37 俺だけハミゴにされている
「詳しい話を聞きたい。もう一度最初から話してくれるか?」
「うん。 え~とぉ、最初は3人が俺を見付けたみたいで、2人が見張りに残って、1人が教会に走った。」
「うむ。それで?」
「教会から鎧を着けた騎士達20人位が出て来て、丁度その辺で剣を抜いて、“神敵退散”って叫びながら切り掛かって来た。」
「成程、神敵退散か。」
「ビックリして結界を張ったら、みんなで結界に切り付けて来た。 けど、結界を破れなかったから怒ったみたいでぇ、めちゃめちゃに剣を振ったせいで何本かは剣が折れた。 ここと、あそこと、あそこに落ちてる。」
兄ちゃんが折れた剣を拾いに行った。
「確かに折れたばかりに見えるな。」
拾った剣を確かめながら兄ちゃんが戻って来た。
「それで襲って来た者達はどこに行った?」
「警備隊の皆さん達の声が聞こえたみたいで、みんな走って教会に戻った。」
「教会か、・・・。」
「教会がどうかしたの?」
「教会は警備隊の権限外だ。 中を調べる事は出来ん。 一応上司に報告書を出しておくが、同じような事があるかも知れん。 くれぐれも油断はするな。」
警備隊は教会を調べる事が出来ないらしい。
「うん。」
ギルドに戻ると、今朝の白い点の瞬きについて考えた。
まだ怪我人が来る時間では無いので、酒場に行って果実水を注文した。
転生以来2回目のお買い物。
果実水を持って、フロア全体が見渡せる席に座り、今朝と同じように探知を使ってみる。
瞬いている白い点は無い。
昼時なのでフロアにいる人は少ないが、ポチポチと冒険者がやって来は出て行く。
4人組のパーティーが入って来た。
一人が俺を見た、その瞬間から白い点が微かに瞬き始めた。
その男が仲間に何かを囁くと、他の3人も俺を見る。
俺を見た瞬間から3人の白い点も微かに瞬き始める。
「知らない顔だけど、あの人達を知ってる?」
近くにいた時々話をする仲の良い冒険者のおっちゃんに聞いてみた。
「あいつらはDランクパーティー“森の蠍“だ。 ”ショータが公爵から貰った褒美が少なかったのは侯爵から嫌われているからだ。 領主が嫌っているショータに近づくと碌な事は無いぞ“、とか言い回っている。」
「まあ、間違ってはいないけどね。」
公爵に嫌われているのは、祝賀会でダンさん達にも聞いたから知ってる。
「あいつらも大規模討伐に行ったが、碌な戦果も挙げられなくて祝賀会にも呼ばれなかったんだ。 自分達が呼ばれなかった祝賀会に呼ばれた上、褒美まで貰ったショータを妬んでいるようだ。 碌な働きも出来なかった自分の腕を怨めってんだ。」
おっちゃんが不機嫌な声で言い捨てた。
「そうなんだ。」
ひょっとしたら、白い点の瞬きは俺に対する感情かも知れないと思った。
微かな瞬きは悪感情?
激しい瞬きは殺意を持っていると言う事かもしれない。
暫くは探知の性能確認をする事にした。
今日は朝から熊に呼ばれた。
「目撃者の話からも、襲って来たのは教会騎士団だと判った。」
「教会騎士団って、騎士なの?」
「爵位は無いが、騎士爵同等とされている。 それでなくとも最近は教会の評判が落ちていたのに、街の英雄である“竜滅”を、大勢の住民達が見ている前で、20人もの大人数で取り囲んで剣を叩き付けた。 それだけの大人数で襲ったのに、ショータには掠り傷1つ付けられなかっただけでなく、何本も剣を折られた挙句に逃げた。 目撃者が多かった事もあって、この話は町中に広まっている。 ベルンの街は教会への非難と嘲笑の声で一杯だ。」
俺も騎士団には掠り傷1つ付けられなかったから、おあいこだと思うけど。
それよりも“竜滅”という言葉が気になった。
「この間も警備隊の兄ちゃんに“竜滅”って言われたけど、竜滅って何?」
「竜滅はふたつ名だ。 凄いスキルとか大きな功績が判り易いように付けられた通称だな。ショータが正式な冒険者ならギルドカードにも書かれる。」
「ふ~ん。」
ギルドカードを出す事は殆ど無いからどうでもいいが、竜滅なんていう中二病みたいな名前は恥ずかしすぎる。
「襲ったのは、前回の討伐で神官達がショータに恥をかかされたからだろうな。」
「恥?」
神官に恥をかかせた覚えは無いんだけど。
「今回の討伐では死者がおよそ500人、怪我人がおよそ7000人だったが、神官18人で治療したのは300人程。 残りの6700人はショータ達6人の治癒師だ。 褒賞の関係で治療者数が公表されたからこの街の人間なら誰でも知っているぞ。」
熊は誰でも知ってるって言ったけど、俺は聞いてない。
俺だけハミゴにされているみたいで、気分が悪い。
「俺は知らなかったぞ。」
「まあ、ショータは図書館以外に行かないからな。 それはともかくとして、18人で300人しか治療出来なかった上、18人の神官全員が体調不良を理由に途中で帰った。 なのに、ショータ達は僅か6人で最後まで怪我人の治療を続けた。 それもあって、神官達は無能だという噂が広がっている。 それを逆恨みしているようだ。」
「そうなの?」
神官達が途中で帰ったのは知っているが、俺達を恨んでいるとは知らなかった。
「教会は独立組織なので帝家でも迂闊には手を出せない。 公爵家であってもどうにも出来ん。」
ふと、俺が何か言おうとする度にササヤカお神に怒られた事を思い出した。
教会はササヤカお神の配下だから自分勝手で人の言う事を聞かないのかも知れない。
ササヤカお神は俺の話を聞かなかったのに、装備も攻撃力も無いまま時間切れになったんだから、結構抜けている所があるのだろう。
教会騎士団が剣を何本も折ってしまったのも、ササヤカお神の配下だからお神同様に抜けている所があるのだろう。
「俺はどうしたらいいの?」
「とにかく油断をしない事だ。図書館は教会に近すぎるから当分の間は行くな。」
図書館に行けなくなった。
ササヤカお神のばかやろ~!




