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エピローグ

挿絵(By みてみん)



おはようございます、『リィカ・カグァム・レアンス』です。


ネルとの結婚生活も、早くももう二年目に突入しています。

相変わらず仲良しラブラブで、周りからよくからかわれちゃう。

この一年で色々な出来事がありました。

少しだけ、お話していきますね。





****************





今日も私の朝は、私を抱き枕にしながら寝ている旦那さまを起こす所から始まる。


絡め取られた腕をなんとか引き抜いて、ペチペチと彼の肩を叩く。

なおさらぎゅーーっと抱きしめられてしまいました。

て、手強い…



「旦那さま、朝だよー」

「いや…」

「今日は会議でしょう?」

「ぅぅ、起きますー…。…でも力が出ないので、リィカ、キスして下さい」

「はい」



ちゅっ



「おはよう」

「おはようございます…。

今日も朝から可愛い貴方に会えて幸せ。愛してます!」

「私も貴方が大好きよ、ネル」



…ようやくこれで起きてくれます。

え、流れに慣れてる?さすがに毎朝だもの!

大好きは毎回心を込めて言ってるけどね



今日はネルが朝から会議、そのあとはフリータイムなのです。

だから私と日本に行く予定。

実家に結婚の挨拶はもう済ませたのですが、こうして時々帰って両親とも過ごしています。



今日も白い貴族服に着替えるネル。

素肌からだんだんと服が身につけられていく過程を見ているのですが、いちいち動作がカッコ良い。

じっと見つめてると、途中で気付いた彼がノリノリでポーズをつけるものだから、おかしくて2人で笑っちゃった。



朝食をとって、さあ彼はお仕事へ。

扉の前でくるりと振り返って、抱きしめられる。

青薔薇のいい匂い…



「行ってきますね、愛しのリィカ」

「行ってらっしゃい、素敵な旦那さま」



きゅっ、と抱きしめあってキスをする。

手を振って彼を見送った。





ーーーコンコン、と小気味よく扉がノックされました。


「はい」

「「失礼致します」」



ミッチェラさんとユキさんでした。

ユキさんは執事代行、アマリエさんの代理で来てくれています。



…アマリエさん、ちょっと異世界正統派エルフの国に勇者召喚されてるらしくて。

今はいないんですよね。

私が言うのもアレなんですが、そんな事ってあるんですね…!

あちらで物理エルフ無双しているそうです。

女神様によれば、あと一週間で帰って来れるそうですよ?



ミッチェラさんが日本用のワンピースを着付けてくれて、髪も結ってくれました。

ワンピースなら一人でも着れるんだけど、私を着飾るのは彼女の趣味なんですって。


ユキさんが今日の予定を読み上げてくれます。



「えーと…

ネルは会議を1時間くらいで終わらせると思うから、レイカさんはその間にお支度を済ませておいてね?

会議後にネルを迎えに行くから。

それから、日本行きって感じで」


「分かりました。

ありがとうございます」



終わらせる、のあたりが実にネルらしいですね?

彼、本当に優秀だから。



着付けてもらったのは、春らしいふわふわシフォン生地の白ワンピース。

白は彼の色だから大好き。

髪はゆるふわに巻かれて、そのまま背中に流されました。



朝食プレートの片付けのために2人が退室していく。

そのお互いの小指には、シンプルな銀の指輪が光っています。

うふふ、紛れもない恋人の証ー!

どうやら、いつの間にやらお付き合いを始めていたようなのです!


ユキさんは、ミッチェラさんの見た目もタイプだし、治療魔法も心地良いしで惚れたのだとか。わお。イタめなのお好きなんですか?

ごくたまーにデレてくれる所もすごく可愛いと力説していました。


ミッチェラさんは「ユークィトは仕事に理解があるし、リィカ様にちょっかいかける心配がありませんから、そういう意味で理想の恋人なのですわぁ!」ってツンして言っていましたー。

2人きりの時はデレもあるそうですよ?

ユキさんに「可愛い」って言われるのは満更でもないようで、よく耳が赤くなってるのを知ってるんですからねミッチェラさんー!

お二人の幸せな報告待ってますー!



誘拐時のユキさんの私に対する悪ふざけについては、全力で隠し通すと誓い合いました。

お互いのパートナーがきっとオーガになる…



一人きりになった部屋で、私は机に向かって魔力結晶宝石を作ります。

国宝増産中なのです。今日はどんなのを作ろうかなぁ。




一時間きっかり経つと、また2人が迎えに来てくれました。

ヴィレア王宮の長く優美な廊下を静かに歩いていく。



ドタバタ聞こえてくる足音がすっごくデジャヴ。

明るいライトグリーンの髪と、赤みがかった金髪が見えます。



「あ!リィカさーーん!第三王子殿下、見てない?」


「おはようストラス君。

廊下は危ないから走っちゃ駄目ですよ?見てないですねー」


「そっかー」


安定の、疾走少年ストラス君。

彼の後ろにはレイズちゃんがいて、ポカポカ背中を叩いてた。



「……もう!バカバカストラス、だから言ったじゃないー!

走ったら怒られちゃうんだから!

もっと落ち着きなよっ」


「おはようレイズちゃん」


「聖女様…!

お、おはようございますっ。はあ、今日もすっごく綺麗ー…」


「そんな事ないよー?」



レイズちゃんはいつもこうして褒めてくれる。照れます!


最近よくペアで見かけるこの2人は、お稽古で仲良くなったみたい。

新人の近衛騎士と新人の影さんなんだけど、同じ背格好くらいの人が組織にいないから、組手して鍛えてるんだって。




ひと月前に帰ってきた第三王子殿下を捜索中のよう。

彼はお母さんそっくりな「自由気ままな研究者気質」で、よくフラリといなくなるのです。

リーガさんがもう疲れ切ってました…お疲れ様です。



「鼻の効かないストラスなんてただのKY…」

「あっ、酷い!」



楽しそうに会話してる獣人ペア。


ストラス君の祖先はなんと『月狼族』っていう、幻とも言われた獣人さんだった。彼も先祖返り。

月狼族は、とにかく鼻が効き、驚愕の身体能力を持ってて、あと満月の夜にはその髪が月の色に染まる種族だったそうです。

満月の日はストラス君も暴走するので、物理で沈めるのが旦那様のお仕事の一つになっています。



またパタパタと走って行くストラス君、追いかけるレイズちゃんの図を、大人3人で生暖かく見守りました。

彼らは将来、恋人同士になるのかなー?




会議室前にたどり着く。

中は静かなようで…会議は終わったのかな?

ナイスなタイミングで扉が開く。


「「「…王弟妃さま!?ぐはっ!」」」


「初めまして」



…私を見た他国の外交官が鼻を抑えて崩れ落ちた。もう、いつもの事なの。


こうして、ヴィレアの持つ力をさりげなくアピールするのが私の政治的役割なのです。

黒髪+ティラーシュ的美貌で威圧を、と……美貌とか笑えるけど。



悶える外交官の後ろからネルが顔を出して、ニコッと笑う。


「久しぶり、リィカ」

「まだ一時間しか経ってないよ?」

「でも恋しかったので」


いちいち可愛いなもう…!!

一線を越えて、ちゃんと男性として見てることが分かってるので、可愛い発言も許されるようになりました。



「今日の仕事は終わりましたよ。行きましょうか?

ミッチェラ、ユーク、使者様を客室に案内して差し上げて下さい」


「「かしこまりました」」



そう言って外交官らを任せると、ネルは私と手を繋いで歩き始める。


外交官さんらは唖然としていたけど、この行為は仲睦まじい貴族夫婦として政治の場でも許されるものなので、おそらく彼らは、容姿格差のある愛の方に驚いているのでしょう。

これも、毎度の事なのです。



会議の内容は「羊洋裁店めぇ」の国際間商業取引について。

私たちの挙式の白いドレスが、洋裁界でたいそう話題になってて、生地を売った「めぇ」のお店の評判がうなぎ登りになっているんです。

テトラちゃんたちのお店は露店から商業店に変わりました。毎日大盛況なの。

素材を安く買いたい他国を、ネルが適正価格で買うよう説得(と言う名の圧力)していたんですね。




ネルとゆっくり、幸せを噛み締めながら廊下を歩いていく。

うーん、春の風がまた気持ちいい!



庭の方からは、第三王子殿下と新人騎士・影たちの賑やかな追いかけっこの声が聞こえてきていました。




ヒラヒラと薄桃色の花びらが空に舞っていて、ヴィレアの春を告げている。

私が日本から持ち帰ったサクラの苗木は、成長促進魔法で、もう美しく花を咲かせる程に育っていた。

王宮の優美な外観にピンクの花々はとても似合っていて、ほうっとため息を着かずにはいられない光景です。




サクラの木の一つに、アラネシェラ様とラザロ様が腰掛けているのが見える。


ラザロ様はマジメに木の健康チェックをしていますね。

アラネシェラ様は手で楽しそうに舞う花びらを掴まえている。

神様が普通に見られる国ヴィレア。

よく考えなくても、これって、すごい事だよね…?



ラザロ様の膝の上にはホワイトライオンのぬいぐるみ(ネルが私に贈ってくれた物)が乗っています。

パタパタと尻尾を揺らしながら、お花見してる。

この子の中には、今は『ラザリオン』さんの魂が入っていて。

自由に動いて喋れるし、人化も出来るんですよ…!(見た目は完全にミニネルでした。眼福)


ラズ君も辛い人生を送ってきていたし、これからは幸せに生活していってもらいたいですね。

そのためにも、ヴィレア政治のお手伝いを頑張ります。




女神様が私たちに気付く。


「あ、エジーとサクラ!」

「「違います」」

「クスクスッ」


女神様はよくこのネタでからかう。

ネルは外見と血筋がそうだし、私は誕生花がサクラだからかな。



「今日も貴方たちラブラブねーっ!

凄く心地いい恋のパワーが流れ込んで来てる」


「当たり前ですね」

「もう、ネル…!」


「うふふ♡日本への送還は任せてね。

お土産には美味しいチョコレートが欲しいなっ」



女神様はバレンタインに感銘を受けたのか、チョコレートがお好きですね。

恋狂いの国ヴィレアにこの風習が知られてしまったのが去年。なんと速攻、月の名前が『恋告げ月』になるという事件がありました…!

愛に関するイベントへの情熱は凄いですね、ヴィレア王国さすがです。




他愛もない話をきゃあきゃあ(この笑い声は主に女神様)しながら、大広間にたどり着きました。



ここは、私とネルが初めて会った場所で。

ネルが指を切り飛ばしたり、お互いの愛情リボンを確認したりと、過激な思い出が色々つまっています。

まさかの、日本へ帰還できた事もそうですね。




「気をつけて行って来るんだぞ」


「兄上は心配性だなぁ。

ネル、リィカちゃん、楽しんでおいでね」


「また帰って来たら、お茶会に招待するわね!

ニホンのお話、楽しみにしてるわ」




上から、グリド国王様、クラズ王弟陛下、ライティーアお義母様。

皆さん見送りに来てくださったみたいです。

笑顔で迎えられる。



グリド王子殿下は半年前に王冠を継ぎ、国王様になられました。

そのお人柄と溢れるカリスマで、国民たちに大人気です。

彼のブロマイドシリーズが最近のヴィレアのお土産品一番人気となっていて、国の国庫すら潤してくれる万能兄上(弟たち談)!

そして、相変わらずブラコンなのです。



クラズ王弟陛下は「影」の総括。

国の平穏を守るために日々尽力していらっしゃいます。

よくユキさんと組んで、施策を相談し合ってる。

彼が絶妙にぼかして広めた「初代国王陛下と妻の人物像」の影響で、ヴィレアの美の価値観には少しだけ変化が表れました。


地球的ブスが美人っていうのは同じなんだけど、そこにフェチズム(目だけは大きい方が好き!とか)が加わり、もうそれこそ個人の好みというものが重視されるようになってきましたね。

ブス・ブサイクさんへの差別的な視線は見られなくなりました。


"その人の理想の美人"であるアラネシェラ様を拝見して、知られざる自分の好みを自覚した人がたくさんいたようです。



ライティーア様はとても元気になられました。

少し脂肪もついて、ヴィレア美人!

ユキさんとラザロ様の超チートな治療のおかげで、今では一人でお散歩することもできます。

私のことを娘として可愛がって下さる、理想のお義母さん。




3人に暖かく見守られながら、私たちは手を繋いで魔法陣の中へ。


女神様が世にも美しいソプラノの声で呪文を唱えて、部屋中に光が満ちる。


くるくると陣の丸いサークルが浮かび上がって、2人を囲んだ。

眩しさに目を細めながら、ネルが私を見つめて幸せそうに笑った。



「綺麗…」

「もう。貴方こそね、青薔薇さん」

「リィカは桜か。すごく似合いますね」

「ふふっ」





頬をすり寄せて、彼を見上げた。




空の青さの瞳がこちらを見つめてくる。




お互いの頬を幸せの赤色に染めて…


ーーー今日も私は、貴方に微笑む。






つたない初作に長くお付き合い頂き、本当にありがとうございました。

読んで下さってる方がいることが励みになり、そのおかげで完結まで続けることができました。

ヴィレアの皆さんに1年間で何があったのか、また番外編で書いていきたいなーと思っています。


幸せなお話は書いてて気分がいいですね。

シリアスで辛いところもあったけど、主人公ちゃん達がハッピーエンドを迎えられて本当に良かった!

これからもずーっと甘々なのでしょう。お幸せにー*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*


桜の花言葉は『貴方に微笑む』です。


では、心よりの感謝をこめて。ありがとうございましたっ!



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