神聖戦士の時代
第1章:再会と並行世界
国際空港の到着ロビーは人でごった返していた。ヒーロは到着ロビーの柱に背中を預けて立ち、保安検査場から慌ただしく出てくる人の流れを視線で追っていた。手には、まだ冷たい水滴をまとった二本の缶飲料を持っている。一時間以上の待ち時間も彼の忍耐を削ることはなく、むしろ胸の高鳴りを強くするばかりだった。
馴染みのあるサトウの姿が近づいてくると、ヒーロは小さく微笑み、長旅を終えて降りてきた親友に一本の缶を差し出した。サトウはそれを受け取り、軽く笑って口を開いた。
「この二年間、元気にやってたか、ヒーロ?」
ヒーロは空になった缶を握りつぶし、近くのゴミ箱にそっと投げ入れた。視線は前方の虚空に固定されたまま答える。
「お前こそどうだ? アメリカでの両親の治療は進んでるのか?」
「順調に回復してるよ」サトウは息をつき、少し目を細めた。「お前の妹のユカはどうだ? 相変わらず強情か?」
「相変わらずだな。俺が忙しいって文句ばかり言ってる」ヒーロは口元を僅かに歪めた。
サトウがさらに言葉を継ごうとしたその時、激しい地震が突然地面全体を揺るがした。
ドドドドドッ!
周囲の空間が目にも止まらぬ速さで歪み始めた。気圧の急激な変化で二人の鼓膜が塞がり、激しい痛みが走った。口の中に一気に金属の生臭い味が広がる。空港の床が激しく揺れ、ヒーロとサトウは立っていられず、片方の膝を突いてバランスを取った。
空は単に暗くなっただけではなく、引き裂かれたように裂けていった。雲の層のすぐ上で、ぞっとするほど奇妙な現象が起きていた。もう一つの地球が上空から降りてきているのだ。まるで逆さまになった都市が頭上に吊り下がっているようだった。わずか数秒のうちに空間が曲げられ、二つの惑星が衝突し、人間の理解を超えた衝撃的な異変の中で一つに融合した。
周囲の人々がパニックに陥り、悲鳴が空港中に響き渡った。空間の裂け目が空気を引き裂き、狂ったように宇宙生物の群れが溢れ出し、群衆に襲いかかった。
崩落した天井の破片から舞い上がる灰色の煙が視界を覆った。混乱の只中、数人の市民がヒーロとサトウの目の前で倒れた。戦士の本能が目覚め、二人は異形の生物の群れに飛び込み、徒手空拳で殴り蹴り、不運な犠牲者を引きずり出そうとした。
しかし無駄だった。宇宙生物の数はあまりにも多く、彼らは咆哮し、鋭い武器を振り回して空間を切り裂いた。ヒーロとサトウは、無辜の命が血の海に飲み込まれていくのを、ただ無力感に胸を締めつけられながら見つめることしかできなかった。
サトウは拳を握りしめ、指の関節が白くなった。顔を歪め、空間の裂け目から狂ったように溢れ出す異形の生物を見据えた。
「これはどういうことだ!? 二年前に奴らを全滅させたんじゃなかったのか!?」
ヒーロはすぐには答えなかった。目を細め、冷たく鋭い視線で眼前の瓦礫を掃くように見た。胸が激しい呼吸で上下する。
「つまり、向こうの惑星にはまだ宇宙生物が残っていたということだ」
ヒーロの声は低く沈み、混乱した戦場の中で冷酷に響いた。
「二つの地球が一つになった後……奴らがこちらに流れ込んできたんだ」
二人がこの災害の規模をまだ十分に理解しきれないうちに、群衆が分かれた。暗い色の威圧的な装甲をまとった男が一歩近づいてきた。
その装甲はヒーロの太陽の戦士と全く同じデザインだったが、宇宙の深淵のような真っ黒で、周囲の空気を押しつぶすような圧力を放っていた。
黒い太陽の戦士はヒーロをまっすぐに見つめ、威厳ある声で言った。
「息子よ、早く俺の元へ戻れ。一緒にこの惑星を支配しよう」
サトウは立ち止まり、見知らぬ男とヒーロの間を交互に見て驚きの声を上げた。「あいつ……誰を息子と呼んでるんだ!?」
ヒーロの胸が上下し、目に怒りの炎が燃え上がった。彼は一歩踏み出し、大声で怒鳴った。「なぜお前が太陽の戦士の装甲を持っている!? 答えろ!」
黒い戦士は小さく笑い、仮面の後ろから冷たい声を響かせた。「息子はそれを太陽の戦士と呼ぶのか? 俺はこれを日食の戦士と呼んでいる」
シュッ!
その時、さらに五人が背後から現れ、危険な殺気を放った。サトウは驚愕で目を見開いた。その中には自分の父親と母親がいた。
残りの三人はユイの父親、ユカの母親、そしてナツミの父親だった。
日食の戦士は手を上げて装甲を解除した。黒い金属がエネルギー粒子となって消え、鋭い顔立ちの中年男性が姿を現した。
「俺はお前の父親だ、ヒーロ」谷口は平然と言った。
ヒーロは深く眉を寄せた。「俺の父はもう死んでいる」
「だからこそ、俺の惑星をこの惑星と融合させたんだ」谷口は一片の後悔もなく答えた。「父親としての責任を果たしたかったからな」
彼はゆっくりと背後の五人の指揮官を指差し、紹介を始めた。
「紹介しよう。こちらがユキ、ユカの母親――月食の戦士。こちらが鈴木氏、ゴーストの戦士、そしてマイ氏、ファントムの戦士――お前の友人の両親だ。こちらが科学者のサカトナ、ナツミの父親でスペクターの戦士。そして最後に永田氏、ユイの父親でレイスの戦士だ」
サトウは一歩踏み出し、怒りで声を震わせた。「父さん、母さん……なぜ悪い奴の言うことを聞いてるんだ!?」
「勘違いするな、サトウ」ヒーロが冷たく鋭く遮り、友人の前に手を伸ばして止めた。「あれはお前の本当の両親じゃない。本当の両親は今もアメリカにいる」
谷口は意地の悪い笑みを浮かべた。「呼んでも無駄だ。お前の両親は完全に俺の支配下にある。解除したければ、腰の変身ドライバーを外せばいい。ただ……お前にその実力があるかどうかだな」
ヒーロは挑発に構わず、視線をユカの母親だと紹介されたユキに固定した。胸の奥に言い知れぬ不安が湧き上がる。
「なぜ……なぜあの人が、妹のユカにこんなにも似ているんだ?」ヒーロは呟いた。
谷口は大声で笑った。「何を戯言を言っているんだ、ヒーロ? お前に妹などいない。お前は俺の一人息子だ!」
「何を言っているんだ!?」ヒーロが怒鳴った。
ユキが一歩進み、虚ろでありながら優しい目で谷口を見た。「ユカ……あれは私の娘です」
「よかったな」谷口は微笑んだ。「もうすぐ娘に会えるぞ」
「王様の御慈悲に感謝いたします」ユキは恭しく頭を下げた。
ヒーロは一歩後ずさり、頭が混乱した。「違う……ユカは俺の妹だ!」
争いが頂点に達したまさにその時、谷口の背後にいた宇宙生物の群れが突然狂ったように動き出した。彼らは空港に閉じ込められた市民を襲い、狂ったように殺戮を始めた。悲鳴と血がロビー中に広がった。
ヒーロは谷口に向かって大声で怒鳴った。「すぐに奴らを止めろ!」
谷口は平然と肩をすくめた。「無理だ。人間どもが俺の命令に従わないから、皆殺しにするしかない」
「何だと!?」
ヒーロが飛びかかって決着をつけようとする前に、一台の車が突然近づき、二人のすぐそばで急ブレーキをかけた。それは混乱の中で宇宙生物に殺された運転手の車だった。サトウがアクセルを踏み、ドアを大きく開けて頭を出し、ヒーロに勧めた。
「ヒーロ、早く乗れ! サン・チェンジもスカイ・チェンジもなければ、奴らとは戦えない!」
ヒーロは歯を食いしばり、サトウの言葉の苦い真実を認めた。彼は最後に谷口を睨みつけ、助手席に飛び乗った。サトウはアクセルを床まで踏み込み、車は風を切って空港のガラスを突き破り、混乱の街へと逃げ去った。
後ろで一人の指揮官が追おうと手を上げたが、谷口が手を上げて制止した。彼は逃げていく車を、冷たい口元の笑みで見送った。
「追うな」谷口は命じた。「逃げさせておけ」
第2章:並行世界の本体と血塗られた食卓
車は混乱した街路を風を切って疾走していた。運転席の中は、触れられそうなほどに空気が重く沈んでいた。
ヒーロはひび割れた窓ガラスの外に目をやり、融合したばかりの新しい地球の血のように赤い空の下でねじれ崩壊する超高層ビル群を見つめた。膝の上に強く手を置き、心は糸のように絡み合って乱れていた。彼はハンドルを固く握るサトウの方を振り向き、二人の視線が重苦しい沈黙の中で交錯した。それは決して口外してはならない秘密を共有するような眼差しだった。ヒーロは乾いた喉を鳴らし、掠れた声で懇願するように言った。
「サトウ……この先、絶対にユカに、彼女が俺の実の妹ではないという真実を知らせるな」
サトウは体を乗り出してアクセルを踏み、友人を驚愕の目で見た。「これは……一体どういうことだ?」
ヒーロは目を固く閉じ、背筋を冷たい空気が走った。原始的な恐怖が胸を締めつけていた。唯一の妹を失うこと、ユカが真実を知った瞬間に背を向けて並行世界の実の母親を選ぶかもしれないこと――その時、十七年間の愛情と守りが瞬く間に否定されるかもしれないという恐れ。ユカの虚ろな目を想像するだけで、心臓が激しく痛んだ。だがどれほど苦しくとも、もう選択肢はなかった。
「俺は幼い頃から祖母に育てられた」ヒーロは目を開き、声を重くした。「祖母は『両親は宇宙人に殺された』と言っていた。だからずっと、ユカを実の妹だと思っていた。まさか……俺たちの両親はどちらも、ずっと前に奴らの手で死んでいたとは」
車はすぐにユカとユイの学校の門前で急ブレーキをかけた。しかし降りた瞬間、彼らは極めて混乱した光景を目にした。生徒や教師が悲鳴を上げて逃げ惑っていた。奇妙な現象が起きていたのだ――全く同じ顔をした無数の人間が、同時に校庭に現れていた。
サトウは口を開けた。「くそ……何が起きてるんだ!?」
校庭からユカとユイが血の気の引いた顔で飛び出してきた。二人の少女は目を見開き、自分と全く同じ姿の人間と衝突して叫び合う周囲の混乱に凍りついた。パニックの中、ユカは偶然、校庭の片隅で顔を覆って泣いている少女を見た。その姿に一瞬自分を重ね、はっとして駆け寄った。
本能のまま、ユカは慌てて駆け寄り、その少女の肩を掴んで震える声で言った。「あなた……大丈夫……?」
しかし相手が顔を上げて振り返った瞬間、ユカは衝撃で足を止めた。目を見開いた彼女は、それが自分では全くなく、極度の恐怖を浮かべた見知らぬ顔だと悟った。眼前の奇妙な真実に、ユカの胸が締めつけられた。
ヒーロが進み出てユカの腕を後ろに引き、二人の少女を庇いながら低い声で簡潔に説明した。「二つの地球が融合した結果だ。並行世界の本体が死んでいない限り、ここにいる誰もが自分と全く同じ者と出会うことになる」
しかし混乱した群衆の中で、ヒーロとサトウはすぐに一つの異常に気づいた。ユカとユイには、ただ一つの本体しか存在しなかった。
サトウはもう驚かなかった。彼は沈思した。「つまり……向こうの地球のユカとユイは、すでに死んでいたということか」
ユカは胸の前で鞄を強く抱きしめ、兄を見て戸惑い震える顔をした。「兄さん……何が起きてるの?」
ヒーロは冷たくなった彼女の肩に温かい手を置き、断固とした声で言った。
「悪い奴が二つの地球を融合させて、この惑星を支配しようとしている。行こう、ここは危険だ」
二人の少女を急いで車に乗せ、サトウはアクセルを床まで踏み込んで安全な拠点へと疾走した。
外の終末のような光景とは対照的に、ナツミは何も知らなかった。彼女は小さなキッチンで楽しげに鼻歌を歌い、まな板の上で包丁をリズミカルに鳴らしていた。突然乗り込んできた一行を見て、ナツミは興奮して出てきた。手にはまだスープをすくう柄杓を持ったまま、輝く笑顔を浮かべていた。
「サトウ、久しぶり! 今回は私の料理の腕に驚くだろうね。みんな入って。食卓の準備はもうできてるよ!」
彼女の興奮と輝く笑顔に返ってきたのは、ぞっとするほど死んだような沈黙だけだった。誰も口を開かない。土埃にまみれた顔は皆硬くこわばり、重い視線は悪い知らせを運ぶようだった。ナツミは徐々に柄杓を下ろし、唇の笑みを消していった。彼女は一人一人を戸惑った目で見回し、静かに尋ねた。「みんな……どうしたの? 何か深刻なことが起きたの?」
ヒーロが一歩進み、鋭い視線を彼女に固定した。
「お前の父親は……科学者だったな?」
ナツミはびくりと身を震わせた。唇の笑みが一瞬固まり、苦々しい作り笑いに変わった。
「どうして……急にそんなことを聞くの……?」
彼女は唇を噛み、数秒沈黙してから小さく頷いた。
「そうよ……でも彼はただの科学者じゃなかった。権力と非人道的な実験に取り憑かれた狂人で、悪魔だった」
ナツミは混乱した目でヒーロを見上げ、胸が小さく痛んだ。
「どうして急に父のことを聞くの?」
ドンッ!
言葉が終わった瞬間、激しい爆発音が空間を揺るがした。頑丈なリビングの壁が粉々に砕け、土石と煙が飛び散り、ガラスの砕ける音が響いた。
灰色の煙の中から、一人の男が狂った笑みを浮かべて現れ、部屋中に声を響かせた。「久しぶりだな、娘よ」
ナツミはテーブルの端まで後ずさり、顔から血の気が引き、唇を震わせた。「ありえない……あなたは死んだはずよ! あなたが私を残酷な実験台にしたから、私は警察に通報してあなたを刑務所に送った……あなたは刑務所の火災で死んだはずよ!」
「親不孝な娘め!」サカトナは咆哮し、殺気を帯びた目をした。「ここで殺してやる!」
彼はすぐに腰の異様なドライバーを起動した。
【SPECTRE CHANGE!】
灰色の機械装甲が瞬時に全身を覆い、彼を殺気に満ちたスペクターの戦士へと変えた。すぐ後ろから、ユキも巨大な壁の穴を通ってゆっくりと入ってきた。優雅でありながら冷たい佇まいだった。
ユキは制止するように穏やかな声で言った。「落ち着きなさい、サカトナ。大事を台無しにしないで」
彼女は視線をヒーロの後ろで震えるユカに移した。ユキの目は奇妙なほどに柔らかくなり、甘くてぞっとするほど、死を誘う催眠の魔性を帯びていた。
「ユカ……愛しい子、私の小さな娘。こっちにおいで。失った年月を全部埋め合わせしてあげる。愛して、私の一番小さなお姫様にしてあげるから」
ユカは完全に戸惑い、自分を母だと名乗る女性をじっと見つめた。彼女はヒーロの服の裾を強く握り、息を荒げた。
「これ……これはどういうこと、兄さん?」
ユキは優しく微笑み、羽のように軽い言葉をユカの心に深く突き刺した。
「あなたは一度も疑問に思わなかったの? どうして兄妹なのに外見がこんなにも違うのかを。兄さんは鋭くて誇り高い欧亜混血の美しさで、あなたは柔らかく優しい純粋な東洋の美しさ……」
一つ一つの言葉が呪いのように響き、ゆっくりと少女の理性を締めつけていった。ユカは膝を抱え、パニックが極限に達した。長い間抱いていた兄妹の外見の違いへの疑問が、眼前に剥き出しにされた。心の中の穏やかな世界観が完全に崩壊した。手足の力が抜け、彼女は床にへなへなと崩れ落ちた。
「すぐに黙れ!」ヒーロは咆哮し、怒りが極限まで爆発した。
一秒の迷いもなく、彼は近くの引き出しに飛びつき、サトウの拳銃を掴むと、ユキに銃口を向けた。
パン! パン!
弾丸が風を切って飛んだが、スペクターが即座に移動してユキの前を防いだ。弾丸は厚い機械装甲に当たり、眩い火花を散らすだけで、防御を貫くことはできなかった。
ユキは口元を歪めた。「ありがとう、悪魔の科学者」
スペクターは野生的な咆哮を上げ、冷たいエネルギー刀をナツミに向かって振り下ろし、命を奪おうとした。
バーン!
千鈞一髪の瞬間、突然の閃光弾が部屋の中央で眩く爆発し、煙と土埃を四方に吹き飛ばした。混乱した煙の中で、ヒーロは指先を通過する馴染みのあるエネルギーを感じた。あの力に触れた者だけが認識できる、特有の空間の揺らぎだった。
その直後、青い光の障壁が眩く立ち上がり、一行全員を包み込んだ。空間が一瞬歪み、彼らを現場から飲み込み、瓦礫の中に呆然とする敵だけを残した。
部屋は即座に空っぽになった。ユキは目を細めて周囲を見回し、驚きがすぐに怒りに変わった。
「ありえない……この惑星に、これほどの実力を持つ者がいるというのか!?」
第3章:三人のヒーロと地下での約束
場面が変わる。海辺に隣接した堅固な地下シェルターの中で、岩壁の外から寄せる波の音が静かな空間に響いていた。一行は、黒いフードを被った二人の謎の男のタイムリーな介入によって、死の刃から辛くも逃れたところだった。
ユイは髪を軽く撫で、沈黙を破るように言った。「助けてくださって、ありがとうございます」
サトウが一歩進み、警戒の目で二人の黒い影を見た。「結局、君たちは誰なんだ?」
疑念に答えるように、二人の見知らぬ男が同時にフードを引き下ろした。黒い布が落ち、露わになったのは……ヒーロと全く同じ顔だった。
空間が一瞬固まった。一行は、同じ部屋に三人のヒーロが立っている光景に目を見開いた。
見知らぬヒーロの一人が突然微笑んだ。彼の目はユカに固定され、感動に満ちていた。
「ユカ……久しぶりだな」
誰も状況を把握する前に、彼は駆け寄り、ユカを強く抱きしめた。声は詰まった。「最後に見た時、お前はまだ13歳の少女だった……今はもう17歳か」
ヒーロは妹を抱きしめる分身を目を細めて見つめ、冷たく鋭く尋ねた。「つまりお前は未来から来たヒーロか? では隣の奴は……誰だ?」
もう一人が口を開き、視線を沈めた。「俺は並行世界のヒーロだ」
ヒーロは胸の前で腕を組み、声を低くした。「なぜ二人がここに現れた?」
即座に、並行世界のヒーロが床に跪き、皆の前で深く頭を下げた。「すまない……この全ての厄介事は、俺が引き起こしたものだ」
ヒーロは眉を上げた。「どういう意味だ?」
並行世界のヒーロは顔を上げ、後悔に満ちた声で言った。「俺はゴッド・チェンジを使って過去に介入し、変えてしまった……父親を救いたかっただけだ。まさか蘇った後、彼が欲に目がくらんで世界を支配しようとし、宇宙人どもまで手下にするとは思わなかった」
ヒーロはもう一人の方を向いた。「ではお前は? 未来のヒーロ。何をしに戻ってきた?」
未来のヒーロは口元を歪め、直接答えず逆に問いかけた。「お前ら、なぜ宇宙人が地球を攻撃してきたか知っているか?」
ヒーロと並行世界のヒーロは顔を見合わせ、答えなかった。
未来のヒーロは続け、平然と説明した。「サン・チェンジが何で作られているか知っているか? それは宇宙人の円盤そのものから作られたんだ」
サトウはそれを聞いて目を見開いて叫んだ。「信じられない! あんな巨大な円盤を……」
「お前が思うほど大きくはない」未来のヒーロは遮り、手のひらを広げた。「手のひら大だ」
サトウは「おお」と声を上げた。「なるほど……お前が宇宙人を殺して円盤を奪ったのか?」
未来のヒーロは手を振り、舌打ちした。「そんなわけないだろ! 俺は谷口のジジイみたいに悪くない。円盤を拝借しただけで、宇宙人は解放した。おそらくその後、仲間に母星へ迎えられて全てを話し、奴らが報復にやってきたんだ」
ヒーロは腕を組み、自分の二人の分身をうんざりしたように見て首を振った。「二人とも大したもんだな……全部自分で厄介事を引き起こして」
未来のヒーロは傲然と口元を上げた。「構うもんか、間違えたら直せばいい!」
並行世界のヒーロは立ち上がり、決意を込めて頷いた。「だからこそ、俺たちがここにいる」
この時、未来のヒーロの腕の中にいたユカが小さな声で言い、少し顔を赤らめた。「未来世界の兄さん……離してくれない?」
未来のヒーロは頭を掻き、愛想笑いをした。「悪かったな」
ユカはためらいがちにヒーロに近づき、悲しみと自責の目をした。彼女は兄を見上げ、静かに尋ねた。「あの話……本当なんですか? 私たちは本当に血の繋がった兄妹じゃないんですか?」
ヒーロは足を止め、ただ彼女を見つめた。
沈んだ空気を見て、未来のヒーロは軽く鼻を鳴らし、本来の傲慢さに満ちた目をした。「ふん! 実の妹じゃなきゃ大事にしないとでも? 俺ならな、妹のためなら世界中を相手にしても構わない!」
未来の本体の言葉が冷水のようにヒーロを目覚めさせた。彼の目は再び鋭くなり、絶対的な自信が即座に心の迷いを打ち砕いた。彼はユカをまっすぐに見て、きっぱりと宣言した。
「そんなわけあるか! お前は永遠に俺の妹だ。赤ん坊の頃からずっと世話してきたんだぞ」
並行世界のヒーロは二人の兄妹を見て、穏やかに尋ねた。「でもユカ、お前は実の母親の元へ戻りたいか?」
ユカはヒーロの方を振り向き、確固たる微笑みを浮かべて兄の手を強く握った。
「生む恩より育ての恩。私は兄さんと一緒に行きます……この世界を守るために!」
第4章:残酷な真実と星々の力
海辺の地下シェルターの中で、サトウは腕を組んで沈思し、疑問に満ちた顔をした。
「並行世界から来た連中には皆はっきりした目的がある。ヒーロの父親は世界支配、ナツミの父親は娘への復讐、ユカの母親は娘を取り戻す……ユイの父親はまだ分からないが、なぜ俺の両親があの男に支配されているんだ?」
ヒーロはテーブルの端に寄りかかり、平然と答えた。「お前の父親が私設軍事企業を持っているからだ。奴らは彼の管理経験と指揮の才能を必要として、宇宙人軍全体を統括する総司令官の地位に就かせようとしている」
サトウは納得し、息を吐いた。「なるほどな……」
ユイがこの時一歩進み、確固たる目で一行を見た。「じゃあ、今からあの強大な勢力にどう立ち向かえばいいんですか?」
未来のヒーロは現在のヒーロの方を振り向き、口元を上げて尋ねた。「以前、宇宙人の首領たちの細胞を集めろと頼んだのを覚えているか?」
ヒーロは眉を上げた。「覚えているよ。ヴィーナス、マーキュリー、マーズ、ジュピター、サターン……だろ? 全部ガラス瓶に入れて棚に戦勝の勲章みたいに並べてあった。でも……」
「……そのサンプルは崩れたお前の家の中にあるんだろ?」並行世界のヒーロが遮った。彼はポケットから鉄の箱を取り出し、テーブルに置いた。「家が崩れる前に持ち出せたが、瓶が多すぎてどれがどれか分からん」
ヒーロは近づき、本能と経験で最も純粋な精髄を含む8本の瓶を素早く選んだ。未来のヒーロはすぐに作業に取りかかり、技術テーブル上でエネルギーの構造を驚異的な速度で変化させていった。
「できた!」
未来のヒーロは微笑み、新しい変身装置を一人一人に手渡した。
「サトウのはウラヌス・チェンジ、ユカのはネプチューン・チェンジ、ユイのはプルート・チェンジ、ナツミのはガイア・チェンジだ」
配り終えると、未来のヒーロは現在のヒーロの耳元に寄り、露骨なひいき目で囁いた。「お前は俺自身だから、特に5つの星(ヴィーナス+マーキュリー+マーズ+ジュピター+サターン)の力を全部お前の装置に統合した。名前はVMMJS・チェンジだ」
ヒーロは手の中の装置を見て眉を寄せ、舌打ちした。「VMMJS・チェンジなんて読みにくい。VEMJUS・チェンジと呼ぶことにする」
未来のヒーロは頷いた。「カッコいいな、好きにしろ」
その間、並行世界のヒーロは黙って壁に寄りかかって全てを観察していた。ユイが好奇心から近づき、静かに尋ねた。
「あなたは過去に戻る力で父親を救った……きっと母親も救ったんですよね?」
並行世界のヒーロは腕を組み、目を暗くし、暗い記憶に沈んだ。「向こうの世界の母親は……もう死んでいる」
ヒーロも未来のヒーロも驚きで振り返った。「なぜだ!?」
並行世界のヒーロは拳を握りしめ、憎悪の声で言った。「母と俺は、父が力を使って世界を支配することに断固反対した。結果、俺は地下牢に放り込まれ、母は軟禁された。母は危険を冒して鎖を外し俺を逃がしてくれた……だがすぐに父に見つかり捕まった」
彼は深く息を吸い、目を赤くして憤慨した。「俺が脱獄した後、父は母を切り札にして、彼女の命を盾に俺を追い詰め、出頭を強要した。だが母は俺が再び父の手に落ちることを望まず……自ら命を絶って俺を父の支配から解放した」
並行世界のヒーロは涙を拭い、歯を食いしばって続けた。「極限の怒りで、俺は一人で何万もの宇宙人を薙ぎ倒し、自らワームホールを作って俺の世界とこの世界を繋げた」
現在のヒーロが黙って観察しているのを見て、並行世界のヒーロは近づき、自分の本体の肩に手を置き、経験者のように厳しく言った。
「ヒーロ、過去に戻って誰かを救おうなどと考えてはいけない。俺は試した。過去を変えるたびに新しい宇宙が生まれる。一人を救えば別の悲劇が現れる。これ以上壊れた世界を作るな」
未来のヒーロはただ腕を組んで隣に立っていた。
「奴の言う通りだ」
それを聞いて、現在のヒーロはすぐに並行世界のヒーロの手を肩から振り払い、冷たく鋭い視線で二人を掃くように見た。
「やめろ。俺は過去に戻ろうなど一度も思ったことはない。時間と空間をかき乱したのはお前ら二人だろう? 自分の失敗を俺に押しつけるな。俺は過去を修正するために生きているんじゃない。俺は自分の手で現在を守る」
絶対的な自信と傲然とした気質が再び彼の目に爆発し、二人の本体は黙るしかなかった。
並行世界のヒーロは軽く咳払いして本題に戻り、まっすぐ現在のヒーロを見た。
「お前……こそが俺の唯一の希望だ」
ヒーロは眉を僅かに寄せて疑った。「なぜ俺なんだ?」
並行世界のヒーロは苦々しく息を吐き、尊敬と期待に満ちた目をした。
「俺もあの未来のヒーロも、自分の世界で失敗した哀れな奴らだ。だがお前は違う。未来から変身装置を受け取ったおかげで、妹を守り、一人でエイリアン軍団を全滅させた。お前には俺たち二人にはないものがある……勝者の経験だ! 俺がワームホールで二つの世界を繋げたのは、この局面を覆せる唯一の本体に全てを賭けるためだ」
ヒーロは少し顎を引き、何かを思い出したように沈思した。
「だが空港で、あの男は自分で二つの地球を一つにしたと言っていたぞ?」
並行世界のヒーロは軽蔑の笑いを上げ、皮肉に満ちた目をした。
「あいつに空間を引き裂くほどの力などあるものか! 本当にそんなに強かったら、狂人科学者サカトナの技術を利用する必要などない」
「悪魔の科学者よ!」ナツミが即座に訂正し、憎悪に満ちた顔をした。
ユカは瞬きして疑問を口にした。「どうして姉さんのお父さんはそんな怖いあだ名なの?」
ナツミは苦々しく息を吐き、虚空を見つめて暗い目をした。
「あの人の頭の中に平和という概念はないからよ。大量殺戮兵器を専門に作り、金のためなら子供や若者にまで重火器を流す。実の娘でさえ、彼にとっては実験道具以上のものじゃなかった」
第5章:星々の力と卑劣な策
未来のヒーロから新しい変身装置を受け取った後、ヒーロの一行はすぐに地下シェルターを出た。この時、街路では警報のサイレンが絶え間なく響き、痛ましい悲鳴と入り混じっていた。宇宙人の軍勢が掃討を行い、無辜の市民に恐怖を撒き散らしていた。
一秒の遅れもなく、一行は横一列に並び、一斉に星々の力を起動した。眩いエネルギー光が爆発し、一人一人を包み込んだ。
サトウは前方に手を伸ばし、狂ったような風圧が体を包んだ。
「天空の戦士――ウラヌス!」
ユカは装置を高く掲げ、渦巻く水の波が周囲に湧き上がった。
「大海の戦士――ネプチューン!」
ユイは確固たる声を上げ、闇くて魔性の影が足元に渦巻いた。
「冥界の戦士――プルート!」
ナツミは歯を食いしばり、地中から元素エネルギーが噴き上がった。
「大地の戦士――ガイア!」
そして最後に、ヒーロが中央に立った。5つの惑星から統合されたエネルギーが宇宙の嵐のように燃え上がり、五色の光輪が咆哮して彼を包んだ。
「五星球の戦士――ヴェムジャス!」
新しい力が爆発し、一行は夜を切り裂く刃のように戦場へ突っ込んだ。
今回の侵略軍は数万の雑兵と、ネビュラ、ギャラクシー、コメット、メテオ、クエーサーという5人の精鋭首領で構成されていた。即座に戦いのテンポが頂点に達した。
ヒーロの一行は最前線で完全に優勢だった。ネプチューンの海の重みを持つ拳、ウラヌスの空気を切り裂く風の刃が雑兵を薙ぎ倒し、瞬く間に無数の宇宙の塵へと変えた。
しかし、5人の首領と直接対峙すると、局面は一方的な遊びではいられなくなった。ネビュラとギャラクシーは極めて息の合った連携で破壊的な攻撃を繰り出し、ナツミとユイを後退させた。コメットの不意の足払いがユイの反応を遅らせ、彼女はコンクリートの壁に激しく叩きつけられ、口元から血が滲んだ。同時に、クエーサーがナツミの命を奪いかけたが、彼女が間一髪でガイアの障壁で致命打を受け止めたため、手足が痺れるほどだった。
相手の厄介な抵抗を見て、ヒーロ(ヴェムジャス)は歯を食いしばり、5つの星から統合された全エネルギーを爆発させた。五色の光輪が咆哮して噴き上がり、5人の首領を遠くへ吹き飛ばし、窮地に追い込んだ。
わずか数分で、敵の残党は散々に打ち砕かれ、地面に倒れた。
「ここで終わりだ!」
ヒーロは冷たく声を放った。一行は一斉に最大のエネルギーを武器に集中し、決着をつける必殺の一撃を放とうとした。
しかし、その運命の瞬間、5人の首領の体が突然痙攣し、奇妙に変形した。外殻がひび割れ、中から血肉のある本物の人間の顔が露わになり、真っ赤な目に涙を浮かべていた。
ギャラクシーは体を引きずって起き上がり、口元を歪めて残酷な真実を嘲笑いながら告げた。
「俺たちは進化したんだ、愚かな敵め。もう以前のように人間を殺して化け替える必要はない」
コメットが得意げに続けた。
「俺たち一人一人が、直接人間の体に融合したんだ! 俺たちの命とこの寄生された者の命は今や一つ。俺たちが死ねば、奴の心臓も止まる!」
メテオの喉から、震える絶望的な声が上がった。
「助けて……助けてくれ……お願いだから手を出さないで……死にたくない……」
それは直接内部に寄生された宿主の痛ましい懇願の声で、敵の宣言を正確に裏付けていた。
一行が溜め込んでいた技が突然止まった。高く掲げた腕が千鈞の重みのように重くなった。空間が沈み、息をすることさえ難しくなるほど濃密になった。
ユイは拳を握りしめ、憤りで震えた。「卑劣すぎる! 人間の命を盾にするなんて、この野郎どもが!」
ユカは歯を食いしばり、怒りに燃える目をした。「奴らはわざと俺たちの人道心を突いてる……」
サトウは武器を強く握り、額に青筋を浮かべ、憤りと迷いが心を二つに引き裂いた。
ナツミは足を止め、瞳孔が収縮した。武器を持つ手を緩め、無意識に半歩後ずさり、眼前に突きつけられたあまりにも残酷な真実に胸を激しく上下させた。
そしてヒーロは、中央で像のように静かに立っていた。冷たく鋭い目を細め、内面の葛藤が穏やかな外見の下で嵐のように渦巻いていた。「最初からこの状況を計算していた……生き延びるためではなく、俺たちが戦うのを躊躇わせるためだ。奴らは人間の弱点をよく分かっている……だがこのまま躊躇していれば、戦局は完全に奴らの手に落ちる」
その重い沈黙の中で、5人の首領は得意げに、挑発的に大声で笑った。
ネビュラは野生的に歯を剥き出し、突然寄生された宿主自身の手で、鋭い爪を自分の胸の位置に突き立てた。血が噴き出したが、彼は瞬き一つせず、一行全体を極限まで残酷な声で挑発した。
「どうした? 大した実力だろう? こっちへ来い! 俺たちを殺せ! ハハッハッハ!」
第6章:冷酷、裏切り、そして涙のバラード
ヒーロの一行が5人の首領の卑劣な人質作戦に躊躇しているまさにその時、周囲の空気が急に氷点下まで下がった。空が殺気で熱を帯び、月食の戦士を名乗る二つの黒い影が虚空を切り裂いて現れた。
誰も反応する間もなく、ゴーストの戦士とファントムの戦士が悪夢のように舞い降りた。彼らは冷たくメテオとクエーサーの頭を掴み、硬い岩の地面に何度も叩きつけ、ひび割れさせるほどだった。
ナツミは衝撃を受け、一歩後ずさった。「何が起きているの? 内輪揉め?」
余計な言葉は一切なく、ゴーストもファントムも一斉に闇のエネルギーを溜め、同類を仕留める必殺の一撃を放とうとした。
ヒーロはそれを見るや否やすぐに叫んだ。「待て——!」
ドンッ!
警告の言葉は、メテオとクエーサーを飲み込む二つの残虐なエネルギー爆発によって完全に断ち切られた。二つの宇宙人の死体は粉々に砕け、寄生されていた二人の無辜の人間も瞬く間に煙となって消え、助けを求める声すら上げられなかった。
ヒーロの一行は凍りついた。想像を超える血も凍るような残酷さが彼らの心に重い一撃を与え、一人一人の胸が締めつけられるようだった。
ユイは憤りで体を震わせ、極限の憎悪に満ちた目をした。「あまりにも残虐だ! なぜそんなことをするの!?」
月食の戦士の仮面の後ろから冷たい声が響いた。「裏切り者の末路は死だけだ。奴らは自分の立場を忘れ、愚かにも俺たちを転覆させる革命を起こそうとした……」
コメット、ネビュラ、ギャラクシーは即座に顔色を変えた。
「この野郎ども! 俺たちを粛清する気か!?」
勝ち目がないと悟った三人は、パニックに陥ってすぐに背を向けて逃げ出した。
その瞬間、日食の戦士が上空からゆっくりと降り立ち、言葉を継いだ。一つ一つの言葉が血の匂いを漂わせていた。
「……だが奴らは間違っていた。俺たちに『人間性』などというものはない」
言葉が終わるや否や、日食の戦士が手を振った。破壊の光線が風を切って飛び、コメットが懇願する前に胸を貫いた。三人目の首領とその宿主は粉々に爆発した。
その直後、レイスの戦士が幽霊のように降り立った。残酷で正確な斬撃で、彼は残りのネビュラとギャラクシーを容易に仕留め、絶望の叫びの中で完全に命を奪った。
日食の戦士は満足げに頷いた。「よくやった、ナガタ」
「ナガタ」という名がユイの耳に雷のように落ちた。彼女は目を見開いて衝撃を受けた。一瞬の迷いもなく、すぐに変身を解除し、疲れきったが驚きに満ちた顔を露わにした。
「……父さん?」ユイは震える声で言った。
レイスの戦士は足を止めた。周囲の黒い殺気が即座に消え、目の前の少女を見て衝撃を受けた。「ユイ? お前……まだ生きていたのか!?」
レイスのエネルギー装甲が崩壊した。中年の男の姿が現れ、やつれた顔に驚きが満ちていた。彼は駆け寄り、消え失せるのを恐れるようにユイを強く抱きしめた。
「どうしてこんなことが……」ナガタは震え、涙を詰まらせた。「奴らは、この惑星のお前は学校での暴力で自殺したと言っていたのに!?」
ユイは苦々しく涙を拭った。「奴らが父さんを騙したんです!」
ナガタは衝撃を受けて娘を離し、両手で頭を抱え、極限の自責の中で地面に跪いた。「ああ……俺は何をしたんだ! 奴らの言葉を信じ、この惑星の人間を救いようのない愚か者だと見下していた……どれだけの無辜の人間を手にかけてしまったことか……」
ヒーロは最初から観察しており、鋭い思考で冷たく声を放った。「おそらく、並行世界のユイは自殺ではなく、奴らがあなたを操るために殺害した可能性が高い」
ナガタは顔を上げ、憤りに満ちた目で首領を見た。「本当なのか!?」
日食の戦士は愉快そうに笑い、全く否定しなかった。「おや、バレたか? だが知ったところでどうする? 数え切れないほどの罪を犯したお前に、俺に何ができる?」
「この野郎ども!」
後悔が極限の怒りに変わり、ナガタは再びレイスの戦士に変身し、日食の戦士に向かって突っ込んだ。しかし、彼がエネルギーを溜め始めた瞬間、月食の戦士からの闇の力を帯びた遠距離射撃が背後から胸を貫いた。
ドンッ!
レイスの体が崩れ落ち、虚無の光の粒子となって消えた。
ユイは無力感の中で叫び、心を引き裂くような泣き声が空間中に響いた。「とおおおおお!!」
ユカは拳を握りしめ、憤りを込めて月食の戦士を見た。「あなたは残酷すぎる! 私にはそんな冷酷で人間性のない母親はいない!」
月食の戦士は口元を歪め、皮肉に満ちた声をした。「それが母親に対する娘の話し方かい? きっとあのヒーロの小僧がお前を甘やかしたんだろうね」
ヴェムジャスの戦士が即座に進み出てユカの前を防ぎ、手の中の武器をエネルギーで輝かせた。「妹に触れるな!」
激しい乱戦が爆発した。本体たちが内外の敵と戦う中、サトウ(ウラヌスの戦士)は最も苦しい二人の相手と対峙していた——実の両親であるゴーストとファントムの戦士だ。
残酷な戦場で、ウラヌスは両親からの容赦ない攻撃を連続で避け続けた。彼は反撃しなかった。
ゴーストとファントムの拳や闇のエネルギーが装甲を粉々に砕く中でも、サトウは歯を食いしばって耐え、一切反撃しなかった。
「父さん! 母さん! 目を覚ましてくれ!」サトウは嗚咽交じりに大声で叫んだ。「思い出してくれ! 一緒にいた日々、家族の思い出を……どうして息子が実の両親を殴れるっていうんだ!?」
心を引き裂くような叫びとサトウの涙が冷たい岩の地面に落ち、二人を足を止めさせた。
その瞬間、埋められていた映像が彼らの心に浮かび上がった。小さな息子の笑顔、家族の食卓、失われた幸せな日々。
ゴーストとファントムの攻撃が空中で突然止まった。
サトウは地面に崩れ落ち、ウラヌスの装甲が砕け散り、絶望の中で目を上げた。
突然、優しく馴染みのある声が響いた。「息子……」
サトウは震えた。「母さん……?」
ファントムの装甲が消え、マイが変身を解除し、後悔の涙に満ちた目を露わにした。「ごめんなさいね、サトウ……」
隣のスズキもゴーストの装甲を脱ぎ、痛ましげな顔で近づいた。「俺も謝る……息子よ」
「父さん! 母さん! 分かってくれたのか!?」サトウは涙を拭い、二人に飛びついて強く抱きしめた。破壊の光景の中で家族の絆が燃え上がった。
日食の戦士は軽蔑して眉を寄せた。「何だと?」
敵側に残ったのは日食の戦士(谷口)と月食の戦士の二人だけだったが、その力は完全に圧倒的なレベルにあった。残虐なエネルギー嵐の一波の後、ネプチューン、プルート、ガイア、ヴェムジャスの戦士たちは一斉に吹き飛ばされ、装甲が砕け散って地面に倒れ、人間の姿に戻った。
日食の戦士は手を上げ、ヒーロの一行全体を仕留める一撃を放とうとした。
その危機の瞬間、スズキとマイは即座に再びゴーストとファントムの戦士に変身し、子供たちの前に立ちはだかった。
ゴーストの戦士が叫んだ。「サトウ! すぐに友達を連れて逃げろ!」
ファントムの戦士が言葉を継ぎ、最後に息子を確固たる目で見た。「急げ! 両親の犠牲を無駄にするな!」
サトウは涙を飲み込み、時間を無駄にできないと悟った。彼は再びウラヌス・チェンジを起動し、空の速度でナツミとユイを抱え、風を切って飛び去った。
その瞬間、頭から足まで黒い布を被った二人の謎の影が突然現れた——他ならぬ未来のヒーロと並行世界のヒーロだった。彼らは素早くヒーロとユカを肩に担ぎ、日食の戦士の破壊の一撃が落ちる前に夜の闇へと消えた。
第7章:残骸と希望
安全な拠点に撤退した瞬間、重い空気が心を引き裂くような泣き声で弾けた。一人一人がそれぞれの方法で痛みに沈み、心を切り裂かれていた。
サトウは壁の隅に崩れ落ち、両手で頭を強く抱えた。連続した嗚咽が喉から漏れ続けた。
突然、彼は隣のコンクリートの壁に強く拳を振り下ろした。
ドンッ!
手の皮膚が裂け、血が滲み始めた。
「くそ……」
ドンッ!
「なんで俺はこんなに無力なんだ!?」
ドンッ!
「なんで助けられなかったんだ!?」
彼は硬いコンクリートの壁を連続で殴り続け、自分自身を粉々に砕こうとするかのようだった。皮膚が裂け、血が灰色の漆喰を赤く染めるまで殴り続けたが、肉体の痛みは心を引き裂く自責に比べれば何でもなかった。彼を絶望させたのは手の傷ではなく、両親を救えなかったという事実だった。
その傍らで、ユイはただ静かに泣いているだけではなかった。彼女は冷たい地面に跪き、両手で服の裾を強く握り、唇を震わせて絶え間なく無力な非難の言葉を呟いていた。「なぜ……なぜ……父さん……」
そしてユカはヒーロを強く抱きしめてむせび泣いた。彼女の視線は兄の体中に散らばる傷に何度も止まった。
ヒーロが自分の前に飛び出し、自らの体で日食の戦士と月食の戦士の残虐な攻撃を受け止めた光景を思い出すたび、彼女の心が激しく痛んだ。
ユカは震える手で兄の服を強く握った。
「死なないで……お願い、死なないで……」
涙が止まらなかった。
「兄さんを失いたくない……もう誰も失いたくない……」
その痛ましい音の中で、ナツミは冷たいほど冷静を保っていた。だが彼女は無感情ではなかった。目は赤く充血し、手が白くなるほど強く握られ、黙ってサトウの血を拭い、皆の包帯の準備をしていた。彼女は行動で悲しみに向き合っていた。
ユイの手当てを終えると、彼女は顔を上げ、沈思した目をした。
「どうしてこんなに差があるの? 同じ鋼鉄の戦士なのに、日食と月食がゴースト、ファントム、レイスより遥かに強いなんて」
並行世界のヒーロはコンクリートの柱に寄りかかり、口元を歪めて皮肉な一言で沈黙を破った。
「谷口とユキの変身装置は俺が直接作ったものだからだ。あの三人の安っぽい玩具は……お前の父親が作った製品だ」
隣に立っていた未来のヒーロも腕を組んで舌打ちし、軽蔑に満ちた声で付け加えた。
「お前の父親は半端な科学者だ。俺のレベルと比べりゃ、まだまだ青二才だな」
この時、ユカの腕の中で傷だらけの体を横たえていた現在のヒーロが、僅かに口元を上げて掠れたが棘のある声を出した。
「じゃあ……どうするんだ?」
並行世界のヒーロは冷たく答えた。
「俺が自分で新しい変身装置を作って、奴らを粉砕する」
未来のヒーロは疑いの目を細めた。
「俺の作った変身装置の質を疑ってるのか?」
並行世界のヒーロは未来の本体を軽蔑の目でちらりと見た。
「俺たちが倒した奴らから力を借りるなんて、お前こそ本当の馬鹿だ」
未来のヒーロは一瞬呆けた後、頭を掻いて認めた。
「ああ……確かにな」
現在のヒーロは並行世界の分身を見上げた。
「どうやって作るつもりだ?」
すぐに答えず、並行世界のヒーロは首のチェーンから、純粋な神聖なエネルギーを放つ結晶を取り出した。
彼は低い声で言った。
「ゴッド・チェンジはほぼ絶対的な爆発力を与えるが、代償としてエネルギーが永久に消える前に一度しか使えない」
「それを作る過程で、いつも少量の神聖エネルギーが余る。俺たちは皆、その余ったエネルギーを記念に残していた」
そう言って、彼は他の二人の本体をちらりと見た。
これ以上の説明は必要なく、現在のヒーロは靴下の中に密かに隠していた小さな結晶を取り出し、未来のヒーロも腕輪に保管していたエネルギーを外した。
三つの結晶がすぐにテーブルの上に並べられた。
並行世界のヒーロは三つの神聖エネルギーを一つに集め、冷たい決意の光を目に宿した。
「この三つの余ったエネルギーで、ゴッド・チェンジの限界を超えるものを作る……俺たち自身の力を持つ装置で、全てを終わらせる」
言い終えると、並行世界のヒーロはすぐに作業に取りかかった。一方、他の者たちは彼が自ら設置した特別な回復治療区に運ばれた。
一週間後。
全員の傷が完全に回復した時、残虐な脅迫のメッセージが全通信システムに流された。悪魔の科学者サカトナが多数の無辜の市民を人質に取った。ヒーロの一行が現れなければ、一分ごとに数十人が死ぬと宣言した。
死の罠であり、勝利の可能性が極めて薄いと知りながらも、ヒーロの一行は出撃を決めた。
集合地点に到着すると、目に飛び込んできたのは三人の宇宙人と、その隣に立つ三人の鋼鉄の戦士――ゴースト、ファントム、レイスだった。
サトウは衝撃で目を見開いた。胸に希望が灯り、前に飛び出しそうになり、震える声で叫んだ。「父さん……母さん……!」
だが現在のヒーロが素早くサトウの肩を掴み、鋭い目で覚醒させた。「馬鹿なことをするな! よく見ろ!」
ヒーロの予測通り、その直後、三人のゴースト、ファントム、レイスが同時に顔の装甲を解除した。金属の仮面の後ろにあったのはサトウの両親ではなく、醜悪で異様な宇宙人の顔だった。
残酷な真実がサトウの心に致命的な一撃を与え、芽生えたばかりの希望を瞬く間に粉々に砕いた。
影からサカトナが現れた。彼は冷たいほど静かな佇まいで立ち、解剖台に上げられる直前の動物を見るような目をしていた。
徐々に悪魔のような笑みが顔に浮かんだ。
「ハハッ……お前らの顔は実に面白いな」
彼は指でゴースト、ファントム、レイスを指した。
「これが全てだと思ってるのか?」
唇の笑みがますます歪んだ。
「違うな。もっと面白いものを作った。今回は三人どころか、六人の戦士だ!」
ナツミは残虐な父親を目を細めて見つめ、内心で理解した。「つまり前回現れなかったのは、新しい変身装置の作成に集中していたということか……」
サカトナはゆっくりとユイの方を振り向き、極限の残酷さを目に宿した。
「一番面白いのは何か知ってるか?」
「お前の父親は死んだ……だが死ぬ前に、俺の研究に大いに役立ってくれた」
彼は愉快そうに笑い、狂人の自己満足に満ちた顔をした。
「実に素晴らしいサンプルだった! ハハッハッハ!」
ユイは憎悪に満ちて歯を食いしばり、爪が掌に食い込んで血が滲んだ。「このクソジジイ……殺してやる!」
ユカは不安げに局面を観察して眉を寄せた。「もう内輪揉めはないの?」
その時、日食の戦士が一歩進み、圧倒的な気勢を渦巻かせた。
「一殺百戒。あの頑固な宇宙人の首領どももついに恐れを知り、俺の足元にひれ伏した」
月食の戦士が隣で口元を歪めて皮肉った。「忠誠を尽くせば、自然と報酬がある」
言葉が終わるや否や、六人の宇宙人が一斉に装置を起動し、邪なエネルギーが爆発して彼らを威圧的な鋼鉄の戦士の姿に変えた。
• スーパーノヴァがスピリットの戦士に。
• ダークマターがゴーストの戦士に。
• アンチマターがファントムの戦士に。
• パルサーがレイスの戦士に。
• マグネターがアパリションの戦士に。
• アステロイドがポルターガイストの戦士に。
一切の動揺もなく、ヒーロの一行も一斉に力を起動した。
• サトウ――ウラヌスの戦士。
• ユカ――ネプチューンの戦士。
• ユイ――プルートの戦士。
• ナツミ――ガイアの戦士。
• ヒーロ――ヴェムジャスの戦士。
「突撃!」
双方がぶつかり合い、激しい乱戦が始まった。相手が強力な戦士装甲を装備していても、元々単独戦闘に慣れた宇宙人の連携はぎこちなかった。しかし予想に反し、彼らは不器用どころか予想外の接近戦の連携を繰り出し、ヒーロの一行を数拍分たじろがせた。
交戦が始まった瞬間、スピリットの戦士とアパリションの戦士が同時に攻撃を開始した。前方からエネルギー波が飛来し、ガイアの戦士に防御を強いた。同時に、ポルターガイストの戦士が不意に背後に回り、腰に強烈なキックを叩き込んだ。
ドンッ!
ナツミは数十メートル吹き飛ばされ、地面を何度も転がってからようやくバランスを取り戻した。
それだけで終わらず、ゴーストの戦士とファントムの戦士が異なる方向からウラヌスの戦士を追い詰め、レイスの戦士が後方を絶えず撹乱し、ネプチューンとプルートの戦士を何度も受け身に追い込んだ。
それでも戦闘経験の差はあまりにも大きかった。相手の新しい連携に数分で適応すると、ヒーロの一行は徐々にリズムを取り戻し、連続の反撃で六人の手先を後方に押し返した。
一呼吸の間に、力の均衡が完全に崩れた。戦場の頂点に立つ二人が正式に手を下したのだ。日食の戦士と月食の戦士は一言も発せず、同時に進み出て、空気を押しつぶす重い圧力を放った。
ヒーロは咆哮し、残った全エネルギーを両脚に集中させて霧を切り裂く矢のように飛び出した。
「ヴェムジャス・スラッシュ!」
輝く剣が局面を打破する決意を帯びて、敵の胸に向かって斬りかかった。
キンッ!
ぞっとするほど甲高い音が響いた。ヒーロは足を止め、剣から逆流する衝撃を全身の筋肉で感じて目を見開いた。日食の戦士の体を覆うエネルギー防御は微動だにせず、永遠の城壁のように堅固で冷たかった。
「何だと!?」
ヒーロが剣の勢いを回収する前に、ネプチューンの戦士とプルートの戦士が両脇から飛び出し、最も危険な急襲攻撃を放った。だが月食の戦士は片手を軽く上げて受け止め、口元に薄い笑みを浮かべただけだった。
ドンッ!
その全ての力が無残に止められ、何千もの光の点に砕けて虚無に消えた。
「弱すぎる」
ウラヌスの戦士は怒りを抑えきれず、仲間を侮られたことに首の筋を怒らせた。
「どいてろ!」
彼は限界を爆発させ、これまでの最強の一撃に生気を注ぎ込み、中心に叩きつけた。
ドンッ!!!
足元の地面が裂け、大きな岩が煙と炎の中に飛び散った。だが砂煙が徐々に収まると、日食の戦士の姿はそこにそびえ立ち、傷一つなく、服の乱れすらなかった。
「これだけか?」
ヒーロは散乱する瓦礫の中に倒れ込み、神経が麻痺するほどの痛みで、指一本動かすことさえ不可能な試練となっていた。周囲ではネプチューン、プルート、ガイア、ウラヌスの戦士たちが次々と動かなくなり、砕けた装甲の破片と血の染みの中に埋まっていた。
ヒーロは打撲した手を冷たい地面に伸ばし、血が滲むまで砂を掴んだ。だが体の衰弱が意志を裏切っていた。頭の中に残ったのは絶望的な一つの考えだけだった。
「今度は……本当にもう退路がないのか……?」
第8章:新たな希望と代償
ヒーロの一行が敵の凄まじい圧力の下で完全に地面に倒れ、息も絶え絶えになった時、絶望的な空気の中に突然ゆっくりとした足音が響いた。
並行世界のヒーロが現れた。彼は圧倒的で息が詰まるほどの気勢をまとって近づいてきた。片手に金属のアタッシュケースを下げ、もう片方の手はゆったりとポケットに深く突っ込んでいる。冷たく鋭い目で破壊された戦場を掃くように見渡し、最も高い位置に立つ男に止めた。
「全てここで終わりだ、親父」
余計な動作は一切なく、並行世界のヒーロは最高の装置を起動した。スーパードライバー。
「起動!」
眩い光が降り注ぐ太陽のように爆発し、周囲の空間をすべて飲み込んだ。神聖な威圧に満ちた光の中で、断固とした声が夜を切り裂いて響いた。
「太陽神の戦士――降臨!」
しかし、圧倒的な力を得た彼が最初に行ったのは、即座に敵を粉砕することではなかった。彼は静かに片手を上げ、平然と簡潔な命令を放った。
「時間よ、止まれ」
カチッ——!
世界全体が即座に停止した。煙や塵、岩の破片、さらには敵軍の途中の攻撃さえも、空中でぴたりと止まった。
その停止した空間の中で、太陽神の戦士はアタッシュケースを開け、最高の変身装置を順に仲間に渡した。スカイゴッド・チェンジをサトウに、スターゴッド・チェンジをユカに、ムーゴッド・チェンジをユイに。
最後に、彼は最も強力な装置――ゴッド・オブ・ゴッズ・チェンジを取り出した。
この能力の不文律は明確だった。世界が静寂の空間に凍結されている間、いかなる命も奪ってはならない。だからこそ、すべての準備は絶対的な精度で行われなければならなかった。
太陽神の戦士は最も強力な装置を現在のヒーロの手に直接押し込んだ。彼は微笑み、少しも隠さないひいき目を見せた。
「お前は俺自身だから、この最強の変身装置を渡す」
パチン!
乾いた指弾きの音が響いた。時間の歯車が即座に回り始め、世界が再び動き出した!
時間が再び流れ始めた瞬間、三つの神聖なエネルギーが連続して爆発した。
「変身!」
サトウが装置を起動し、天空神の戦士の装甲をまとった。ユカは星神の戦士に、ユイは月神の戦士に変身した。
しかし、ヒーロの手の中のゴッド・オブ・ゴッズ・チェンジは沈黙したままだった。彼は装置の起動スイッチを見たが、指は全く押す気配がなかった。ヒーロはゆっくりと戦場の片隅に立つナツミを見た。その後、視線は何度も生死の境界を共に越えてきた仲間たちを掃くように巡った。
ヒーロは小さく息を吐き、自嘲気味に口元を上げた。
「どうやら……これは俺を選ばなかったらしい」
一片の未練もなく、ヒーロは最高の変身装置をナツミに向かって投げた。ナツミは一瞬驚いた後、優しく微笑んだ。神聖なエネルギーが即座に共鳴し、彼女を威厳に満ちた神々の神の戦士へと変えた。
並行世界のヒーロは呆然と観察していた。彼はその装置がどう機能するか知っていたからこそ、現在の本体が一度もボタンを押さなかった行動に疑問を抑えきれなかった。
「なぜそんなことをした?」
現在のヒーロは平然と答え、自信に満ちた目をした。
「俺がこの世界で勝者になれた理由を知っているか? 俺の隣にはいつも仲間がいたからだ」
現在の本体を見て、並行世界のヒーロは小さく微笑んだ。彼は低い声で、どこか敬意を含んで言った。
「好きにしろ」
その直後、現在のヒーロは古いヴェムジャス・チェンジを未来のヒーロに向かって投げた。
「これを使え」
未来のヒーロは肩をすくめ、口元を上げて受け取った。
「いいだろう、少し体を温めてやろうか!」
本格的な戦いが始まった! 戦いと言っても、今や局面は完全に一方的な蹂躙に逆転していた。
太陽神の戦士が日食の戦士に真正面から突っ込んだ。星々の力を帯びた攻撃が首領を完全に薙ぎ倒し、腰のサンドライバーとサン・チェンジを叩き落とした。
谷口は実の息子の足元に崩れ落ち、全身が痛んだ。
太陽神の戦士は冷たい目で彼を見下ろした。
「見てみろ。お前の欲望がどれだけの命を奪ったか」
谷口は両脚を震わせ、冷たい汗を流した。彼は顔を上げ、衝撃を受けた声で言った。
「お前は……父親を殺す気か!?」
「いや」太陽神の戦士は首を振った。「お前が本来属する場所へ帰れ」
そう言って、片手で谷口の襟を掴み、もう片方の手で空中に空間の門を引き裂いた。彼は容赦なく谷口を中に投げ込んだ。
彼が属する場所……それは、過去に宇宙人に殺された瞬間だった。
別の角で、神々の神の戦士となったナツミが、スペクターの戦士の姿をしたサカトナを容易に圧倒した。神聖なエネルギーがあらゆる抵抗を押しつぶし、奴の技術装甲を焼け焦げさせ、次々と焼き尽くした。
彼女が止めの一撃を放とうと手を上げた瞬間、一人の影が前に飛び出し、彼女の前を防いだ。
それはサトウ――天空神の戦士だった。
ナツミに手を出させず、サトウは自ら空に何千もの空間の門を開いた。十万本の光の剣が同時に現れ、雨のように降り注ぎ、サカトナの位置を貫き、変身装甲を完全に破壊し、炎の海の中で体を消し飛ばした。
ナツミは戸惑ってサトウを見た。「何をするの? 私は助けを頼んでいないわ!」
サトウは神聖な装甲の中で静かに立ち、背を向けて低い声で言った。
「子は……親を殺してはならない」
瓦礫と炎に包まれた中で、サカトナの体は焼け焦げ、最後の息の中で悶えていた。しかし、致命傷の肉を裂く痛みをものともせず、彼は狂ったように首を反らして笑い、掠れた声を戦場に響かせた。
「ハ……ハッハ……素晴らしい……」
「ついに見た……神聖な力を」
死の直前の瞬間まで、科学者の濁った目は病的な狂信の光を宿し、完全に息を引き取るまでそれは消えることがなかった。
サトウは静かに歩き去り、炎に包まれた戦場の中でナツミを呆然と立たせた。
同時に、反対側では星神の戦士も母親――月食の戦士との決着に入っていた。何千ものエネルギー銃口が空間の門から現れ、空を切り裂き、一斉に射撃して破壊の光の雨を降らせた。
無数の光線が体を貫き、装甲が粉々に砕けた瞬間、ユキは静かに目を閉じた。最後の思考が心の中で渦巻いた。
『自分のエゴのために……もう一度だけ娘に会いたいという思いから、母親は宇宙人どもと手を組むことを受け入れた。娘を奪ったあの連中と。母親は科学者サカトナの元を訪れ、いつか彼の発明が娘との再会を叶えてくれることを願った。そして谷口に出会い、そこから月食の戦士となった……ユカ、母親はお前を責めないよ……母親は死ぬべきなのだから』
ユキは苦々しく微笑み、消えていく光の中に崩れ落ち、一人の荒廃した母親の悲劇を閉じた。
第9章:浄化、別離、そして約束
エネルギーの嵐が過ぎた後、周囲の空間は静寂に沈んだ。
月神の戦士が瓦礫の戦場の中央に立ち、六つの黒い影が四方から彼女を取り囲んでいた。
スピリット、ゴースト、ファントム、レイス、アパリション、ポルターガイスト――宇宙人が偽の装甲をまとった六人の戦士が一斉に突っ込んできた。
一対六。
圧倒的に不利な状況に見えたが、ユイの息は不思議なほど落ち着いていた。
月の銀の光が潮のように彼女の周りを渦巻いた。彼女は一歩も引かなかった。彼女の一歩一歩が、裂けた地面に冷たい光の跡を残した。
六人の敵が一斉に襲い掛かってきたが、誰一人として彼女の防御を崩すことはできなかった。攻撃が解かれた瞬間、正確で圧倒的な反撃が返ってきた。月神の力の下で、彼らの装甲は徐々にひび割れ、剥がれ落ちていった。
戦いは予想を遥かに超えて早く終わった。
わずか数手で、六人全員が地面に跪かされた。装甲は完全に粉々になり、邪なエネルギーは砕け散り、歪んで醜悪な宇宙生物の正体を現して、彼女の足元で息を荒げていた。
その中で最も強かったスーパーノヴァが体を起こし、紫の血が口元から滴った。彼は冷笑し、挑発的な声で言った。
「もっとやれ! 実力があるなら、俺たちを殺してみろ!」
その時、上空から眩い金色の光が降ってきた。
太陽神の戦士が凄まじい速度で着地した。余計な言葉は一切なく、彼は右手を高く掲げ、特殊能力を直接起動した。
「逆進化」
風を切り裂くキックが千鈞の力で放たれ、敵の中心を直撃し、宇宙生物の実体と人間の肉体を強制的に二つの部分に分離させた。
太陽神の戦士は冷たく踵を地面に下ろし、鋭い目で見下ろした。
「まだ傲慢か?」
相手が状況を把握する前に、彼は破壊のエネルギーを帯びた必殺の一撃を放った。神聖な光が燃え上がり、スーパーノヴァの胸を貫いた。彼はその場で死に、瞬く間に灰と化した。
太陽神の戦士は平然と構えを解くと、冷たい声が静かな空間に響いた。
「お前らは神聖な装備の踏み台にしかなれない」
その残酷だが徹底的な効果を見た他の神の戦士たちもすぐに倣った。「逆進化」の技を起動する音が空間中に響き渡った。破壊の力を帯びた一撃が次々と降り注ぎ、戦場に残った宇宙人の首領たちを一掃し、完全に消滅させた。
ヴェムジャスの戦士は装甲の埃を払い、街中にまだ溢れている雑兵の群れを見た。彼は眉を寄せ、警告の声を上げた。
「首領たちは倒したが、宇宙人の雑兵はまだ大量に残っている」
そう言って、「現在のヒーロ」は谷口から回収したばかりのサンドライバーとサン・チェンジを拾い上げ、きっぱりと腰に装着して変身を起動した。眩い光が彼を包み、完全に太陽の戦士へと変化した。
太陽の戦士が一歩進み、炎のような光輪をまとった。ヒーロは仲間の方を振り向き、断固とした声で言った。
「じゃあ、一緒に奴らを一掃しよう!」
その時、太陽神の戦士が手を上げて制止し、平然とした声で言った。
「必要ない」
彼は後ろを振り向き、穏やかに呼んだ。
「ナツミ、こっちへ来い」
ナツミ――まだ神々の神の戦士の姿のまま――が進み出て、少し驚いた。
「どうしたの?」
太陽神の戦士は微笑んで合図した。
「今こそ、神々の神の本当の力を使え」
ナツミは頷いた。彼女は空中に浮かび上がり、空に向かって腕を高く掲げた。
その瞬間、創造主の最高エネルギーが爆発した。神聖な光の波が惑星の表面全体を掃討し、大規模な浄化を実行した。残っていた全ての宇宙生物が瞬く間に灰と化した。
それだけでは終わらず、ナツミは手を振って空間を引き裂いた。原初の力が地球を二つの別個の実体に分離し、並行世界のヒーロが住む地球を本来の時間の流れに戻した。同時に、その浄化の波は空間の裂け目を通って伝播し、未来のヒーロが住む地球の宇宙人の存在を完全に消し去った。
エネルギーの波が収まると、ナツミだけが神々の神の戦士の姿を維持し、他の全員は変身を解除した。
サトウは口を開け、眼前の光景に目を見開いた。
「本当に……」
隣のユイもまだ衝撃から立ち直れず、呟いた。
「これが……創造主の力なの?」
ユカはヒーロの方を振り向き、疑問に満ちた目をした。
「ねえ兄さん……どうして兄さんは太陽の戦士になって、谷口のおじさんだけが日食の戦士になったの?」
ヒーロは手の中の装置を見下ろし、平然と答えた。
「あいつがこのサン・チェンジのボタンを押さなかったからだ」
サトウは呆けて眉を上げ、口を挟んだ。
「あいつ、そこまで馬鹿だったのか?」
「普通だよ」ヒーロは答えた。「あいつが作った装置じゃないんだから。あいつが救われた時間軸では、並行世界のヒーロの傍で普通に暮らしていた。あいつは彼が変身装置を完成させるのを待って、奪っただけだ」
この時、未来のヒーロと並行世界のヒーロの周囲の空間が揺れ始めた。
上空から、神々の神の戦士の姿のナツミが静かに手を振り、時間の流れを正しい軌道に戻すための大きな空間の門を開いた。
未来のヒーロと並行世界のヒーロの体が徐々に薄れていった。時間の流れは修復され、今こそ彼らが本来属する場所へ帰る時だった。
並行世界のヒーロは口元を軽く上げ、現在の本体を見た。
「この賭けは、俺の勝ちだ」
未来のヒーロは手の中で強く握ったヴェムジャス・チェンジを見下ろし、小さく微笑んだ。
「これを記念に持っていくよ」
その後、二人は順に空間の門へ足を踏み入れた。光が彼らの体を飲み込み、門が徐々に閉じた。
空間が元に戻った。静けさを取り戻しつつある街の中に、若い仲間たちだけが残された。
一週間後。
静かな海岸。波が灰色の岩に寄せては返す音がしていた。ヒーロは一人でシャベルを持ち、湿った地面に小さな穴を掘っていた。十分な深さになると、彼は立ち止まり、上着のポケットから小さな装置――アース・チェンジ――を取り出した。
彼はそれをしばらく見つめ、起動ボタンを押した。穏やかな青い光が装置を包んだ。ヒーロはそれを穴の底に投げ込み、丁寧に土を被せた。
体を起こし、広い海を見つめ、足元の惑星に語りかけるように囁いた。
「自分を守れ。俺はあと百年も生きて、お前を守り続けるわけにはいかないからな」
海風が強く吹き、砂粒を巻き上げた。ヒーロは背を向け、遠くへと歩き出した。彼の後ろで、埋められた土の下で、アース・チェンジの青い光が静かに脈打っていた――地球と、かつてそれを守った者との間の、静かな約束のように。




