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福徳小学校の七不思議  作者: スネオメガネ
怪3 小さきモノ
13/35

遭遇

 階段を見上げるが、誰も見えない。


 あの時とまったく同じだ。声の高さから、おそらく低学年の生徒だと思われるが、その痕跡は階段からは見つけられなかった。


 私は、階段を登り、2階にたどり着いた。


 理科室、家庭科室を見て回るが、誰もいない。反対側の階段に辿り着く。

 前回は、こちらの階段から、家庭科室、理科室と順に見て3階に行ったが、今回はもう一度2階を見てみる事にする。


 篠宮少年は、何も言わずに着いてくる。


 私が踵を返し、再び家庭科室の方へ向かうと、再び声が聞こえた。甲高く、早口だったが、確かに『ゲッ、モドッテキタ』というように聞こえた。


 私は、思わず篠宮少年を見る。


 篠宮少年は、口をしっかりと結び、無言で頷き、週番用の鍵の束の中から、家庭科室の鍵を探しだしていた。

(本来、週番は家庭科室や理科室の開錠、施錠は行わないが、帰りの時に万が一開いてたら締める為に、鍵束の中には常に入っている)


 家庭科室の鍵を素早く開けて、扉を開ける。


 扉が開く音が誰もいない部屋に響く。


 確かにここから聞こえたはずなのだ。


 私達は、部屋の中を慎重に進み、部屋の中央辺りに来たところで、再び声が響いた。


『ニク』


 後ろから聞こえてきた。


 振り向くが誰もいない。


『ニク』


 また、後ろから聞こえてきた。


 振り向くが誰もいない。


「…先生、あれ…」


 篠宮少年が床を指刺していた。


 視線を下に向けると、それはいた。


 トンガリ帽子を被り、童話の挿絵で見るような村人の服装をした小さなおじさんが立っていた。

 サイズは、親指くらいだろうか?


『ニク』


 再び、声を出すちっこいおじさん。

 その声に反応するように、どこからか同じようなおじさんが集まってくる。

 もしやと思い、振り向いて下を向くと、そこにもちっこいおじさんの群れがいた。


『ニク』


 さっきから、同じ言葉を繰り返している。ニク?私達の事だろうか?肉?


 考えていると、ちっこいおじさん達は一斉に走り寄ってきた。思った以上にすばしっこい。


 あ!


 思った時には遅く、ちっこいおじさん達は、足に噛み付いてきた。


 痛…くない。


 チクっとする程度だった。


『ゲア〜ァ〜ア゛』


 思いっきり、足を振り抜くと、ちっこいおじさん達は、奇妙な悲鳴をあげながら、吹っ飛んだいった。


「全然、大した事ないけど、こいつら…、私達を食べようとしてる?」


 私の言葉に篠宮少年は、ブンブンと首を縦に振っていた。


 振りほどいても、振りほどいても、ちっこいおじさん達は、めげずに噛み付いてくる。


 知能は低そうだ。


 右足を振っては、左足を振る。まるでダンスのようだ。

 ふと見ると、篠宮少年も同じように踊っている。


 こいつらはなんなんだ?


 沢田先生のいう小人って奴だろうか?

 ネズミを運んでいたと聞いた時に、肉食だと何故気付かなかったのか。こんな事なら、深追いはしなかったのに。


『ゲア〜ァ〜ア゛』


 相変わらず、吹っ飛んでいく時に、奇妙な叫び声が響く。


 だんだん馬鹿らしくなってくる。


「…そろそろ戻りましょうか?」


 篠宮少年にそう言って、小人達を無視しようとした時に、視界の隅にとんでもないものが見えた気がして、慌てて横を見た。


 場所が悪すぎた。


 5人くらいのおっさん達が、一生懸命、包丁を担いでいた。包丁の柄と背の部分を担ぎながら、こちらに近付いてくる。

 包丁が重いのか、単体の時程の素早さがない。


 だが、今まではチクッで済んでいたものが、あんなものを持ち出されては、ただで済むわけがない。


 足に必死でしがみついているおっさんのうちの一人をワシ掴みにする。


「動くな!」


 できるだけ、ドスが効くように低音を響かせる。


 途端に、ピタッと止まる小人達。包丁組もしっかりと止まっているのを確認する。


 どうやら、言葉は通じるようだ。


「話がしたい。代表者前へ!」


 すると、ちっこいおっさん達は、少しざわついた後で、一人のおっさんが前へ出た。


『ハナセ』


 この『ハナセ』は、『話せ』なのか『放せ』なのか、わからない。わからないので、勝手に『話せ』と解釈しよう。


「お前らに危害を加える気はない。だから、解散しろ。解散したのを確認したら、こいつは解放してやる」


『ニク』


 会話になっていない。


「3秒待ってやる。3秒経っても解散しないようなら、こいつは、握り潰す」


『ニク』


「い〜ち」


 握っているおっさんから、温かい汁が出て、右手が湿る。


「に〜ぃ」


 湿ったおっさんが、暴れ始める。


「さ〜ん」


 3つ数え終わっても、おっさん達は解散する素振りを見せない。


「潰す!」


 正直、どうすべきか迷ったが、ここで日和ったら、相手が引く事はなくなるだろう。気は進まないが、見せしめが必要なようだと考え、心を鬼にして、右手に力を込める。


 スポン!


 湿ったおっさんが、握った手をすり抜けて、上に飛んでいった。


 人質のおっさんが、失禁したのと、暴れていたせいで、力を入れた拍子に、手の中を滑って飛んでいったのだ。


 あっ。


 しまったと思ったと同時に、包丁組が動き出した。休憩を挟んだせいか、さっきよりも素早い。


 …なんてこった。

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