表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/82

27 ポイは要らないらしい

ブクマありがとうございます。

長く読んで頂けるように頑張ります。

頼運

昼頃、鼠っぽい魔獣6匹を引き摺ってバンさん達が戻って来た。

後ろには鼠っぽい魔獣や兎っぽい魔獣を引き摺った兵士達もいる。

バンさん達が魔獣を捕らえてくれるのは判るけど、警備の兵達が魔獣を捕らえている理由が判らなかった。

「どゆこと?」

兵士達の方に視線を向けてバンさんに聞いてみた。

「ショータのレベリングの事を話したら、警備の兵達も協力してくれたんだ。 昨日はショータが1人で、怪我人全員を治したという話を聞いたらしい。」

俺をレベルアップさせることが怪我人の治療に役立つと思ってくれたようだ。

「ありがとうございます。」

いつになるかは判らないけど、俺の目標はこの鼠っぽい魔獣の単独討伐。

因縁の相手に1突き入れられると思っただけでテンションが上がった。



鑑定してみたら、鼠っぽい魔獣は鼠の魔獣だった。

ポイは要らないらしい。

兵士達に礼を言って、死に掛けの魔獣に止めを刺す。

鼠の魔獣は毛がツルツルで結構滑った。

きちんと剣先を定めないと、剣先が滑って刺さらない事が判っただけでも大きな成果。

斬るのも毛が滑るから難しそう。

転移初日の遭遇で、鼠さんの動きがめっちゃ早かった事は身に染みている。

動いてない鼠さんを突くだけでも難しいのに、動いていたら絶対に無理。

鼠さんの単独討伐は、まだまだ遥かに遠い未来のように感じた。

魔獣に止めを刺していたら、今日もちょっと元気になる。

昨日も元気になったので、恐らく今日もレベルが上がったのだろう。

魔獣を生きたまま運んで来てくれたみんなに感謝。

魔獣の死骸は兵站の人達が解体していた。

兵士達の食糧にするらしい。



昼過ぎからは続々と怪我人が運び込まれてきた。

「3男様はこちらです。」

「子爵殿はあちらにどうぞ。」

「男爵様はこちらです。」

「兵士は全部こっちだ。」

「怪我人を空いている床に並べろ。」

怪我人が次々と運び込まれ、テントの床に並べられていく。

テントの中が、苦しんでいる怪我人達のうめき声で煩い程になっている

治癒師達と連絡を取り合う声も聞き取り難くなってきた。

案内役の兵士達も忙しく走り回っている。

床に並べられた怪我人の横に立って、掌を向ける。

「回復。」

昨日の様なスクワットは体力の無駄遣いだと反省した。

討伐は今日が初日、まだまだ始まったばかりで先は長い。

体力を温存する為には、多少目立っても余計な事をするのはやめた方が良いと気が付いた。

立ったまま掌だけを向けて回復を発動する。

兵士の体がボワッと光り、怪我が治る。

うん、この方が早いし楽。

怪我の治った者が次々とテントを出て行くが、運ばれて来る兵士の数も多い。

場所を移動しながら回復を連発する。

参加者が1万を超える大規模作戦ではあるが、それにしても怪我人が多い。

重傷者も増えて来て、治療に時間のかかる傷が多くなった。



「ショータ、休憩しろ。」

ダンさんの声で休憩に入る。

「うん。」

治癒師さん達の話し合いで、俺は2時間置きに1時間の休憩を取らせて貰える事になった。

いつ終わるか判らない長期戦なので無理は厳禁。

魔力には問題無いが、神経を研ぎ澄ますので2時間連続で回復を使うと、精神的な疲れが溜まって来る。

先輩治癒師たちのアドバイスに従って、素直に休憩を取らせて貰う事にした。

休憩時間には、ベルンの灯や警護兵が捕まえて来た魔獣に止めを刺す事も多い。

レベルが上がれば魔力量も増える筈なので、皆の好意を素直に受け取らせて貰う。

休憩時間にはみんなが運んで来てくれた、死に掛けの魔獣に止めを刺し続けた。

2日目、と言っても作戦開始の初日だが、俺達のテントだけで320人程の怪我人を治療した。

明日は森の更に深い所へと討伐隊が進むから、強い魔獣が増えてもっと怪我人が増える気がする。



作戦開始2日目。

「ちょっと怪我人が多すぎるような気がするな。」

朝食の席でジンさんが呟いた。

俺は初めての参加なので判らないが、いつもの大規模討伐よりも多いらしい。

「公爵家の情報は無いのか?」

ダンさんがデンさん達の顔を見る。

「今まで以上に強い魔獣が出ているらしい。 手柄を立てようと焦って先行した魔力の多い貴族達に強い魔獣が突っ込んできて、護衛の兵に大きな損害が出ているそうだ。」

「魔力が多いと魔獣が来るの?」

「魔獣の御馳走は魔力の多い人間だからな。 そう言う意味だと、ここには魔力の大きい人間が沢山集まっているな。」

「確かに。 指揮所の貴族も俺達治癒師も、兵士達に比べれば遥かに魔力が大きいな。」

「前線を突破されたら、魔獣達は一気にここへと突っ込んで来るかもしれんぞ。」

治癒師のみんなが心配そうに話している。



聞いてねえよ。

熊は危なくないと言ったぞ。

何となくヤバい気がする。

熊は俺の魔力量がかなり多いと言っていた。

俺は魔獣にとってはめっちゃ美味しい御馳走じゃん。

若いからお肉も柔らかい。

余計な脂肪も無いから高タンパクで消化が良い。

拙い、拙い。

魔獣に美味しく食べられるのはめっちゃ拙い。

“ショータは美味しくないです“と、みんなで魔獣達に宣伝してきて欲しくなった。



怪我人が少ない昼頃までは治療所での治療を先輩治癒師に任せ、ベルンの灯や警備兵達が捕まえて来てくれた半死半生の魔獣達に止めを刺し続けた。

万が一魔獣が突っ込んできても、レベルアップしていれば逃げられる、かも知れない。

魔獣達を捕まえて来てくれるベルンの灯や警備兵達に感謝しながら次々に止めを刺す。

昼からは続々と怪我人が来るので2時間ごとの休憩時間に止めを刺す。

俺の休憩前にはかなり減っていた怪我人が、1時間の休憩後にはテント一杯に増えているという状況が続いた。

夜8時で俺の仕事は終わり。

翌日に備えてぐっすり眠るのが俺の仕事。

今日の怪我人は500人を超えたらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ