対決
篠宮少年だけは守らなければ。
そう思い、包丁組と篠宮少年の間に陣取る。さっさと包丁を蹴飛ばして、逃げる事も考えたが、足元で包丁を振り回されたら、蹴るのに失敗した時に、健を切られるかもしれない。そうなると、篠宮少年を守るのに支障が出る。
ちっこいおっさん達は、さっき捕まったのを教訓にしたのか、足に纏わり付くことはなくなった。
だが、相変わらず、周りをしっかりと固めている。
逃げ出そうとすると、何体かは踏み潰す事になりそうだった。
そう考えると、昔、夜中にトイレに向かう時に、素足でゴキブリを踏み潰した時の感触を思い出し、鳥肌が立つ。
とりあえず、篠宮少年の肩を抱き、一歩、後ずさる。
後ろにいたおっさん達が、それを避けるように包囲網が動く。
包丁組は、目の前でこちらの様子を伺っている。
さて、どうしよう。
足をやや開く。
包丁組が前進する。
右足を払う振りをする。正確には、振りではない。なんの問題もなければ、そのまま包丁を払おうという気持ちだった。
その動きを見た包丁組が、刃を寝かせた。
そのまま、足を払うと包丁の刃に足の内側が、刺さる形だ。
なるほど。
右足を払うのをやめて、床に右足をつける。そのまま、今度は右足を軸に左足を払う形を取る。
包丁組は、慌てたように包丁を動かして、逆側に倒す。
それを見て、左足を止め、今度は右足を払う形にする。
おっさん達は、慌てながら、包丁を逆側に倒そうとする。
…大変そうだ。
今度は、そのままゆっくり払う形を取る。
包丁組は、少し安心しているように見えた。
残念。
途中で、軌道を変え、速度を上げて、上から包丁の腹を踏みつける。
失敗しても、スニーカーの靴底なら、なんとかなるかもという思いから、試してみたのだ。思っていたよりも、上手くいった。
『ゲア〜ァ〜ア゛』
包丁の下敷きになって、踏み潰された包丁組のおっさん達が、奇妙な悲鳴を上げる。
そんなに力を入れてないんだけどなぁ。
そのまま、しゃがんで包丁を拾い上げる。
根性のあるおっさん二人が、包丁にぶら下がっているので、包丁を軽く振る。
『ゲア〜ァ〜ア゛』
奇妙な叫び声を上げて、吹っ飛ぶおっさん二人。
お疲れ様。
「解散!」
そう声を上げて、周りにいたおっさん達を、右足で払う。
『ゲア〜ァ〜ア゛』
奇妙な叫び声を上げて、吹っ飛んでいくたくさんのおっさん達。そして、それを見て逃げていく小人達。
それを見ながら、篠宮少年に声を掛ける。
「そろそろ生徒達が登校し始めてもおかしくない時間です。先に行って、児童玄関を開けてきてください」
そう言いながら、足を払っていく。
できた道を通って、篠宮少年は駆けていった。
それを見送った後、遠巻きに見ているおっさん達を睨む。
「もう二度と姿を見せるな!見かけたら、…潰す!」
そう言うと、残っていたおっさん達も逃げ出していった。
最後に『ニク』という声を残して…。
…やけに疲れた。
とにかく、これで3つ目か。
いつも、七不思議を体験する時、篠宮少年がいた事を思い出し、七不思議に好かれているのは彼の方じゃないだろうか?ということに気付いた。
まぁ、なんにせよ、今日も彼に初めて会った時に言われた言葉の根拠を聞き出せないだろう。
ため息を吐いて、家庭科室を出た。鍵を閉めようとして、鍵は篠宮少年が持っていた事を思い出し、職員室まで鍵を取りに行く事になった。
…なんだか余計に疲れた気がした。
篠宮少年は、最初の登校者が来る前に、児童玄関を開ける事に成功したようだった。
後日談。
その日以来、学校で一人になると、時々、『ニク』という言葉が聞こえるようになった。その度に彼らの奇妙な叫び声を思い出し、一人笑いするようになってしまった。
…まいった。
怪3完




