序
しばらくして戻ってきたサラはいつもの笑顔のサラだった。
だけどオーナーはサラは疲れてるから休んだほうがいいと言った。
”大丈夫ですよぉー…“
渋っていたサラもオーナーの言葉に最終的には折れて素直に帰った。
そのあとテノーもオーナーに帰らされた。
なんのことかはわからないけどオーナーは
”おまえには周りが見えるんだからもっと大人になれ、”
…確か、そう、言った。ちょっと怒ってるみたいな、悲しんでるみたいな…。
カランカラン、とドアのベルの音を聞いて、店を出る。
”……そういえば一人で帰るのは久しぶりかもしれない。”
人といるのは極力避けていたがサラは隣でよく笑っていて、最近は不自然と思わなくなっていた。
”僕は…一人で…違う、
………大切な人のためにしか生きてはいけないのに…。”
自分を戒める理由がどこに起因するのか、その気持ちがどこからか湧いてきているものなのか。
僕は知らないし、知ろうという気力がない。
ただ、ここに住み始めた頃はこの記憶しかなかったからいつも考えていた。
誰かわからない、大事な人、のことを。
サラがとなりいないだけで昔のジメジメした記憶が上がってくる感覚がある。
”楽しい、って思うのは、だめなんだっけ…?なんかもう、ぐしゃぐしゃ…。”
頭の中が、心の奥がごちゃごちゃしてきて、息を吐いて考えを切る。
”サラの力はすごい、のかも。テノーがサラを好きなの、よくわかる。…そうだ、テノーといえば。二人共両思いなんだから素直になればいいのに。”
いつもの帰路を歩き、篠也が待つ家の前まで来ると、家の前で貧しそうななりをした小さな少年が通行人に何か売ろうと必死な光景を見てふと立ち止まる。この辺りは街が発達していて滅多に見る光景ではないからだ。
「これ、、すごく綺麗なの…。ねえ、買ってください。お願い」
「、綺麗な、ガラス玉だよ、これ。買って…」
遠くから見ていると、ガラス玉が入ってるらしい木箱をギュッと握りしめて下を向く。
その時樽株の影から小さい少女の手が伸びた。
「…、ね、ほら、おにーちゃん、帰ろ?」
* * *
「こんな安くていいの?」
渡したのは1枚1ベールの硬貨、3ベールだけだ。【1ベールでコンビニコロッケ2つ分(=120円)くらいだよ。】
「うん、ありがとう、にーちゃん!!おれね、俺、にーちゃんのこと忘れないよ!名前は??」
「…僕?僕は翼。」
「、ツバサ…?珍しい名前だね。にーちゃん、ガラス玉も木箱も買ってくれてありがとう、これでじーちゃんになんか持っていけるよ!」
兄妹は手をつないで嬉しそうに走っていった。
しばらく後ろ姿を見ていると過去の記憶がぐらっと揺れるような、今と違う世界が見えた気がした。
揺らいだ足を立て直すと、木箱をカバンにしまって階段を上る。
カンカン、と音を立て一段、二段と上っていくと後ろから声が聞こえた。
「……優しーんだね。翼君は。」
翼、とツバサの違いが案外大事だったり大事じゃなかったり。
駄作ですがよんでくださってありがとうございますm(_ _)mペコリ