Chapter15最後の敵ドン・ゴブリアン
ラキが一歩前に出て、困惑した声で尋ねる。
「隊長! 一体何が――」
ジェイ・カーターは全員を見回し、重い口調で告げた。
「三人の軍閥の正体が、すべて判明した」
その瞬間、ターヘル・アナトミアが椅子を蹴って立ち上がり、ジェイの襟首を強く掴んだ。
「名前を言え! 私の家族を殺した男の名前を!!」
ジェイは静かに、しかし力強くターヘルの手を外した。
そして、全員をまっすぐに見据え、告げた。
「最後の軍閥――ドン・ゴブリアン」
その名を聞いた瞬間、ニキとラキの背筋に冷たいものが走った。
「ドン・ゴブリアン……スティール・センチネルの最後のリーダー……」
ジェイは強く頷いた。
「そうだ。ボイド戦争で数多の街を焼き払い、無数の命を奪ったテロリスト」
ターヘルは一瞬凍りつき、次の瞬間、ジェイを突き飛ばすように横を通り抜け、自分のアンチタンク・ガトリングライフルを掴み上げた。
「待て、ターヘル!」
ジェイの制止も聞かず、彼女は走り出す。
ウォー・エンジェルスの全員が、その後を追った。
格納庫ベイへ突入。
ジェイはラキに鋭く指示を飛ばす。
「ラキ、アレクサンドリアを起動! 急げ!」
「了解!」
ラキが操縦席に飛び乗り、エンジンを始動させる。
ニキ、ターヘル、ジェイが次々と乗り込み、固定ベルトを締める。
「全員、しっかり掴まれ!」
ジェイの声と同時に、STSアレクサンドリアのハッチが閉まり、推進エンジンが最大出力で咆哮した。
機体は格納庫を飛び出し、夜空を切り裂いてコムリンク・タワーへと急行する。
ターヘルは窓辺に立ち、拳を固く握りしめていた。
瞳には、涙と怒りと――そして、ようやく見つけた答えが宿っていた。
ドン・ゴブリアン。
夫と息子を奪った男。
五年前、自分を救ったジェイが狙撃したはずの男。
今、再びその名が浮上した。
――今度こそ、終わらせる。
STSアレクサンドリアは、稲妻のような速度で夜のオナルムス市を駆け抜けていく。
コムリンク・タワーの最深部、厳重な独房ブロック。
ダーク・ファーティルとディネックス大佐は、それぞれのセル内で静かに時を待っていた。
レーザー拘束具が手首を焼くように締めつけ、動きを封じている。
突然、重厚な扉が開く音。
ゆっくりとした、確かな足音が廊下に響く。
ファーティルが薄く笑みを浮かべ、低く口笛を吹いた。
その合図に、ディネックス大佐がゆっくりと顔を上げる。
闇の中から現れたのは、全身を黒い装甲で覆った巨躯――ドン・ゴブリアン。
赤く輝く光学センサーが、二人の旧部下を冷たく見据える。
ゴブリアンは無言で手首のデバイスを操作。
二人のセルのレーザーバリアが瞬時に解除された。
ファーティルとディネックス大佐は、拘束具を力任せに引きちぎり、セルから歩み出る。
ゴブリアンはジャケットの内側から、二挺のエクスプローシブ・フェイズ・ピストルを取り出した。
さらに背後のラックから、エクスプローシブ・フェイズ・ライフルを二丁。
二人は即座にそれを受け取り、銃身をチェックする。
「タワーの警備を一掃しろ」
ゴブリアンの低い命令に、二人は邪悪な笑みを浮かべて頷いた。
廊下を進むファーティルとディネックス大佐の銃声が、すぐに響き始める。
警備員たちの悲鳴と爆発音が、タワー内にこだました。
一方、ゴブリアンは一人、静かに最上階――評議会室へと向かう。
扉を蹴り飛ばし、室内へ踏み込む。
評議会のメンバーたちが驚愕の表情で振り返る間もなく、ゴブリアンは両手のピストルを構えた。
青白いフェイズ弾が連続で放たれ、爆発的な衝撃が部屋を埋め尽くす。
評議会のメンバーたちは、一瞬にして血と肉片に変わった。
ゴブリアンは無表情で手首のコミュニケーターを起動。
「スティール・センチネル、全軍。オナルムス市下層より攻撃開始」
その命令と同時に――市内の下水トンネルが次々と爆発。
無数のスティール・センチネルが地中から噴き出し、一般市民へ向かって無差別に攻撃を開始した。
フュージョン・イコライザー・ライフルが火を噴き、街路は瞬く間に地獄絵図と化した。
オナルムス警察部隊が急行するが、センチネルの火力は圧倒的。
装甲車が溶け、警官たちが次々と倒れていく。
ドン・ゴブリアン、ファーティル、ディネックス大佐は、タワーの正面玄関から堂々と歩み出た。
ゴブリアンは満足げに笑い、通信を続ける。
「東部戦線を制圧せよ。街は我々のものだ」
その時――上空で、鋭いミサイルの警報音。
ゴブリアンが顔を上げると、SSEイーグル艦隊が急降下しながら、ボルテックス・バレル・ミサイルを雨のように投下していた。
地表のスティール・センチネルが、次々と巨大な爆発に飲み込まれる。
一機のイーグルが低空でホバリングし、ハッチが開く。
そこから、精鋭部隊が一斉に跳降。地面に着地した兵士たちは、即座に戦闘陣形を取った。
先頭の兵士が、マスクを外す。現れたのは――トーマス・ブルックス。
ゴブリアンはそれを見て、ゆっくりとピストルを構えた。
口元に、懐かしげな――そして、冷酷な笑みが浮かぶ。
「……久しぶりだな、トーマス・ブルックス」
旧友同士の銃口が、互いを捉える。
オナルムス市の夜空に、再び戦争の火蓋が切られた。
ウォー・エンジェルスが到着するまで――あとわずか。
決戦の舞台は、完全に整っていた。




