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36 竜滅のショータ

いつもの模擬剣が軽すぎる感じがしたので、バリア練習用の重たい魔鉄棒で素振りをして見た。

レベルアップで筋力が増したらしく、重たい魔鉄棒でも普通に振れた。

だったら、バリアの強度も上がっている筈。

素振りではバリアがどれくらい強くなったか判らないので、試してみたくなった。

図書館に行くついでに、時々バリアの練度上げによる成果を試す為に使っている、中央公園にある大きな庭石の前に立つ。

いつものように魔鉄棒に結界を纏わせると、精神を集中して振り被った。

何度も試しているので、バリアの砕ける手応えや、石の欠け具合でバリアの強度が判る。

「えいっ!」

石に向かって一気に魔鉄棒振り下ろした。



ドグゥワン!

結界は全く壊れずに、大きな庭石が木っ端微塵に砕けた。

目の前で止まって、じっとしていてくれる相手なら倒せそう。

鼠の魔獣は動きが速いので、構えているうちにやられそうだけど。

周りを見回すと、あちこちに石の破片が飛び散り、折れた植栽の枝が沢山落ちている。

綺麗に配置されていた庭石の1つが吹き飛んで、そこだけぽっかりと穴が開いたようになっている。

整えられていた公園の植栽も台無し。

うん、見なかった事にしよう。



いつものようにジョギングで中央公園を周回し、ゆっくり歩いてクールダウンしていたら、探知の表示がおかしい事に気が付いた。

頭の中の探知地図には、人は白・魔獣は赤で表示される。

ところが、少し離れた所にチラチラ瞬いている白い点が3つ固まっている。

ワイバーン討伐で大幅なレベルアップしてからは、探知範囲を狭め精度を落として情報量を抑えている。

そうしないと、流れ込んで来る情報に気を取られて集中力が落ちたり、酷い時は激しい頭痛に見舞われる事もあるのだ。

レベルアップで探知の範囲や精度が上がったのに、練度が足りないので俺の頭では処理出来ないらしい。

今は試行錯誤しながら探知の練度を上げる訓練に力を入れている。

今日は外に出るので、危険を避ける為に、狭い範囲の探知を高精度にして発動していた。

探知に表示されている白い点が点滅するのは初めて。

点滅している方向を見るが、公園の木で良く見えない。



その時、点滅していた点の1つが動いた。

動いている点を見ていたら、チラチラしたまま色が薄くなった。

点が薄くなるのは魔力が通り難い石造りの建物などに入った時。

チラチラした点の周りに集まった沢山の薄白い点が一斉にチラチラし始める。

チラチラ瞬く沢山の薄白い点が建物の外に出たらしくはっきりとした白になった。

全員がチラチラと瞬いている。

位置からして教会?

何となく嫌な予感がした。

沢山の白いチラチラした点がかなりの速さで近づいて来る。

全員が筋肉強化を使って走っているらしい。

あっと言う間に視界に入って来た。

見覚えのある鎧を着た兵士20人程が、凄い速さで俺に向かって走っている。

大規模盗伐の時、神官達を護衛していた兵が着ていた鎧。

教会騎士団だ。



騎士達が走って近づきながら、一斉に剣を抜いた。

ヤバい。

”結界“

ビックリしながらもなんとか結界を張れた。

何度も練習を重ねて、漸く安定して張れる様になった結界が俺を包む。

「神敵退散!」 「神敵退散!」 「神敵退散!」 「神敵退散!」

騎士達が大きな声で叫びながら剣を振り下ろす。

ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。 

ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。

騎士達が結界に剣を打ち付けている。

結界の練度はまだまだ低いものの、ワイバーンを倒した事で大幅にレベルアップしたから、練度の低い結界でもそこそこの強度はある筈。

”結界“ ”結界“

それでも不安なので結界を2重、3重に張った。



でも、これって、どうしたら良いんだ?

俺には攻撃手段が何もない。

結界の練度が上がれば内側から攻撃出来る結界を張れるらしいが、今はまだ無理。

仮に出来たとしても、剣は精神を集中して1気に振り下ろすことしか出来ない。

今の所止まっている相手にしか、それも一人か一匹にしか”振り下ろし“は使えない。

複数の敵を相手に剣を振るには、10年掛かると熊に言われている。

属性が無いから、魔法による攻撃も一切出来ない。

延々と結界に剣を叩きつけ続ける騎士達を、呆然と見る事しか出来なかった。

ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。 

ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。ガン。

相変わらず兵士達が結界に剣を振るっている。

まだ練度が低いので、結界の持続時間は僅か5分。

”結界“ ”結界“

念の為に内側にもう2枚結界を張った。



「どうした。」

「何があった。」

警備隊の服を着た兄ちゃん達が、大声を上げながら遠くから走って来るのが見えた。

誰かが通報してくれたらしい。

結界に切り付けていた騎士達が慌てて逃げ去っていく。

「ふぅ~。」

どうやら助かったらしい。

警備隊の兄ちゃん達4人が走って来た。

「何があった。」

「え~と、教会の鎧を着た騎士達20人位が走って来て、いきなり剣を抜いて切り付けて来た。」

「切り付けて来た? 特に怪我はない様に見えるぞ。」

「え~と、結界を張ったから。」

「お前は結界師か?」

「ギルドの回復師。」

「ギルドの回復師と言うと、・・ひょっとして竜滅のショータ殿か?」

竜滅? ショータ殿?

なんじゃそれ。

竜滅なんて聞いた事が無いし、警備隊の兄ちゃんに“殿”の敬称で呼ばれる覚えも無い。

「竜滅は知らないけど、冒険者ギルドのショータです。」

「目撃者に事情を聴いて来い。」

リーダーらしい兄ちゃんに言われて、部下らしい警備隊の服を着た3人が周りで見ていた人達の所に散った。


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