第22話 さくっと救出、ついでにお宝げっちゅ。
「では聖女を救出してきます、ここで待っていて下さいね」
「空中でですか」「はい、大丈夫と思いますが朝まで帰ってこなければ」
「ご当主様に報告を」「父上に?! まあ、そこまでの大事になるか、うん」
改めて考えると、
相当な無茶をやってるんだなあ、
たとえ全魔法を使えるとしても七歳児だ。
(イシタさんも不安なはず)
俺は一瞬、姿を見せる。
「心配しないで下さい、あとイシタさんはあくまで脅されて来てるだけですから」
「……そう言っていただけると、では救出後にグラン坊ちゃんの正体を」「それは断る」
「やはりあるのですね、正体が」「正体があるかどうかも含めて、言えない秘密ということで、じゃ」
再び姿を消し、
おそらく山賊アジトの入口である洞窟へ向かう、
門番の様子からして間違いないな、さて、エリアマップを……
(意外と複雑な洞窟だな)
隣国がこっそり炭鉱か何かにしていたのだろうか、
もしくは元ダンジョンか何か……エリアマップを見る、
うん、奥で固まって眠っているな、他にも部屋みたいな行き止まりが、ちらほら。
(一応は扉もあるが、隙間だらけで覗ける)
ムサい男ばっかりだ、
さらに下へ行く坂道を進む、
武器類もそこそこあるな、斧とか槍とか。
(あっ、犬が飼われてる)
鼻でクンクンしている、
バレる前にここは……!!
(スリープ!)
無詠唱で睡眠魔法、
うん、ぐっすりだ。
(これ、魔物だとやっぱり気付かれちゃうか)
姿が見えないだけだからね、
ええっと、やけにぴったり閉じた扉が、
隙間も塞がれているがマップを見ると奥に六人。
(ここは……テレポート!)
入るとそこには!!
(女山賊だあああああ!!!)
寝相が悪いし不衛生だ、そのうえ……
うん、どいつもこいつも、ぶさい、いや止めておこう、
おそらくこんなのでも需要は、ひどいこと言うなよ俺!!
(隣りに部屋が、いや表の通路からも行けるが)
ということはだ、
中は……いたいた、山賊のボス、
お頭っていうやつかな、うん、でけえ、オークみたい。
(奥には金貨がじゃらじゃら積み重なっている)
でも今はそれが目的じゃない、
通路に戻って更に更に深く奥へ、
ちゃんと水場もあるんだな、やがて……
(一番奥まった所に人の反応が!)
見張りまで居るな、
うとうとしているけど……
入るにはやはり鍵か、だがテレポートでスルー、っておっと!
(危ない、地面を踏むと鈴が鳴るようになってた)
間一髪、
フライの魔法で避けた。
(厳重だ、山賊のくせに! と、いうことはぁ……)
更に更に奥へ浮きながら行く、
これなら何か踏んだりしないだろう、
そうこうして行き着いた先は……牢屋だ。
「あら、どなた?」
うっわ気付かれている!
見るとボロボロの麻袋で覆った服?
の少女が奥で丸まっていた、が暗くてよくわからない。
(檻の手前では、女性看守っぽいのがヨダレ垂らして熟睡してら)
おそらくこれが聖女、
サーチを使うと……うん、間違いない、
確かに『クリス=ヴィクトワール=バシュロナルカン』と表記されている。
(さて、どうしようか)
一応、看守女性をスリープっと、
これでそうそう目は覚まさないだろう。
「……クリスさんですね、助けに来ました」
「まあ、つまり、どういうことでしょうか?」
「ええっと、とにかくここは不衛生です、助け出します」
テレポートって一緒には出来ないかな、
パーティーテレポートってまだ仲間でもないしな、
何か使える魔法は……同じ欄で『アナザーワールド』ってあるな、なんだこれ?
(魔力消費量でけえ)
まあいいや、
まずはテレポートで中に入って、っと……
「失礼します」
持ち上げよう、
うっわ軽い大丈夫かこれ、
同い年くらいのはずだが……そしてテレポート!
(よし、成功した!)
イシタさんの目の前だ。
「きゃ、空中に人が!」
あっそうか、
聖女様だけ見えているのか。
「抱かえていてください、
僕は忘れ物が無いか見てきます、
クリスさん、何か持ってきて欲しいものは」「いえ特に」
再びさっきの牢屋内へ、
うん、特に彼女に必要そうな所有物とか無いな、
ということで親玉の部屋へ再びテレポートして、っと……
(アイテムボックス!)
ここへ金貨の山を、
音を立てないように慎重に……
姿を消しているとはいえ、金貨が浮いて消えるのが見られたらまずい。
ジャラ……
(!!!)
「……うっ、ういーーーっ……」
ボリボリと腹を掻いて寝返りか、
まあいいや、欲張らず適当な量で引き上げよう、
全部だと外部犯行を疑われるが三分の一程度なら内部を疑うだろう。
(聖女が消えたら、それどころじゃないか)
そうしてそこそこ、
まあま、それなりの金貨を魔法『アイテムボックス』へ収納し、
聖女クリスさんをお姫様抱っこするイシタさんの目の前に戻ったのだった。
(今度は姿をすぐに見せて、っと)
俺をちらっと見るが、
視線はクリスさんの方へ戻す。
「坊ちゃま、彼女」
「え? あっ、これは……」
月明かりに照らされた聖女の顔、
俺は一気に血の気が引いた、なぜならそれは……
(目が……両目が、無い)




