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13 熊さん男前!

お星様とブクマありがとうございます。

朝からテンションが上がった頼運です。

時間になったので治療室を閉めた。

寮に帰る前に受付カウンターに寄る。

「ズンさん、この街には図書館ってある?」

ギルドの資料室があまりにもあまりだったので、この国や街の情報が欲しかった。

「有るけど、1回の利用料が銀貨5枚よ。」

「1回が銀貨5枚? 1日じゃなくて?」

「そう。出入りする度に払わなくちゃいけないの。」

もしも怪我人が来たら直ぐにギルドに戻らなくてはいけない。

何時間利用出来るか判らないのに銀貨5枚は痛い。

困った。



何か良い知恵は無いものかと考える。

こめかみを両手の人差し指で丸く撫ぜ、腹の前で両手を組む。

ポクポクポク、チ~ン!

閃いた。

流石はイメージで魔法が発動する世界。

一休さんのイメージでも良い知恵が閃くのは凄い。

まあ偶々だけどね。



「え~と、毒や麻痺の治療について調べたいんだけど、ギルドから調査費を出して貰えないかな?」

断られて元々、思い切って聞いてみた。

「う~ん、今までに図書館の利用料を調査費で払った例はないわね。」

「そこはズン様のお力を発揮して何とかして頂くとか。」

揉み手をして頭を下げた。

「はぁ。・・まあ事情が事情だから熊に聞いてみるわ。」

「宜しくお願いします。」



翌朝、いつもの運動と素振りを終えたらズンさんに呼ばれた。

「熊が調査費で入館料を払っても良いって。」

「やった~!」

言っては見るものだ。

熊さん男前!

「今から行くなら案内するわよ。」

受付も今の時間は暇らしい。

「お願いします。」

ズンさんの案内で図書館に向かった。



「多分途中で迎えに行くと思うけど、もしも早くに調べ終わったら1人で帰って来るのよ。」

「・・・。」

1人で帰れるのか、ちょっと、いや、めっちゃ不安。

街を歩いたのは初日に大門からギルド迄歩いたほんの5分だけ。

この街についての知識は全くない。

10歳の体なので力も弱いし、足も遅い。

異世界だから武器を持った人が沢山歩いている。

俺は何一つ武器を持って無いし、防具も無い。

唯一頼れるのはバリアだが、熊には一撃で粉砕された。



不安そうな俺に気付いたらしく、ズンさんが声を掛けてくれた。

「大丈夫よ。道は簡単だし、警備隊が巡回している安全な大通りしか通らないから。」

「・・うん。」

それでも全く知らない世界の知らない街、やっぱり不安。

ギルド前の道を行くと大きな通りに出た。

「ここが中央大通り。左手に見えるのはショータが街に入った時の大門よ。」

左手を見ると見覚えのある大きな門が見える。

「この道を大門とは反対の右手側に真っ直ぐ行くと、大きな公園に突き当たるの。それが中央公園よ。公園入口の左手が図書館だから判り易いわ。」

「遠いの?」

「すぐそこよ。」



異世界のすぐそこは当てにならない。

転生初日に“ベルンの街はすぐそこだから”とバンさんに言われたのを思い出す。

街まで速足で歩いて3時間はバンさんにとっては“すぐそこ“だった。

前世の“すぐそこ“と異世界の”すぐそこ“は随分と違う事を体験した。

前世でも都会のすぐそこは歩いて5分以内。

田舎のすぐそこは歩いて1時間以内だと何かの本で読んだ覚えがある。

異世界のすぐそこは歩いて3時間以内、って違い過ぎるだろ。

「えっと、歩いて何分くらい?」

到着までの時間を聞くのが一番確実。

「1時間も掛からないからすぐよ。」

「ソウデスカ。」



幅の広い石畳の道を大門とは反対方向に歩く。

道の左右には大きな建物がずら~っと並んでいる。

「この建物って何?」

「商会よ。荷馬車が出入りし易い様に大門近くにあるの。大門から遠いと無駄に時間が掛かるでしょ。」

「お客さんが少ない?」

出入りする人が殆どいない。

「客は商売人だけだからね。袋や箱に入ったままの取引だから、私達が買うお店とは全然違うのよ。」

「ふ~ん。」

どうやら前世で言う流通センターらしい。



キョロキョロしながら50分程歩いたところに公園があった。

「公園の奥にあるのが大神殿よ。塔の間にあるのが礼拝堂。」

広い公園の向こう側に大きな広場があり、その向こうに神殿の建物があった。

礼拝堂らしい大きな建物の両横には高い塔が建っている。

初めてこの世界に来た時、森の彼方に先端だけが見えたのはこの塔らしい。

「左側に見えるあの建物が図書館よ。」

結構大きな建物だ。

この世界に来てから見た本と言えば、ギルドの資料室にあった薄い図鑑だけ。

これだけ大きな図書館なら、まともな図鑑がありそうに思える。

ちょっと期待が膨らんだ。

入り口でズンさんが銀貨5枚を払ってくれる。

「次からはギルドで利用料を渡すから自分で払うのよ。」

「うん。」

ズンさんはギルドに戻って行った。

「身分証明をお預かりいたします。」

受付のお姉さんに声を掛けられる。

受付のお姉さんにギルドカードを預け、正面の扉を開けて中に入った。



目の前には受付があり、その奥には沢山の机と椅子が並んでいる。

どうやら閉架式の図書館らしい。

「回復師です。毒の種類や症状、治療法について書かれた本をお願いします。」

「一般向けと専門書がありますが、どちらが宜しいですか?」

「専門書をお願いします。」

文化的には前世の方が進んでいるので何とかなると考えた。

「使われている用語が難しいと思いますが大丈夫ですか?」

俺が小さいので心配したらしい。

「大丈夫だと思います。」

ササヤカお神に貰った言語理解のスキルがあるので、言葉には問題が無い筈。

「暫くお待ち下さい。」

受付のお姉さんが後ろの扉から出て行く。



受付前の椅子に腰かけてお姉さんを待った。

閲覧室らしい所を見ると、ポツポツと利用者らしい人が座って本を広げている。

年寄りが多くて若い人は殆どいない。

若者は図書館よりスマホ、な訳無いな。

皆が少し高そうな服を着ているし、貴族っぽい人もいる。

この世界の識字率や教育レベルが少し気になった。



暫くするとお姉さんが書類を持って戻って来た。

「こちらが毒関係の専門書リストになります。1度に閲覧出切るのは5冊迄となっております。返却された本の数だけ次の閲覧希望が出来ます。」

渡されたリストには、結構な数の書籍名と著書、簡単な内容が書かれている。

リストに目を通して必要そうな本を探す。

「まずは”毒の症状一覧“、”解毒術の極意“、”魔獣毒解析“、”解毒ポーション”の4冊をお願いします。」

専門書がどの程度のレベルかが判らないのでとりあえず目に付いた4冊にした。



神経毒と血液毒か。

神経毒の症状はしびれや筋肉の麻痺、呼吸困難。

森の中で毒を受けたら、ギルド迄持たない可能性が高いかもしれないな。

全身の神経に回復を掛けられるか?

傷みは血液毒の方が強いらしい、血液成分が破壊されるからか。

血液全体に回復を掛けるイメージ?

判らん。



解毒ポーションの製法も書いてあるがかなりいい加減。

ある程度配合が違っても闇属性の魔力が多ければ効果があるらしい。

そもそもポーションはどうやって傷や毒を一気に治せるんだ。

いや、それは回復も同じか。

無くなった細胞を再生するって現代医学でもめっちゃ難しいのに、この世界ではイメージさえしっかり作れば一瞬で元に戻せる。

判らん。



驚いたのは読む速度がめっちゃ速い事と、本の内容がどんどん頭に入って来る事。

前世の俺は凄く賢かった?

賢かったにしても読める速度が早すぎる。

ササヤカお神のお陰なのだろう。

ちょっとだけササヤカお神に感謝。

何度も受け付けに行って、リストからそれらしき本を選んで閲覧させて貰った。

閉館時間より2時間程前にギルドから呼び出しが来た。


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