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最終章 第三節 死闘

健一人の戦いが始った。

相手は殺し屋に、他に拳銃をもった相手も絡み

それでも健は一人で立ち向かう。

  「なに、誰だ。お前は?・・・」

 沖田はまったく健に覚えはなかった。そうだろう話は聞いているかも知れないが初対面だった。

 沖田も、かなりの修羅場を潜って来た人間だ。そうとう腹が据わっている。

 知っているなら俺の怖さも知っているだろう。だが怖がらず現れた健を見て少し動揺が走った。

 相当の自信がなければ、それも一人で誘き寄せるとは相当な自信があるのか?

 沖田は健を少し警戒した。誰だと言われたが、健は名前を言おうとしなかった。

 「誰でもいい! 沖田! 覚悟を決めてもらう」

「ナニ? 俺を相手にか笑わせるぜ。偉そうな事を言ってくれるじゃないか」


 沖田も相当の自信を持っている。そしてこの体格だ。

 だが目の前の相手は沖田を前にしても、怯む気配どころか不適な笑みで睨んでいる。

 健は相手が二人居る事が気になった。その沖田の舎弟が逃げて応援を頼みに行くんじゃないかと。

 だが健はためらう事なく沖田との間合いを計りながら、いきなり跳躍した。

 その瞬発力と高さは人とは思えぬ程の高い跳躍だった。


 あっと云う間に沖田の斜め後方に居た男の右肩を蹴り、更に後方に着地した。

 蹴られた男は、もんどり打って健の前に仰向けに転がった。

 と、次の瞬間に健の右の正拳が、男の腹に叩き込まれて男は、くの字に身体を折り曲げて転げ廻った。

 その間一〜二秒。沖田が振り返った時には舎弟は転げ回り戦力外になっていた。

 沖田は表情が暗くて顔は見えないが青ざめているだろう。空手を使うのかと思った。

 「おのれ!!」


 しかし、それ以上の叫びは無かった。

 呼吸ひとつの仕方でも乱したら、やられると思ったのだろうか沖田は健と間合いを取りながら上着を素早く脱いだ。

 いよいよ本腰を入れる相手と悟ったたようだ。

 その距離三メートル、間合いの取り方も互いに熟知していた。

 沖田もボクサー崩れなのか足をリズミカルに動かした。

 だがリングと違って足場が安定しない。


 また間合い計る以上あまり近づいても、それ以上離れても攻撃と防御が難しいのだ。

 今度は足場が悪いのか、沖田は摺り足で間合いを計っている。

 そして一歩前に踏み込んだ途端に跳躍した。身体を斜めにして右足が飛んで来た。

 次の瞬間には、沖田が着地する寸前にバックフックが再び健の後頭部に飛ぶ。

 健は思わず、しゃがんでかわすがバランスが少し崩れた。ただのボクサーじゃない。

 チャンスとみたか、すかさず続けざまに右キックが健の太腿の辺りに炸裂した。


 「うっ」さすがの健も少し堪えた。

 (なんだ? 奴はキックボクサーか)

 健に考える間もなく矢次に繰り出してくる。今度は左キックが飛んでくる。

 健は身体を後転し二回転した。その反動で三メーター先に着地して体制を立直す。

 沖田はこの好機を逃すものかと、すかさず詰め寄ると。右ストレート、左フック、身体を低くして下からのアッパートと繰り出す。

 だが森林の木が邪魔をする。健も必死でかわすが防戦一方の状況だ。

 かわされても、かわされても沖田は攻撃の手を緩めない。ボクサーで云うラッシュ攻撃だ。

 そして次の右ストレートが健の顔面を狙って飛ぶ。 


 健の左手が垂直に立てて肘で交わすと思った瞬間。

 その左手が沖田の腕に絡みつくように、押さえ込むと同時に沖田の右肩を引き寄せて、健の前膝蹴りが沖田の顔面に炸裂した。流れるような連動した技だ。

                

 右腕を引き寄せての膝蹴りは受身の取りようがない。沖田の鼻から血が飛び散った。

 それでも沖田は反撃して来た。普通の人間なら鼻を押さえて、うずくまる処だが沖田は違った。

 体制を立て直すと今度は足の攻撃に切替えて足蹴りが飛んでくる。

 だが先ほどよりスピードが落ちた感じがする。沖田が息をつく暇もなく仕掛けてから三分程経っている。

 ボクシングで云えばランド終了のゴングが鳴る頃だ。


 しかしこれは試合ではないルール無用の死闘だ。負ければ只では済まない。

 五分経過した沖田には未知の時間だ。呼吸が乱れて来たハァハァと息が荒い。

 だが健は呼吸一つ乱れてはいなかった普段の訓練の賜物だ。合気道は本来、攻撃型の柔術ではない。

 相手の攻撃に応じて対処する。相手の力を吸収して逆に技を仕掛ける。

 だから思った程に体力は消耗しない。健は合気道だけじゃなく、空手も有段者であり両方を兼ね備えている。

 受身と攻撃の両方が出来る強みがある。


 健は軽くステップバックして間合いを計る。沖田も息を切らしながらもズリズリと迫ってくる。

 沖田も相手が合気道だと見抜いたようだ。先ほどの攻撃とはあきらかに違う攻撃だ。

 呼吸は荒いがスタミナはあるようだ。離れて鋭いジャブ攻撃、軽いステップでリズムを取る。

 これでは健も捕まえにくい。やっかいな相手だ。沖田は作戦が成功したかのようにリジムカルに動く。

 打っては離れ打っては離れ、徐々にペースを掴みつつあった。

 「どうした? かかって来い!」

 沖田は健を挑発する。だが健は何を思ったか無防備で沖田との間合いをススーと詰めた。

 その健の動きに沖田は驚いた。沖田は矢次にパンチを繰り出すが。

 だが、当たらない。焦った沖田が体力に任せて、健を捕まえて倒そうと腕に力を込めて襲い掛かって来た。

 だがそれはワナだった。健は自ら身体を沈めて沖田の足を払った。


 沖田がバランスを崩して膝から崩れた。次の瞬間、沖田の倒れながらのパンチが健のボデーに・・・しかし健は膝で、その攻撃をブロックした。

 二人は倒れた状態のままの応戦になった。それが沖田には最悪の状態になった。

 キックボクサーは倒れての攻撃は手足の攻撃は半滅する。寝技に持ち込まれたら勝ち目がない。

 あっと言う間に健がバックを取って、右こめかみに健の手刀が炸裂した。

 続いて耳を狙っての手刀は、脳を粉々にされたような衝撃だった。

 「ギャアー」

 沖田は悲鳴を上げた。しかし健の攻撃は容赦なく沖田を襲った。次に肘打ちだ。

それでも、ふらついて立ち上がった。しかし無防備だ。沖田の右足へ回し蹴りが決まる。

 次に沖田の右腕を地面に固定して思いっきり膝を落とした。

 今度は空手の技だ。ボキッと、鈍い音と共に骨が折れたような嫌な音が暗闇に響く。

 ガア〜〜と獣のような悲鳴を放つ沖田。


 勝負がついた瞬間だった。沖田は右腕が折れて戦意喪失した。

「だっ誰なんだ!?・・・お前は」

 沖田は自分が負けた事が信じられないばかりか、この男の真意が読めずに恐怖の眼で健を見る。

 薄暗くて良く顔が見えないから尚さら恐怖を覚えた。

 「そんなに知りたいか沖田! お前が今までやった事を思いだせ!」

 そう言われて沖田の思考回路が過去に向かって回転した。恨まれる人が多すぎるのか? 

 しかしこの男の事は沖田にはどうしても頭に浮かんで来ない。

「お前の事は知らん・・・何も・・・」

 「そうか、じゃ教えてやろう。お前と宮崎と浜口三人で和尚夫婦を殺害した。おまけに寺を燃やして逃げた。その縁の者と言えば分かるだろう」

「なに、するとお前はあの道場の者か」

「そうだ。その師匠である要山和尚夫妻の仇のお前を許さん」


殺し屋、沖田と死闘を演じる健。だが沖田はキックボクングの経験がある。

だが敵は10人くらいいるだろうか、それでも健は立ち向かう。

最終話まであと2回。果たして結果は?

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