チーム分けと会議
休日明けの学校。足取りは重く、学校に到着し帰れない状況に陥るまでこの重さは続くだろう。
今日はついにチーム分けの発表日。
クレアと別のチームになれるか昨日の夜から落ち着かなかった。それに兄と出会った後、普通にクレアとデートを楽しんでしまった為、本当にクレアの好意を他人に向けるか葛藤もあった。
けれども、滅ぼされるわけにはいかない。だからクレアと別のチームになれるか緊張しているのだ。
そのまま思い足取りで学校に到着すると、毎度のことながら掲示板に人だかりが出来ていた。
例年では全学年で100人程度の参加率だというのに、集団を見るからにどうやら今年は多いようだ。
これまた毎度のことながら人を掻き分け先頭に立って確認する。
紙は赤組と白組の二つに分けられていた。
どうやら、小規模で複数のチームに分けられる例年とは違うらしい。二分の一かと動揺しつつも紙を食い入るように見つめる。
それぞれ大きな文字で赤組総大将にクレア。白組の総大将にはアリスの名前があった。その下に将の名前が書かれており、赤組にはよく知っている名前がキユウとユスク、白組にはミストの名前と俺の名前があった。
視線を外し、ホッと胸をなでおろす。
幸運に恵まれ、クレアの敵となれた。念のためにクレアと同じチームになった時、チームを内から崩して行こうとプランを考えていたのだが、実行するには難しいのでやはり敵になれてよかった。
さて、敵と味方の戦力を確認しなければと視線を戻す。
クレアのチームには見ない名前が多く、逆にうちは見たことのある名前が多い。
二、三年は相手方に多く、一年が味方に多いというわけか。一概には言えないが、戦力的にも劣っている可能性が高い。
また、紙にはどこを探してもアルフレッドの名前がなかった。キユウやユスクが参加しているというのにおかしな話だ。
まあでも、一つ障害が取り除かれただけでもいいことか。
そのまま、読み進めると一番下に『将以上の生徒は放課後、それぞれのサロンにて会議を行うように』と注意が記されていた。
ということは、放課後にミストとアリスと出会うことになるのかと酷く気を落としつつ、教室に向かった。
***
教室の扉を開けると、クラスメイト達がの視線が集まり、しんと静まり返った。そしてどこか気まずそうに視線を外す。
えっ? なにこの反応?
戸惑いつつもおずおずと自分の席に向かった。すると、今にも倒れそうなほどふらふらとした足取りでクレアが近寄ってきた。
いつもの艶やかな髪は掻き乱されがぼさついている。
「クリス……」
クレアは赤い目で俺を見つめ、俺の名前を呼んだ。
うん。大体わかったわ。このクラスメイト達の反応もクレアの反応も俺とクレアのチームが違うことが原因だろう。
それにしてもだ。結果を見てから、恐らくまだ数十分も経ってない筈だよね。なんで、リッチーもびっくりするような速さでゾンビが出来上がっちゃってんだよ……。
「クリス。私……」
今にも泣き出しそうなクレアの顔を見ると、さっきまで喜んでいたことに罪悪感を感じて励ますことにする
「だ、大丈夫だよ! 今回は別のチームになったけれど来年とかあるじゃないか!」
「でも……」
「それに、一度本気のクレアと戦ってみたいからさ!」
「!? そ、そうか! クリス! それなら仕方ないな!」
クレアは一転元気を取り戻した。
結局、クレアは自分より強いかもと思い込んでいる相手に本気でかかってこいと言われたのだ。己の強さで婚姻に苦しんだクレアが意中の相手にそう言われれば嬉しいに決まっている。
どうしようクレアを扱うのに慣れてきてしまった。
クラスメイト達は俺によくやったという眼差しを向けてくる。模擬戦の敵味方にかかわらずこんな状態のクレアを見るのはいたたまれなかったのだろう。
これで、クレアを気にせずに模擬戦に集中できる。
****
放課後、俺は指示通りにアリスのサロンに来ていた。アリスのサロンでは王族の部屋とは思えないほど質素で、中央に大きな長机と、それを囲む椅子だけであった。
俺はミストやアリスに絡まれると面倒なので、二人から離れた端の席に座っていた。
それから少しして椅子に将の各員が座り、席が埋まると、お誕生日席に座るアリスは口を開いた。
「それでは、今から会議を始めたいと思います」
「お待ち下さい! アメリシア様!」
ようやく始まるのかと思いきや、隣に座っていた男が立ち上がり異を唱えた。そして、俺を指差して続ける。
「この者はクレア=アルカーラ様と深い仲にあるという噂があります! この者を会議に参加させてはならないと思います!」
また面倒なことになってきた……。





