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閃光の瞬  作者: KK9996
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エピローグ 動き出した未来と見えた星空

企業都市で、借金を背負った剣士が日本刀と知略で成り上がっていくSFバトルものです。

テンポと引きを重視して書いています。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

エピローグ


「――誰がお金払ってくれたんだろ」


「――さぁ?でも、どっかの大金持ちって噂だ」


第6地区では、誰もみたことがない種類の忙しさが始まっていた。


誰かが、全員分の“市民登録料”を払い、正規の住人としてサービスを受けることが可能になった。


スラムを出て、都市にアパートを借りる者、スラムに残り、スラム復興に励む者。


反応は様々だが、皆に共通してるのは、ヒートシンクの「正規の住人」として登録されたこと。


「これで良かったんですよね」


電子が遠目にそれらを見ながら語った。


「ああ、良かったんだと思う」


瞬が風に髪をなびかせた。

夏の夜、爽やかな風が吹いている。

そんな風に乗せて、あいも髪を揺らす。


「でも良かったの?瞬、本当に名乗り出なくて」


「ああ、ここに必要なのは金であって、神様じゃなかった。これでいいんだ」


背後には、ビル群の明かりが夜を焼くように光っている。


「それに」


「それに?」


電子とあいが頭を傾げた。


「神様をやるにも、やり切る自信がねぇ。だから、これでいい」


そんな瞬に、スラムの小さな女の子が寄ってきた。


「…ねぇねぇ、お兄さん。お兄さんたちも第6地区の人?なら、誰かが市民登録料を払ってくれたんだよ」

「もう水運びや物乞いはしなくていいんだって、明日から学校に通うんだ!」


あいがしゃがんで女の子の髪を撫でる。


「知ってるよ。優しい誰かが払ってくれたんだよね」


電子もしゃがみ、目線を合わせた。


「学校に行ったらいっぱい勉強して、いっぱい友達を作って、新しい未来を作ってね」


「新しい未来?」


女の子は頭を傾げた。


「その話はまだ難しいだろ…」


瞬が腕を組んだまま言った。


「ばいばい」


「ばいばい」


女の子が母親と合流し、都会のビル群に消えていった。


次に来たのは、スラムのギャング数名だった。


「瞬…あれ」


あいと電子が瞬の後ろに隠れた。

また戦闘になる…。

すると、ギャングは意外なことを口にし始める。


「スラム全員分の登録料払ったのって、あんただろ。剣士。大体知ってんだ…ありがとよ」


そうれだけ言い残して、彼らも都会へと消えて行った。


…遠目に、壊れた屋根を修理している住人が見えた。

浄水器を人工川に運び込む住人も見える。


「はははっ!」


瞬が笑い出した。


「どうしたの?」


電子とあいが尋ねた。


「いやね、正直ちょっと“救った気”になってたんだよ」

「でもそれは間違いだった。俺は第6地区を救ったわけじゃない。救う“きっかけ”を作ったにすぎないんだ」


電子とあいが興味深そうに聞き入る。


「本当に第6地区を救うのは…彼ら自身だ。これから、彼らが新しい第6地区を作っていんだ。俺は“きっかけ”を与えただけ」


「うん!」


「はい!」


あいと電子が返事をした。


瞬が呟く。


「彼らと一緒に、新しい未来を…」


そして、瞬はふと思い出した。


「そういや、ドクターキセノンと江田への借金を返さないとな」


3人は第6地区を見届けたあと、返すべき借りを返しにまわった。


最初に来たのはドクターキセノンの診療所だった。


散らかった机に、瞬が札束をどんと置く。


「…全く。こんなに早くなくてもよかったのに」


ドクターがぼやいた。


『速報です。都市防衛の要であった企業Sランク1位傭兵、通称“ピリオド”の死亡が確認されました』

『都市警備局ならびに各企業上層部は、事実確認と今後の防衛体制の再構築を急いでいます』


ドクターの机の上のテレビが喋っていた。


「上の連中はこのことで大騒ぎだ」


そう言ったところでドクターキセノンが気づいた。


「ピリオドが死んですぐ、お前さんは大金を持って来た…まさかとは思うが」


メガネ越しに、瞬の顔を見る。


「やめておこう…聞かない方が長生きできそうだ…」


だが、ドクターはまた気づいた。

いつも瞬の後ろにあるはずの、可愛い顔がない。


そこで全てを察したのか、返済された借金の束の中から、1枚だけ現金を抜き取った。


「…これ、あいつの花代にでもしてくれ」


瞬は少し固まったあと、その金を受け取る。


「…ああ」


瞬が診療所を出ようとした時、ドクターが呼び止める。


「閃野 瞬」


また中指を立てていた。


「ちゃんと調整に来いよ」


「ああ!」


次に来たのは江田の工房だった。


瞬はまた作業台に札束を雑に置く。


「蜘蛛脚のメンテ代と強装弾の費用がまだだったろ」


江田はそれを、要らないとばかりに瞬に突き返す。


「依頼人が生きて帰ってくることが俺の報酬なんだ…だから、要らない」


そう言いながらも、座愛がいないとこに気付いて、すぐに動揺した。


「あいつは?」


「…あいつのおかげで、俺はここに立ってる」


瞬がそう答えると、江田から力が抜けた。

その隙に札束を押し付けた。


「すまねぇ…少し泣く。どっか行け」


そんな江田に、瞬は親指を立てた。

すると、江田も少し力なく親指を立てた。


「…また、装備が必要になったら来い。…今度は誰も死なせねぇ」


…工房を出たあと、しばらく誰も口を開けなかった。


「ねぇ、瞬」


あいがぴょんぴょん跳ねながら聞く。


「“あの約束”…やるなら今じゃない?今日は晴れだし」


「…ああ」


瞬は手の中の座愛の遺骨で作ったお守りを見る。


「…電子。実行ファイルは生きてるのか?」


「はい。いつでも行けます」


「…なら、全員、アパートの屋上に集合だ」


…3人でアパートのエレベーターに乗る。

1人いないだけで妙に広く感じた。


そして、アパートの屋上。


綺麗な手すり、ピカピカの貯水タンク。

このアパートは、スラムに近く、ギャングの争いが多いからこそ、安く買えた良物件だった。


屋上からも第1地区の摩天楼がよく見えた。

相変わらず、明かりで夜を白く焼いている。


瞬にはある作戦があった。


「電子、例の実行ファイルで、街の外照明だけ落とせるんだな?」


「はい。建物内や病院といった重要な電気を落とすことなく、あのやたら明るい外照明だけ落とせます。ただし、30秒から1分程度です」


電子が右手の端末を構えた。


「実行するなら、指示を」


「ああ、頼む…」


だが、電子もあいも反応しない。


「どうした?」


電子が答える。


「締まりませんね。瞬と言えばいつものあれじゃないと…」


あいも頷いていた。

瞬が少し恥ずかしそうにする。


「はぁ…そういうことか」

「じゃ、行くぞ…」

「…今だ電子!明かりを“つけろ”!」


「了解!」


その瞬間、音を立ててヒートシンクの外照明が落ちた。


暗闇が走る。


すると、夜空に星が浮かんできた。

キラキラと宝石のように輝く星が、瞬たちに降り注ぐ。


「うわぁ…あ、見て!流れ星!」


あいが両手を合わした。


「何を願ったんだ?」


瞬が尋ねた。


「“こんな時間が続きますように”って」


…今にも落ちて来そうな星空。


「ログや数字で見てきた未来が、初めて本物に見えます」


「…私も、今度は誰かに与えられるだけじゃなくて、未来を作る側に回りたい」


そんな星空を眺めて、瞬は座愛の遺骨のお守りを握りしめた。


「見えたぜ、座愛。星空だ」


星は、変わらずそこにあった。

それを見上げる人間が変わっただけだ。


――閃光の瞬 第一部 完。



読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、次話も読んでいただけると嬉しいです。

感想・ブックマーク・評価、とても励みになります。


高評価が多い場合、続編の執筆を検討しております。

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