言葉の用意があった。


 実は面接の時に聞いてあるんだ。盗撮なんてもんがされてたら、一番死活問題なのは、ボクに決まっているので、千絵里さんにもその事は十分に確認をしてある。こういった所だったら、舞台裏とかに興味を持つ人間も一杯いるだろうし、メイド喫茶休憩所のあまい一時、とかいうビデオなんかも発売されたら、そうとう売れそうな気がする。むしろボクだって、そんなあまい空間の秘密映像があったら見てみたいとかちょっとは思うもん。盗撮したいと思う人間は絶対いっぱいいるに違いない。


「盗聴・盗撮対策はしっかりしてるって、オーナーは言ってましたよ。設置したとしても、どのタイプのヤツも効果でないようにしてあるって」

 オーナーも最初からその危惧を持っていたようで、特にロッカー室とトイレは重点的に対策をしたらしい。千絵里さんらしい配慮だ。

 それでも、防犯用のカメラを置いていないのは、スタッフの着替えを自分で撮るわけにはいかないという配慮ゆえだろうか。


「まぁ不安がっていても仕方ないです。笑顔で、お仕事始めましょう」

「そうね。今日もご主人様をお迎えしないと」

 誰が侵入しているのか。それを考え出すときりがないし、どうにかして捕まえようという風にも思うけど、今はむしろそれよりも夜のお店の方が大事だ。

 無理矢理愛水さんは笑うと、ボク達は夕方に帰ってこられる数多くのご主人様方を出迎えるために、開店準備を始めた。


可愛い女の子が集まると、そこには危険も潜むものです。

とりあえず、短いので幕間扱いです。犯人さんの話はちょっとあとになります。


次話は、やっと戸月くんが登場ですねっ。

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