表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/29

買い出し

 弁当を作るための施設も借りられることが確定し、墓参りの日も決まった。

 今日は明日に迫ったその外出のための、弁当用の食材を買い出しに城下町の市へとやってきていた。


 城で出されている食材をわけてもらうという、かなり図々しいことも考えたが、ナルが市に行きたがっていたこともあり、こうして出てきている。

 ジョットとアキは仕事が残っているので、今ナルと共に買い出しにきているのはレイド、リディク、そしてアカリである。


 「さて、何を作るか」


 「参考までに、言わせてもらうとサンドイッチが良いですね」


 並べられている魚達をキラキラした目で見ているナルの横で、護衛であるリディクはアカリへそう進言した。


 「特にマスタードの効いたハムサンド! タマゴでも良いですけど」


 「誰もリディクさんには聞いてませんよ」


 レイドが淡々と言う。


 「まぁ、簡単だしいっか」


 アカリは気にしていないのか、了承した。

 と、そこで、ナルが隣の屋台へと移動して、売られている商品をじぃっと見る。

 それは三日月のように弧の形をした、暖かい地域の果物に最近城で茶菓子として出されているチョコをソースにしてかけてあるお菓子だった。


 「あ、チョコバナナだ」


 アカリの言葉に、知らずナルの口からもその名前が漏れた。


 「チョコバナナ」


 まるで串焼きの肉のように、木の棒が突き刺さりそれが持ち手になっているようだ。


 「ナルさん、食べます?」


 金には余裕があった。

 おそらくこの四人分の昼食代も含まれているのだろう。

 ちなみに、財布を握っているのはアカリだった。

 レイドの口添えもあって、管理を任されたのだ。


 「え、でも」


 「多目にお金は渡されてるんです。皆で食べましょう」


 そうして人数分、アカリが購入しレイドが念のために毒がないかチェックし、ナルに渡した。


 そうして、他の屋台を冷やかしたり必要なものを購入したりと歩きまわる。

 その度に、アカリとリディクは周囲を警戒していた。

 レイドはナルにぴったりとくっついて、何が起きても良いように、しかし素知らぬ顔で買い物を楽しんでいた。


 「気づいてますか?」


 アカリの言葉に、リディクが軽く顎を引いた。


 「お昼くらい食べたかったですねぇ」


 リディクの軽口に、アカリも同意する。


 「ですねぇ。ま、様子を見ているだけな感じですから、材料は買ったしお昼食べてから帰るってのもありっちゃありですけど」


 「ナルさんに何かあったら俺の首が飛ぶんですけど」


 「何かあっても大丈夫なように、俺達がいるんじゃないですか?」


 首が飛ぶことのないアカリはとってもあっけらかんとしているが、リディクには職務を遂行する責任がある。


 「あんたはいいな、気楽な手伝いで」


 少し嫌味を含んで言えば、アカリは得意気に笑った。


 「これでも、こういうことに駆り出されるのには慣れてるんですよ、俺」


 正直に言えば、とてもそうには見えない。

 たしかに貴族の女性の付き人として、外見だけなら合格だが、荒事に対処出来るようには見えない。

 まだナルの方が魔法も使えるし、動けるように見える。 

 しかし、この少女はあの邪龍が連れてきたのだ。

 外見に騙されてはいけない。

 

 「ナルさん、だいたいの物は買ったんで、お昼を食べて帰りましょうかね」

 

 アカリの言葉に、飴細工の屋台を見ていたナルはその言葉に従った。


 「なにか食べたいものはありますか?」


 「チョコケーキ!」


 それは主食ではなくおやつである。

 さすがにリディクが苦笑して、嗜めてくる。

 すると、今度は、


 「向こうでドンモノっていう料理を出してる屋台があったから、それが食べたいです」


 と、その屋台があるであろう方向を指差したのだった。


 「マジカヨ」


 少し棒読みで、アカリが呟いた。

 レイドが何故か呆れていた。


 「今更驚くことでもないでしょうに」



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ