出会うべくして出会う
東條理人が芳賀聖司に出会ったのは、高校の二学年にあがったばかりの頃だった。
「きみ、東條くんだろ。この学校の首席の人だ」
聖司は柔らかい、という言葉がしっくりとくる細面の少年だった。少し薄い色をした瞳に、亜麻色がかった細くしなやかな髪に、白めの肌。純日本人にしては全体的に色素が薄い。
「あ? あぁ」
対して、理人のほうは肌は同じように白いが、陽射しの中でも透けないさらりとした黒髪、切れ長の大きな瞳は夜の色をしていた。
「すごいね、ずっと成績もトップだもんね」
「そんなすごいことかな」
「そりゃすごいよ、入った時からだろ? 維持するのはなんだって難しいよ。ましてや成績なんてさあ」
聖司はその見た目通りに、人の良い優しい人間だった。
偽善ではなく、困っている人間に手を差し出すのは当然だと、あるがままだと生きている、そんな人間だった。
「おい、誰か手伝ってくれ」
次の授業の教材を運ぶため、教室に声がかかる。
聖司は「あ、おれ行きます」跳ねるようにして、立ち上がり「じゃあな」と理人に向かって笑いかけてから、立ち去った。
あいつのほうが、ずっとすごいじゃないか。
誰よりも一番先に手を伸ばせることは、誰でも出来ることじゃあない。
理人は机に一人座ったまま、教室から出ていく聖司の背中を見ていた。
理人が思うに、聖司は陽だまりのような人だった。気付けば誰もが、聖司の側にいる。
「おまえは本当人気者だな」呆れたように理人が言った。
「単に雑用係だよ、おれに言えばやってくれるからだろ」
「でも嫌じゃないんだろ」
「んー、誰かがやるんならおれがやったらいいかなあって」
「ふうん?」
陽の光のようだ、と理人は目を細める。細い顎に指をかけて考えるような顔をする。理人がするとそれだけで、絵になる。
「おれのこと人気者とか言うけどさあ」小声で、聖司がむくれた顔をする。
「ん?」
「おまえ、どんだけ人に憧れられてるのかわかってる?」
理人は座っているだけで、存在感がある。人目を引く。
ただ、圧を感じて、引け目を感じて、彼に不愉快思われることをおそれて、話しかけることを誰もが躊躇する。
また、理人は聖司にしか積極的に関わろうとしなかった。
だから、結果的に理人はクラスメイトからは近付きにくい存在となっていた。
「ああ、知ってる」そう言って、理人は薄く笑った。




