↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/22

最終章 最終話 君の為に

死闘は終った。健は重傷を負った。そこへ小夜子が駆けつける。

だが……

最終章 君の為に 最終節 愛しき人よ


 それから数分して、けたたましいサイレンが海岸添の闇に響く。

それはパトカーのサイレンの音だった。此処を通った車の運転手が通報したのだろうか。

 「オイ? サイレンの音が聞こえるぞ」松本が言った。

 小夜子の嫌な予感が的中したのか? 数分して小夜子達の乗った車が、その壮絶な争いの現場に到着した。

かなりの数のパトカーに救急車も数台、到着していた。


松本、橋本、森そして小夜子らが車ら降りて走った。

 救急隊員は担架で怪我人を運んで来る。その二人目の担架に健の姿があった。

 「ケン!! ケ〜〜ン」

 小夜子の発狂したような声が暗闇に響き渡る。

 松本達も唖然として周りの光景を見渡した。

パトカーや警察車両から、まるでナイター中継のようなサーチライトが現場を照らしていた。

 健の担架は血だらけになっている。健の顔が青ざめて来た・・・。

 その健を見て、血に染まった手に小夜子が縋りついた。


 「どうして!? 一人で戦うの? どうして・・・ケン・・・しっかりして!!」

 そんな声が聞いたのか、健の眼が薄っすらと開いた。

 「さっ・・・小夜ちゃん・・・やったよ。仇は獲ったよ・・・」

その時に、健が右手に金のネックレスを血で染まった手で握り締めていた。

 「駄目! 健が死んだら意味がないわ!! そんなのイヤッ〜〜〜」

 「ごめんね。小夜ちゃん・・・でも仇は獲ったよ」

 健は小夜子に笑って言った。


 「イヤッ!! 死なないで健。私を残して死なないでケン!!」

 「小夜ちゃん・・・強く生きてくれ・・・約束を守れなくてゴ・・・」

 「いやっあ!! 健、死んじゃイヤッ」

 小夜子は健の顔を抑えて必死に叫ぶ小夜子の柔らかい手に包まれて、健は安らぎを感じ始めた。


 そして・・・。

 「駄目!! 死んじゃあ!! 健は、健は・・・お父さんになるのよ」

 小夜子の口から思いがけない言葉が出た。

 ほとんど意識のない健の表情が僅かに動いた。その言葉は健の脳裏に響いた。

 「ぼっ僕が? おとうさん。そうか・・・ありがとう・れ・し・い・な」

 健の青ざめた顔が少しだけ微笑んだ。

 「しあわせだったよ。小夜ちゃ--------」

 やがて健の手が力を失って、コトリと小夜子の手から離れた・・・・・。


 「イヤッ!! 健!ケン、起きて! 起きて!!」

 小夜子は発狂寸前だった。救急車の救護要員が健の脈を採る。

 そして眼に光を当てたが・・・静かに救護要員が首を横に振って言った。

 「残念ですが御臨終です」と告げた。


 小夜子は、その言葉に凍りついた。小夜子は絶句して、あたり構わず泣きじゃくる。

 松本は小夜子を支えてやる。橋本も森も男泣きしている。

 「健・・・お前は男だよ。立派な男だよ」

 松本達は男泣きしながら言った。


 泣き崩れる小夜子を支えてやるのだが三人には慰める術も無く堪えても、堪えても涙が出てくるのだった。

 小夜子は完全に放心状態だった。痴呆症のような表情になっている。

 両親が死に最愛の人が今ここに天国へと旅経って行った。

 小夜子は寒空に光る星の輝きに、空に向かって一人呟くのだった。


 「健、約束したじゃない。誓ったじゃない。私を一人にしないと、幸せにすると、あの約束はどうなるの? それは貴方の命を守る事なのよ・・・貴方は私に新しい命を残して行く事だったの? 健の居ない世界なんて・・・私はもう何も希望を見え出せなくなるわ。でも、でも貴方は私に新しい命を残して逝ったわ。私に、この子と生きろと言うの? 私はケン・・・貴方と一緒に生きて行きたかったの。それが全てだったのに・・・」


 「小夜子さん! 気をしっかり持って」

 橋本がそう言った。それを見て松本は首を横に振った。

 今は思いっきり泣くしかないと。ただ見守ってやるしかないと。

 松本達は小夜子が放心状態で呟く、小夜子の姿が痛ましかった。


 その数日後、沖田と盛田は殺人罪で逮捕されたと云う。

 シンガポール警察よりマイケル・ワン警部が出来るだけの、証拠を提供したのが決め手らしい。

 健の遺体が旧正堂寺に移されて告別式が行われた。

 喪主は小夜子で、その事情を聞かされた健の両親始め喪主を反対する者は誰も居なかった。

 シンガポール警察からも堀内健の為に弔問に訪れてくれた。

 本来なら健は、シンガポールで合気道を教えている筈だったのに・・・もしかしたら警官の夢も叶えられたかも知れなかったのに。


 ジミーサットンが眼を赤くして立っている姿が見えた。

 シンガポールで一緒に活躍した友人だった。ジミーが誰となく言った。

(健はさわやかな青年だった。明るくて・・・)

 変わり果てた友人にジミーは声も出なかった。

 厳めしい顔の男が三人、顔をくしゃくしゃにして、在りし日の健を想い浮かべ健との別れを惜しんで男泣きしている。


 「小夜子さんを、残して逝くなんて・・・」

 と、松本が呟く。

 人々は小夜子が勤める喪主の姿に、それ程までに愛し合った二人の別れに参列者は涙するのだった。

 その参列者の中には健の両親、親戚は勿論のこと、元吉沢主将と早紀も居た。

 それと正堂寺で合気道の門弟達、健の友人、沢山の人に見送られて。


 霊柩車から別れのクラクションが悲しく響く・・・。

 プアァ〜〜〜〜〜〜〜〜ン

 澄み切った青空に、火葬場の煙突から白い煙が天に昇って行く。

 健が天に昇って行く・・・その健が雲となって笑っている・・・。

 〔ありがとう小夜ちゃん、ありがとう皆さん〕


 そんな風に、健の声が聞こえたような気がした。

 小夜子の眼には、その青い空に二人の楽しかった日々が映し出される。

 三陸海岸浄土ケ浜で二人は、稽古しながら芽生えた恋だった。

 合気道で閃き、小夜子の優しさに心を癒され、そして要山和尚夫妻の死。

 シンガポールまで敵を追いかけ、健は一時的に迷い小夜子が重症で入院。


 小夜子の為に生きると誓った健。自分を捨てて迄も、仇討ちを果たした健。

 生きていれば小夜子と二人。いや生まれてくる子供と三人で。

 明るい未来が、あったものを・・・天高く登った・・・健。

 素晴らしい青年、素晴らしい日本男児。健。

 安らかに堀内健。ここに二十七才の生涯を人々に惜しまれつつ閉じる。


 時は流れて、平成十五年十二月。

 能登半島の厳しい寒さの中で、親子がたたずんでいた。

 海の見える丘に、堀内健の墓地があった。黄色と白い花に囲まれて・・・。

 健が子供の頃好きだった、海の見える小高い丘に健の墓は建っている。


 冷たい風に線香がなびく、煙がその親子を包み、やがて日本海に流れて行く。

 母は、厳冬の寒さも感じない程に、健の墓に語りかけていた。

 その時、健の面影にそっくりな少年が言った。


「ねぇママ! 本当にパパってカッコ良かったの?」

 父の死を知らずに生まれて来た、この子は小夜子にとって。

 健の生まれ代わりと思えた。そして二人を繋ぐ愛の子だった。


「そうよ! 健一。パパは最高の人よ。世界で最高の・・・人よ」


 今日は天気が良いのか遠くの島まで良く見渡せる。

 二人の親子は、しっかりと手を握り合って遠い海を眺めた。

 この海もシンガポールに繋がっているのだなと、小夜子は思った。

 健が警察官になって、小夜子と生まれて来た子で過ごす予定も阻まれたが。

 シンガポールの夢は、いつか健一が果たしてくれるだろう。


 「健・・・見て! 貴方の子よ。健一と言うのよ。貴方にそっくりでしょ」

 その少年は、もう小学生になって居る。

 そして今は、母から合気道を習って居るらしい。

                           完   


堀内健、27歳の若さで散った。

最愛の人、小夜子の両親を殺した犯人と戦い銃弾に倒れた健。泣き叫ぶ佐代子の腕で息を引き取り、残された小夜子には健の子が宿していた。やがて月日は流れ

健の息子は、いままた合気道を母から習っていた。

長い間ありがとう御座いました。読んだ下さった方に感謝申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。