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九章 誓い

「さて、五百年前の関係者が集まった」


 椅子に深々と腰掛け、球状の透明な水に映るものを見つめ、男は白に近い水色の髪を掻き上げる。


「五代目クウェール国王とお前の義弟に五百年前の記憶を残し、ここまでお膳立てしてやったのだ。あとはお前次第だ……」


 肘掛けに凭れ、白に近い水色の髪をした男――ラインディルは呟く。

 白に近い水色の目は、球状の水に映るところどころに金色が混ざった赤い髪の青年の行動を興味深げに見ていた。


「カエティス、お前はどう終わらせる?」







 朝を迎え、リフィーアは白銀の鎮魂剣を抱えて、叔父の家を出た。

 公爵になると決めたリフィーアを従兄のサイラードが喜び、早速勉強の準備を始めた。

 予想通りの従兄の行動に戦慄を覚え、リフィーアは逃げるように家を出た。

 どのみち通らないといけない道なのだが、今はカイがいる墓地に行きたかった。

 墓地に行かないといけない、そう感じたからだ。

 墓地へ通じる門をくぐり、リフィーアはカイと相棒のビアンが住む小屋へと向かう。

 そこにはカイの姿はなく、ビアン、ネレヴェーユ、エマイユ、トイウォースがいた。


「おはようございます。カイさんはいらっしゃらないのですか?」


「おはよう、リフィーアちゃん。カエティスは墓地の奥へ行ったよ」


「え? 墓地の奥ですか? カイさん、大丈夫なのですか?」


 エマイユの言葉にリフィーアは目を丸くした。


「毎日封印に綻びがないか確かめに行っているだけだ。問題ない」


「魔狼の言う通り、カエティスなら大丈夫。カエティスは封印の要ではあるけど、封印を解くにはクウェール王家、ウィンベルク公爵家それぞれの当主の血が必要だから。まぁ、万が一カエティスが封印を解こうとしても、解けない仕組みになってるから」


 肩を竦め、エマイユは説明した。


「カエティスならすぐに戻って来るよ。それより、リフィーアちゃんが持ってるものって、白銀の鎮魂剣じゃないの」


 リフィーアに近付き、彼女が抱えている白い剣をエマイユは覗き見る。


「あ、はい。そうです」


 覗き込むエマイユに気付き、リフィーアは彼女が見やすいように剣を腰くらいの位置に下ろす。


「懐かしいなぁ。クレハと作った剣だよ。カエティスの強制的に浄化する鴨頭草の剣と対称的な剣が作りたくてね。出来上がるのに五年くらいかかったよ。ウィンベルク公爵家でちゃんと受け継いでくれたんだね」


 嬉しそうに微笑み、エマイユは白銀の鎮魂剣の鞘を撫でた。

 それに反応して白銀の鎮魂剣から白いオーラがエマイユの周りを優しく漂う。


「……あの、ウェル様の、クウェール王家にはこういった剣はあるのですか?」


 ふと疑問に思い、リフィーアはそのまま疑問を尋ねてみた。

 リフィーアの問いに、エマイユは目を何度か瞬かせ、ニヤリと笑った。


「クウェール王家に? 王家には」


「――指輪があります」


 エマイユの言葉を接いで、トイウォースが答えた。


「あ、こらこら、ちょっと! せっかく私が答えようと思ったのに」


「申し訳ありません。ウェルの代わりにウィンベルク公爵のお嬢さんに説明がしたくて……」


 恐縮そうにトイウォースはエマイユに謝る。


「そ、そう。こっちこそごめん。えーっと、リフィーアちゃん。とにかく、クウェール王家には指輪が伝わってるよ」


「指輪、ですか?」


「ええ。クウェール王家の当主は代々狙われていますので、肌身離さず身に付けることが出来る指輪を受け継いでいます」


「その指輪はカエティスとやり取りが出来るように、私とカエティスで作ったものだよ。ただ、国王にならない限り、受け継ぐことが出来ないけどね」


 エマイユとトイウォースが交互に丁寧にリフィーアに説明する。

 それを感心したようにネレヴェーユは静かに見つめる。


「えっ、じゃあ、ウェル様も持ってるのですか?」


「――いえ、僕はまだ持ってないです」


「ウェル様?!」


 都へ通じる門の方角からウェルシールの声が聞こえ、リフィーアは驚いたように振り返った。

 穏やかな笑みを浮かべたウェルシールと、イストとエルンストの兄弟が立っていた。


「おはようございます、皆さん。あの、カイさんは?」


「おはよう、ウェルシール。カエティスは墓地の奥へ行ったよ」


 エマイユが説明すると、ウェルシールは眉を寄せた。


「さっきリフィーアちゃんにも言ったけど、カエティスなら墓地の奥に行っても大丈夫だから。ウェルシール、そんな顔しない!」


「でも……」


「あのね、ウェルシール。カエティスは封印の要ではあるけど、カエティスが封印を解こうとしても、解けない仕組みになってる。それにカエティスがこの墓地に前世の私の祖父を封じたのは理由があるんだよ」


「あの、どんな理由ですか?」


 不安げに話を聞いていたリフィーアが首を傾げながら尋ねる。

 ウェルシールと、彼の隣に立つトイウォース、エルンストもエマイユを見る。


「この墓地は、墓地になる前から少し変わった力が宿ってるんだよ」


 自分と同じく事情を知っているイストをちらりと見ながら、エマイユは口を開く。


「変わった力ですか?」


「うん。この墓地は、場所はカエティスの強い魔力を上手く抑え、維持してくれてるんだ。だから、封印の要のカエティスは魔力を使い過ぎて倒れることなく生活出来てるんだよ」


「たまたまそういった場所だったそうですよ。昔、司祭様がそう言ってました」


 エマイユの言葉に頷き、イストが言葉を接ぐ。


「だから、カイさんは若いんですね」


 納得した様子でリフィーアは呟いた。


「いやいや、それはちょっと違うよ、リフィーアちゃん! カエティスの場合は若作りをしてるだけだよ!」


 妙な納得をするリフィーアに、エマイユは慌ててつっ込んだ。


「……いや、若作りはしていないんだけど」


 困ったような、戸惑っているような男の低い声が背後から聞こえた。


「あ、カイさん……」


 いつの間にか現れたカイにリフィーアは驚いたように呟いた。


「お、おはようございます、カイさん!」


 現れたカイに目を輝かせて、ウェルシールは挨拶をした。


「おはよう、ウェル君、皆」


 穏やかに微笑み、カイはウェルシールに近付く。

 近付いてくるカイをきょとんとした顔でウェルシールは見つめる。


「あっ!」


 ウェルシールの隣にいたリフィーアは普段のカイと少し違うことに気付き、声を上げた。


「ど、どうしたんだい、リフィーアちゃん」


 リフィーアの声に驚き、カイは目を瞬く。


「カイさん、服が違います」


「え?」


 リフィーアの言葉を聞き、ウェルシールやエマイユ達がまじまじとカイを見る。

 見るとカイの服装はいつもの黒いマントと布製の上下の服ではなく、白いマントと上質な絹で織られた服を身に纏い、二振りの剣を腰に引っ掛けていた。

 騎士に会ったことがないリフィーアの目で見ても分かる騎士の正装をカイはしていた。


「あ、本当だ。服が違うね」


 言われて気付いたエマイユがニヤリと意味ありげにカイを見て笑う。


「いや、そうじっくり見られると恥ずかしいんだけど……。それと、エマイユちゃんの笑みが悪い笑顔になってるよ」


 困ったように頬を掻き、エマイユを見て、カイは苦笑いを浮かべる。


「しょうがないよ。この後の展開が読めたんだからさ」


「あの、エマイユさん。この後の展開とはなんですか?」


 小首を傾げ、今まで静かにやり取りを見ていたネレヴェーユが尋ねる。小首を傾げたと同時にネレヴェーユの白に近い緑色の長い髪が一房、肩から流れる。


「すぐに分かりますよ、ネレヴェーユ様」


 エマイユの言葉を聞き、ネレヴェーユは無言でカイを見つめる。ネレヴェーユ以外のリフィーア達も何が起こるのかと、じっとカイを見つめる。

 ウェルシールも目を瞬かせて前に立つ自分より少し背の高いカイを見上げる。

 見られているカイは居たたまれなくなり、小さく息を吐く。


「まぁ、エマイユちゃんには気付かれちゃったけど……ウェル君」


 静かにカイはウェルシールの名を呼ぶ。


「は、はいっ!」


 カイに名を呼ばれ、驚いたようにウェルシールは返事をする。


「ウェル君に、伝えたいことがあるんだ」


 真摯な表情でカイはウェルシールを水のように透き通った水色の右目と、意志の強い鋼のような銀色の左目の異なる両目でまっすぐ見つめる。


「……僕も、貴方にお願いがあります」


 ウェルシールも少し大きい緑色の目でカイをまっすぐ見つめる。


「あ、じゃあ、ウェル君からどうぞ」


「えっ、あ、はい」


 カイに勧められ、緊張した面持ちのウェルシールは落ち着かせるように深呼吸を何度か繰り返す。

 ようやく落ち着き、ウェルシールはカイに向き直る。

 そして、静かに唇を開いた。


「カイさん、いえ、カエティス殿」


 一呼吸置いて、じっとカイの目から逸らすことなく、ウェルシールは意を決した目で続ける。


「国王として貴方に命じます。守護騎士として、国と民を負の集合体から私と共に守って下さい」


 真摯な眼差しを向け、ゆっくり静かにウェルシールは告げた。

 ウェルシールの言葉を聞き、リフィーアとトイウォース、ネレヴェーユが驚いて息を飲む。

 カイは小さく笑みを浮かべ、音もなく跪く。

 跪いたままウェルシールを見上げ、カイは静かに唇を開いた。


「――我が身、我が命を掛けて、国と人々をお守り致します。ウェルシール陛下」


 穏やかに、かつ真摯な声音でカイはウェルシールの言葉を受け、返した。

 そして、臣下の礼を取る。

 カイの言葉を聞いたウェルシールは安堵の息を洩らした。


「……ありがとうございます、カイさん……」


 緊張していたのか、ウェルシールは膝を落としそうになった。

 そこでウェルシールはあることを思い出した。


「あっ……カイさん、あの、僕に伝えたいことがあると言ってましたが、何でしょうか……?」


「ん? ウェル君……いえ、ウェルシール陛下と同じ内容ですよ」


 にこやかにカイが答えると、ウェルシールは慌てて彼に向かって身を乗り出した。


「あ、あの、カイさんっ。今までと同じ話し方でいいですから!」


「貴方の臣下になったのですし、そういう訳にも……」


 跪いたまま困惑したようにカイはウェルシールを見上げる。


「前にも言いましたけど、僕は貴方と対等に話したいのです! ですから、今までと同じでお願いしますっ!」


「だってさ、カエティス。いいんじゃない? 君、前世の私の時も対等に話していたんだからさ」


 エマイユがウェルシールに助け船を出し、カイを見る。


「いや、そうだけど……」


「本当にお願いしますっ」


「……じゃあ、今まで通りにさせてもらうね、ウェル君」


 降参したようにカイは頷き、小さく微笑む。

 安堵の息を洩らし、ウェルシールも承諾を込めて頷いた。


「あの……私もウェル様やカイさん、皆さんに伝えたいことがあります」


「リフィーアちゃん……?」


 目を何度も瞬かせて、カイはリフィーアを見る。

 ウェルシールやエマイユ達も一斉にリフィーアに目を向けた。


「……私、ウィンベルク公爵を継ぎます。まだ公爵とか国とかよく分からないですが、私も国を……ウェル様を……守りたいです」


 顔を真っ赤にして、語尾が段々弱くなりながらもリフィーアはウェルシール達に告げた。


「えっ……あ、あの、リフィさん……」


 小さく聞こえたリフィーアの言葉に、ウェルシールも一気に顔を赤くした。

 顔が赤いまま、ウェルシールは意を決したようにリフィーアに近付く。

 緊張した面持ちでウェルシールは喉を鳴らす。

 リフィーアはウェルシールの次の行動を見守るようにじっと緑色の目で見上げる。


「……リフィさん、僕も貴女を守りたいです。今回の負の集合体との戦いが終わってからも、ずっと……」


 小さく微笑み、ウェルシールはゆっくりリフィーアの手を取り、握る。


「僕に、貴女をずっと守らせて下さいませんか?」


「……はい……!」


 ウェルシールの告白に顔を赤くしながらも、リフィーアは頷き、嬉しそうに微笑んだ。

 様子を見守っていたカイ達はお互いに目を合わせ、笑みを零す。

 安心したように微笑み、ネレヴェーユはカイに近付く。


「どうしたんだい、ネリー」


「……お似合いの二人だから、良かったって思って。幸せになって欲しいわ」


 自分のことのように嬉しそうに微笑み、ネレヴェーユは恋人を見上げた。


「そうだね。その為にも今回で終わらせないと。ネリーもウェル君もリフィーアちゃんも皆、俺が守るよ」


 カイもネレヴェーユに微笑み返し、腰に引っ掛けてある鴨頭草の剣の鞘を握る。

 それに応えるように鴨頭草の剣から青いオーラがカイの手に触れる。

 カイは笑みを消し、真面目な表情――墓守りから騎士の顔になる。

 そして、ウェルシールとリフィーアに近付く。


「――ウェル君、リフィーアちゃん。今から、負の集合体の封印を解こうと思うのだけど、いいかな?」


「えっ?」


 ウェルシールとリフィーアは驚いたように、カイを見た。


「ちょっと、カエティス! いきなりすぎない? リフィーアちゃんは白銀の鎮魂剣を持ってるから自分の身は守れるけど、ウェルシールはまだ指輪を――白金(しろかね)守護(しゅご)指輪(ゆびわ)を受け継いでないんだよ」


 カイの発言に驚いたエマイユが慌てて彼を止めるように声を掛ける。


「……大丈夫。俺とウェル君がいれば、白金の守護の指輪を呼べるよ」


「待った! そんな機能を私は知らないよ」


「昔、ウェル君のお父さんとリゼル君と俺で追加してみたんだ」


「父上と?」


「お父さんと?!」


 目を丸くしてウェルシールとリフィーアはカイを見た。


「うん。王が死んで、王子が王になる時、身の危険が起きても戴冠式をしていない時、俺がいる条件で指輪を呼ぶことが出来るようにしたんだ」


「……あの、それは、父上は死ぬことが分かっていてその機能を付けたということですか?」


 カイの言葉にウェルシールは何かに気付き、そう尋ねた。

 リフィーアも驚いたようにカイを見つめている。


「……そう、だよ。ウェル君とリフィーアちゃんのお父さん達は自分達が死ぬと分かっていてその機能を付けたんだよ。大切な君達を守る為にね」


 力なく頷き、カイは眉を寄せて呟いた。


「……俺は五百年前、倒すことが出来なかった。今までのクウェール王家とウィンベルク公爵家の子達がたくさん犠牲になったのに、俺は誰も守ることが出来なかった。ただ、ここで墓守りとしていることしか出来なかった……」


 何かを押し殺すかのように呟くように言い、カイはウェルシールとリフィーアを見た。


「だからね、指輪に呼ぶ機能を付けることでこれから継いでいく子達を守れるならと思って、俺の力も入れて守れるようにしたんだ。リフィーアちゃんが持ってる白銀の鎮魂剣にも俺の力をちょっと加えてね」


 小さく笑みを浮かべ、カイは吐息する。

 ウェルシールはカイに頷き、彼に近付く。


「……カイさん、指輪を呼ぶにはどうしたらいいですか?」


「簡単だよ。ウェル君が指輪を呼んだら来るよ」


「呼ぶ、だけですか?」


 目を瞬かせて、ウェルシールはカイを見上げる。


「うん。ただ、俺の近くでというのが条件なんだけど」


「分かりました。今から呼びます」


 深呼吸して、ウェルシールは指輪を呼ぼうと口を開いた。

 その時、トイウォースの呻き声が聞こえた。


「トイウォース殿っ?!」


 トイウォースの声に驚き、ウェルシールは従兄の名を呼ぶ。

 そして、近付こうとした時、カイがウェルシールを止める。


「カイさん……?」


「……イスト君。ウェル君とリフィーアちゃんを。トイウォース君にまた負の集合体が入ってしまったようだから」


「え、さっき隊長が浄化したはず……」


 眉を寄せ、イストはカイに真意を問おうとする。

 が、カイの表情は真剣そのもので、冗談で言っていないのが分かった。


「はい、分かりました」


 素直に頷き、イストは翠宵の剣をいつでも抜けるように柄を握り、ウェルシールとリフィーアに近付く。

 エルンストもイストと共にウェルシールとリフィーアを守るように前に立つ。


「ネリーとエマイユちゃんも離れて。ビアン」


「――分かってる」


 溜め息混じりで頷き、ビアンがネレヴェーユとエマイユに近付く。


「……トイウォース君、聞こえるかい?」


「……何とか……ただ、あまり時間が……」


 地に膝をつき、トイウォースは力ない声で苦しそうに頷く。


「分かった。今から浄化してみるよ。苦しいと思うけど……」


 そう言って、カイは蹲るトイウォースに近付く。

 そして、自分の背後に鞘から抜いた赤眼の剣を地面に刺す。

 トイウォースに手を当て、浄化の光を放つ。


「……うっ……うう……っ」


 白い浄化の光に反応して、トイウォースは苦しそうに呻く。

 黒い霧のようなモノがトイウォースから離れていくのがリフィーア達にも見えた。


『ウオオォォ……!』


 負の集合体の声にならない声が響く。

 黒い霧を見上げ、カイは鴨頭草の剣を抜き、斬り上げる。


『オオォォォォ……』


 恨みに似た声が響き、黒い霧が霧散した。

 消えたのを確認し、カイはトイウォースの方を向く。


「トイウォース君、大丈夫かい?」


「……大丈夫です。お手を煩わせてすみません」


 青ざめた顔のまま頷き、トイウォースは力なく笑う。


「良かった。トイウォース君、ネリーとエマイユちゃんと一緒にビアンに守ってもらって。ウェル君、どうやら早く指輪を呼ばないとまずいみたいだよ」


「え……?」


 目を瞬かせて、ウェルシールはカイを見る。

 尋ねる前に地面の底から唸り声が聞こえてきた。


「きゃ」


 その声にリフィーアが小さく悲鳴を上げる。

 リフィーアの声に心配して、ウェルシールが安心させるように彼女の手を握る。


「リフィさん、大丈夫です。僕もカイさん、皆さんがいますから」


「ありがとうございます、ウェル様」


 嬉しそうに微笑み、リフィーアは頷いた。

 尚も続く唸り声を聞いている内に、リフィーアはあることを思い出した。


「カイさん、この声、初めてカイさんに会った時にも聞こえましたよね……?」


「よく覚えてたね。そうだよ。あの時の声だよ。俺のお腹の音かと勘違いしてたと思ってたけど」


 苦笑いを浮かべ、カイは用心深く辺りを見渡す。


「ちょっとカエティス、この声、もしかして……」


 リフィーアの言葉で思い出したようにエマイユがカイを見る。


「うん。この墓地に封じてる負の集合体の本体だよ。さっき本体がクウェール王家の血に反応してトイウォース君の中に入ろうとしたんだよ」


「僕ではなく、どうしてトイウォース殿に……?」


「私の中に負の集合体の一部が長い間いたし、ウェルの近くにカエティス殿やウィンベルクのお嬢さんがいて、二人が持つ剣に守られていたからだと思う」


 苦笑いを浮かべ、トイウォースが告げると、申し訳なさそうな顔でウェルシールは俯いた。


「……ごめんなさい」


「ウェルが謝ることじゃないよ」


 ウェルシールに近付き、トイウォースは子供にするように頭を撫でた。


「そうそう。謝ってもらうのは元祖父だから。どちらかというとウェルシールは元祖父に謝ってもらう側だよ」


 トイウォースの言葉に同調して、エマイユが言う。

 そして、彼女もいつでも応戦出来るように細身の剣の柄を握る。


「その為にも、早く指輪を呼んだ方がいいよ」


「そうだね。ウェル君、指輪を思い浮かべながら、『白金の守護の指輪』と呼んでごらん」


 ウェルシールの手に触れ、カイが告げる。


「えっ、あ、はい。白金の守護の指輪……」


 カイに言われた通り、ウェルシールは指輪を思い浮かべながらその名を呼ぶ。

 クウェール王家で代々受け継いできた指輪の名を紡ぐと、自分とカイの間に現れた強い力をウェルシールは感じた。

 得体の知れない力と共に暖かい白と金の光がウェルシールの前に現れ、浮かぶ。

 白と金、二つの光がだんだんと小さくなり、ウェルシールの前をくるくると回り、降りてくる。

 ウェルシールは慌てて両手でそれを受けると、ころころと掌の上を転がる。


「……これが、白金の守護の指輪……」


 白と金が混ざった指輪をウェルシールは呆然と眺めた。

 白と金の色が混ざった指輪は豪華な飾りはなく、変わっているのは指輪自体の色と、指輪が発する力くらいでその他はごく普通の指輪だった。

 指輪が発する力も、カイに近付くか、指輪に触れないと感じないくらい巧妙に出来ていた。

 怪しまれない為の工夫なのだろうとウェルシールは感じた。


「……綺麗な指輪ですね」


「まぁ、国王が継ぐ物だから、それ相応の物じゃないとね」


 ウェルシールの呟きに頷き、エマイユは肩を竦めた。

 カイも笑みを浮かべて頷くと、真剣な表情に変え、若き国王に告げる。


「ウェル君、指輪を嵌めた方がいいよ」


「え?」


「……封印を解く前に解かれるかもしれない」


 険しい表情で、カイは墓地の奥を見つめる。


「分かりました。今から嵌めますね」


 カイの言葉に頷き、ウェルシールは指輪を左の人差し指に嵌めようとした時、エマイユが声を上げた。


「あ、待って。ウェルシール、指輪を嵌めるなら右にして」


「……え? 何故ですか?」


「右手に嵌めないといけないように作ったから」


「どうしてですか……?」


 目を何度も瞬かせ、ウェルシールはエマイユを見た。


「……その……やっぱり左手は約束事が多いから、意中の人に勘違いされたら困るでしょ?」


 言いにくそうにエマイユは早口で説明した。

 その説明に、ウェルシールとリフィーアの顔が同時に赤くなる。


「だから、右手にしてね」


 ニヤリと笑みを浮かべ、エマイユはウェルシールに言う。


「はい、分かりました……」


 真っ赤になりながら、ウェルシールは右手の人差し指に白金の守護の指輪を嵌める。

 人差し指に嵌めたと同時にウェルシールは指輪から温もりを感じた。


「?」


 首を傾げて、ウェルシールはカイとエマイユを見る。


「どうしたんだい、ウェル君?」


 カイも首を傾げて、ウェルシールを見る。ウェルシールの表情を見て、エマイユが閃いたように手を叩く。


「ああ、指輪から感じる温もりみたいなのが気になる?」


「は、はい」


 頷くウェルシールを見て、エマイユは柔らかく微笑む。


「その温もりは君を大事に思っている人達の温もりだよ。君は愛されてるってこと。だから、どんなに狙われても命を粗末にしては駄目だよって教える為に私とクレハが作ったんだよ。誰かさんに関わると皆、無茶をするから」


 両腕を組んで、エマイユはちらりとカイを見上げる。


「だから、俺は無茶をしていないって」


「何処がだよ。そういうところが過去で見た君の育てのお母さんに似てるね。君の育てのお母さんのことをもっと早くに知ってたら五百年前のあの時もあの時もあの時とかも止めたのに」


「……あのね、先生のことをいきなり出さないでくれないかな。それにあの時あの時ってどれだけ俺が無茶したことになってるんだい?」


「まぁ、私の知る限り、君の過去で見た限りでは全部だね。アイサリスでどんな生活をしていたかは知らないけど、そっちでも無茶してたと思うね」


 エマイユがそう返すと、イスト以外が全員大きく頷いた。イストは困ったように笑うだけだ。


「……皆に頷かれると、俺、傷付くなぁ……」


 苦笑いを浮かべ、カイは溜め息を吐いた。


「カエティス。封印を解く前に解かれると言ってたけど、どうして?」


 苦笑するカイに微笑みを浮かべ、ネレヴェーユは尋ねる。


「さっきのトイウォース君に入ろうとしてきたみたいに、負の集合体の本体が少しずつ出て来てるんだよ。俺やトーイ、クレハの封印の力は限界だったみたいだね」


「五百年維持出来たのは良い方だと思うけどね」


 ネレヴェーユに説明するカイにエマイユが肩を竦める。


「カエティス、今回は封印出来ないよ。私は前世のトイウォースの時と違って、神の言葉は話せないし、魔力も弱いから。言いたいことは分かるよね?」


「もちろん。今回で終わらせるよ。その為にも、ウェル君、リフィーアちゃん。力を貸してくれるかな?」


「はい。僕でお役に立てるなら」


「私も力になります、カイさん!」


 頷くウェルシールとリフィーアにカイは微笑んだ。その笑みには申し訳なさそうな色があった。


「ありがとう。それじゃあ、封印を解きに行こうか」


 気を引き締めるように、カイは腰に引っ掛けた鴨頭草の剣の柄を握る。

 そして、そのまま墓地の奥へと歩く。歩く度に白のマントが翻る。

 彼の後をリフィーア、ウェルシールが歩く。更にその後ろをネレヴェーユ、エマイユ、イスト、エルンスト、トイウォースと続いて、最後にビアンが歩く。

 カイは後ろをちらりと見ると、全員がこちらを見ていた。

 リフィーア、ウェルシール以外の皆に来るなと言いたいカイだが、結末が知りたいだろうし、巻き込んでしまっていると思い、何も言えずに小さく息を吐いて前を向いた。

 そんなカイの後ろ姿を見て、ネレヴェーユとエマイユが小さく笑みを零した。




 墓地の奥に着くと、カイは立ち止った。

 リフィーアとウェルシールはきょろきょろと辺りを見回す。

 リフィーアは墓地の奥に入ったのはこれで二度目だが、あの時は負の集合体に操られた者達に襲われて、周りをよく見ていなかったので、物珍しそうに見回す。

 カエティスの都に生まれ育ったリフィーアにとって、この場所は興味の対象だった。クウェール王国の国王とウィンベルク公爵家の当主。そして、カエティスの都の墓守りのカイのみしか入れない墓地の奥は木々に覆われ、墓地の奥、更に奥へと続く道が続いているだけで、何も聞こえないまるで時が止まっているように静かな場所だった。


「……この奥に封印しているんだ。ただ、気を付けて。この場所や墓地と違って、空間が違うから」


 静かに、カイは呟いた。その声がしんと静まり返ったこの場所に溶けて消える。


「空間が違うというのはどういうことですか?」


 自分の付近で周囲を警戒するイストとエルンストを見ながら、ウェルシールはカイに尋ねた。


「ここは都じゃないんだ。ネリーのお父さん――ラインディルに頼んで、墓地の奥の奥……最奥っていうんだけど、そこに別の空間を作ってもらったんだ。この墓地は街の隣にあった俺と先生が元々住んでいた森を変えて墓地にして、それを取り囲むように家が増えて都になってね。墓地を囲むように家が増えたから封印が解けた時に惨事が起きるから別の空間を作って欲しいってラインディルに頼んだんだよ」


「どうして、墓地を囲んだんですか?」


 説明するカイにリフィーアが尋ねると、彼は苦笑した。


「当時のウィンベルク公爵のクレハが言うところによると『いつでもカエティスと勝負が出来るように』と『都の住民達とカエティスが交流出来るように』というのが理由らしいよ。それについては夫の私も同意見で、そうなっちゃったんだよね。今思うと、クレハは都の人々と一緒にカエティスを守りたいというのがあったのかもね。墓地から離れられない君だけを犠牲にしたくなくて」


 苦笑するカイを見上げ、エマイユが説明する。


「俺は別に犠牲とか全く思ってないんだけどね。俺が自分で選んだことだし」


「でも、選んだことで君は墓地から離れられなくなった。墓地以外を歩く自由がなくなった」


「……あー、いや、それが、一回だけあるんだよね……」


 言いにくそうにカイは頭を掻いて、エマイユに答える。


「え? どういうことだよ、カエティス」


「昔、一度だけ、負の集合体の一部が墓地から出たことがあって、その時に乗っ取られた老人が近くにいた女の子を襲ってたからそれを助けに……」


「え……?」


 緑色の目を大きく見開き、リフィーアはカイを見た。


「あの、カイさん。その老人は頭から足の先まで黒い布を被った人ではなかったですか……?」


 驚いた表情でリフィーアはカイに恐る恐る尋ねた。

 リフィーアの言葉に驚いたように目を丸くしてカイは彼女を見た。


「その女の子、私です」


 呟くように答えるリフィーアに、ウェルシール達は驚いてカイに目を向けた。

 カイは静かにリフィーアを見ていた。

 小さく息を吐き、カイは口を開いた。


「……うん。知ってるよ。生まれたばかりのリフィーアちゃんに会ったこともあるし、リフィーアちゃんがリゼル君とフィオナちゃんの墓に来ているのも見ていたから」


 少し悲しげに微笑して、カイは頷いた。


「じゃあ、どうして、私に声を掛けなかったんですか?」


 頷くカイにリフィーアは疑問の色を浮かべて彼を見上げる。


「何かの弾みで封印が解けたらいけないから。だから俺から会いにはいけなかったけど、リフィーアちゃんを守ることをリゼル君とフィオナちゃんに約束したからね」


「私やサイラードお兄様が覚えていなかったのも、その約束が理由ですか?」


「うん。小さなリフィーアちゃんに会ったことで、ウィンベルク公爵の子供が生きていたって何処かで漏れたらリゼル君とフィオナちゃん、マティウス君が必死にリフィーアちゃんを守ろうとしたことが無駄になってしまうし、リフィーアちゃんには負の集合体のことに巻き込みたくなかったから、朧げにしか覚えていないようにしたんだ。黙っていてごめんね、リフィーアちゃん」


 小さく申し訳なさそうに説明するカイに、リフィーアは泣きそうになった。

 自分の両親との約束を守るためにずっと黙っていたカイの優しさに胸が熱くなった。


「いえ……いいえ、カイさん。私の方こそ、今まで両親の代わりに守って下さってありがとうございます」


「ありがとう。でも、その『ありがとう』はマティウス君達に言わないと。俺はただ、見ていただけだから」


 そう言って、カイは穏やかに笑う。


「はい、叔父様達には終わったら、すぐに言います。カイさんにも終わったらまたもう一度言いますね」


 頷いて、リフィーアも微笑む。周囲でウェルシール達も笑みを浮かべる。


「リフィーアちゃんが叔父さん達にお礼が言えるようにする為にも、早く終わらせよう、カエティス」


 カイの肩を叩き、エマイユが促すと彼も頷いた。


「うん、そうだね。リフィーアちゃん、ウェル君。今から最奥に行くよ、いいかい?」


「はい、大丈夫です」


「僕も大丈夫です」


「他の皆は外に……って言ってもついて行くよね……」


「当然じゃん。私にも見届ける責任があるしね。元トーイとして」


 胸を張って、自信満々にエマイユが答えた。その周りでネレヴェーユ達が大きく頷く。

 大きく頷くネレヴェーユ達を見て、カイは嘆息した。


「そうだよね……。分かったよ。でも、皆、危ないから本当に気を付けてね。今からは皆のことまで集中出来ないかもしれないから」


「そうだね。私も昔とは違うから気を付けるよ」


「隊長、翠宵の剣があるので大丈夫です。皆さんをしっかり守ります」


「カエティス、気を付けて」


「うん。ありがとう、ネリー」


 ネレヴェーユの言葉に微笑み、カイはイストに目を向ける。


「よろしく、イスト君。リフィーアちゃん、ウェル君。行くよ」


「はい」


 リフィーアとウェルシールは頷き、最奥に向かって歩くカイの後に続く。その後をエマイユとイスト、ネレヴェーユ達が続く。




 墓地の最奥へ進むと小さな洞窟があり、黒や紫色の煙のようなものが漂っていた。ひやりと冷える空気と共にカイは洞窟の中へ入り、リフィーア達が続く。

 洞窟の中をリフィーアは見回すと、洞窟の四隅に両手分くらいの大きさの水晶が置いてあり、淡い青白い光を放っていた。その水晶の光で洞窟の中はしっかり見渡せるが、光の色のせいかどこか重く、暗い。中央には何重にも描かれた魔法陣があり、その魔法陣の中央には棺が置いてあった。


「この棺の中にいるのですか……?」


 前に立つカイの背中を見上げ、ウェルシールが尋ねる。


「うん。ウェル君、気を付けて。指輪を持ってるけど、危ないのは変わりないから。もちろん、リフィーアちゃんも」


「はい」


 カイの言葉に頷き、リフィーアはぎゅっと白銀の鎮魂剣を胸に抱く。白銀の鎮魂剣がリフィーアとウェルシールを守るように白いオーラが二人の周囲に漂う。それを見つめて、カイは安堵したように小さく笑う。そして、ちらりとネレヴェーユに目を向けると目が合い、彼女もカイを安心させるように微笑む。


「……それじゃあ、今から封印を解くよ」


 一歩、一歩とカイは魔法陣に近付く。その間にも何かあった時の為に鴨頭草の剣を鞘から抜き払う。

 何重にも描かれた魔法陣の前でカイは止まり、じっと見つめる。何かを確認した後、小さく頷き、カイは振り返ってウェルシールとリフィーアに目を向ける。


「ウェル君、リフィーアちゃん。血を少しだけ……もらえないかな?」


 とても言いにくそうにカイは二人に言う。


「はい」


 頷いて、ウェルシールとリフィーアはカイに近付く。

 カイは懐からナイフを取り出し、鞘を抜く。


「ありがとう。痛いけど、少しだけ我慢してね。血を少しもらった後はすぐに皆のところに行くんだよ」


「分かりました、カイさん。それと気にしないで下さい。私達は大丈夫です」


 申し訳なさそうに言うカイにリフィーアは首を振って、微笑む。


「そうですよ、カイさん。もし、負の集合体と戦うことになったら僕達も戦います!」


「カイさんだけに戦わせません! 私達も戦います」


「……ありがとう。でも、俺が戦うよ。ここは年上の俺が……」


「年上関係ないでしょ」


 カイの言葉に被せるようにエマイユがつっ込む。


「せっかく真面目に話が進んでるのに、君が壊してどうするんだよ」


「いやぁ、何かしんみり過ぎて、ちょっとね……」


「ちょっとじゃないよ。早く封印解く! 全く、君という人は……」


 むすっとした顔でエマイユはカイに怒り、先を促す。怒られたカイも苦笑を浮かべて、一つ咳払いをする。


「話を戻して、ウェル君、リフィーアちゃん。血を少しもらうね」


「はい」


 頷いて、ウェルシールとリフィーアは手を差し出す。


「指の先のところを切るから、切った後は……」


「私がお二人の治癒をします」


 ふわりと笑って、ネレヴェーユが声を掛ける。


「ありがとうございます、ネリーさん」


 にっこりとリフィーアも微笑む。


「あの、ありがとうございます、ネレヴェーユ様」


 恐れ多いというような表情でウェルシールは恐縮する。


「カイさん、お願いします」


 ウェルシールが右手の人差し指をカイに差し出す。リフィーアも同じように右手の人差し指を差し出す。


「ありがとう。ちょっと痛いけど、ごめんね」


 そう言って、カイは懐からナイフを取り出し、ウェルシールの人差し指に刃を当てる。当たったところから小さな赤い線が浮かぶ。小さな血溜まりをそっとナイフで掬い、カイは洞窟の中央の棺と、その真下にある魔法陣を結ぶ水晶にウェルシールの血を垂らす。垂らした血は水晶に溶け、赤い光になって魔法陣を駆け巡る。

 続けてリフィーアの血を水晶に垂らすと、赤い光は更に輝きを増して魔法陣を駆け巡る。


「……すごい」


 ネレヴェーユに傷を癒してもらい、小さくウェルシールは呟く。


「そうですね。でも私は怖いです」


 ウェルシールを癒し、リフィーアの傷を癒しながらネレヴェーユは目を伏せる。


「ネリーさん、どうしてですか?」


「負の集合体は、ネレヴェーユ様をずっと求めていたからね。かなりしつこかったし。何度私が追い払ったことか。カエティスが来てからはカエティスに任せたけど」


 右手に持っていた鴨頭草の剣をすぐ横に突き刺し、更に赤眼の剣を鞘から抜いて、背後に刺すカイをちらりと横目でエマイユは見る。

 カイは自分の指に刃を当てて血を掬いながら、話を聞いていたのか苦笑いする。

 そして、ナイフで掬った自分の血を魔法陣にカイは垂らす。

 カイの血が魔法陣に触れると、先程までの赤い光が白い光に変わる。

 白い光が強くなり、洞窟中央の棺の蓋が勢い良く開かれた。

 開かれたのを見て、イストとエルンストがウェルシールとリフィーアの前に立つ。二人に守られながらも、ウェルシールは細身の剣を構え、リフィーアも白銀の鎮魂剣の柄を両手で握る。エマイユ、トイウォース、ビアンもネレヴェーユを守るように構える。

 それぞれが警戒する中、棺に一番近いカイだけが洞窟の中央にあるそれを静かに見つめていた。




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