↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
197/229

こうしょう

「……なるほど、そういった事情で戦になるというのですね」


 会議の翌日。応接間のソファーに座るサザビーを前に、俺とマクベスは冷や汗を流していた。


 現状の説明をしにサザビー商会を訪れ、そしてし終えた今、どのような反応が帰ってくるか気になって仕方ない……だけではない。むしろ、わけではない。別の理由があって、冷や汗が止まらない。


「この領で商売をする者としては、そのような情報、もっと早くに知りたかったんですがね」


 サザビーに冷たい目を向けられて、より冷や汗が冷たくなったように思えた。


 隣に座っているマクベスに視線をやると、明らかに逸らされる。君主を守る気概がない家臣の頼りなさに内心で嘆きつつ、君主らしさのない情けない笑みをサザビーに向けた。


「現状を把握する時間が欲しく……」


「そうであっても、ある程度の説明は出来たのではないですか? 少なくとも私が門前払いされた日のどれかは」


「申し訳ございませんでした」


 俺とマクベスは深々と頭を下げた。


 馴染みの商人相手に、ここまで低く出るのもどうかと思ったが、そんな考えはすぐに消えた。

 サザビーからの『状況を説明してくださいませんか?』というお願いに「最速で明後日答えるよ」と2、3回答えたのである。自分でしたことながら、怒られて当然だと思う。


「私は、一生、明後日にならないのかと思いましたよ。明日はくるのに、明後日はこない世界、どうでしょう? 物語にすれば売れそうでしょうか?」


「ははは、それはチープだけど、売れそ……いや、ごめん。ほんと、すいません」


 サザビーの目が冷たすぎて、笑ってごまかす方向から、謝る方向へ軌道を戻した。


 それからもペコペコし続けていると、サザビーはふいに立ち上がった。ドアまで行ってノックをすると、扉が開いて使用人が部屋に入ってくる。


「お客様、どうぞ」


 使用人はそう言って、紅茶の入ったティーカップを俺たちの前に置く。そしてくるりと踵を返して、部屋から出て行った。


 目の前で湯気を立てる茶を見て戦慄する。


 毒とか入っていないよね?


 疑うのは、サザビーを怒らせたって理由だけじゃない。暗殺される可能性が大いにあるからだ。


 今の情勢において、俺の価値は高い。数日前に嗅ぎつけていたのだから、もう既にサザビーが情報を掴んでいてもおかしくはなく、ドレスコード家の当主を崩すことを条件に、オラール家と既に取引している可能性もあるのだ。


 そういった事情を鑑みて、護衛にマクベスを連れてきたわけだけど、


「……マクベス?」


 マクベスの顔を見ると、首を振られる。飲んではダメ、というより、毒味をしたくない、ということだろう。ほんとつっかえ。


「別に毒なんか入ってませんよ」


 冷たい口調でそう言われた。気まずすぎて、愛想笑いも出ない。ただただ目を伏せる。


 一体どんな顔をしているのだろうか。


 サザビーからすると、怒り心頭の中、出したお茶に毒が入ってないか怪しまれたのである。怒りを通り越して、こいつらは正気か、と思っているかもしれない。


 地獄のような無言の空気がしばらく続き、やがてサザビーのため息が静寂をやぶった。


「クリス様、本題に入ってください」


 サザビーに問われて、顔をあげる。まっすぐに目を向けられており、緊張に体が強張った。


 たしかに、本題はある。それも一つ目にやらなければならないこと、大金を得るための策だ。


 交渉に失敗することは許されず、話題を切り出すには、相手が受け入れやすい雰囲気の時の方がいい。少なくとも、正気を疑われている時にすべきじゃあない。


 どうすべきか迷っていると、サザビーは口を開いた。


「出された茶にすら警戒する。つまりは、危険を冒してまで、私に会いに来る価値があるのではないですか?」


 どうやら全て見抜かれており、正気であることも理解されているようだ。だとしたら、誤魔化さず、本題を切り出し方がいい。


 俺は頷いて、口を開く。


「そうだよ。今日、訪れたのは頼み事があってね」


「頼み事ですか?」


「実は、戦争するにあたって大金が欲しいんだ」


 そう言うと、サザビーは「はあ」と息をはいた。


「そんなとこだと思ってましたよ。戦争することになった領主が商人訪れるのです。それしかないでしょう」


 サザビーは「それで」と続ける。


「借金しにきたというわけですか?」


「貸してくれるの?」


「危険と見返りが見合ってませんので」


「だよねえ」


 やんわりと、借金の申し込みは断られてしまう。それもそのはず、得られる利子は微々たるものでしかなく、勝つか負けるかわからない領主に金など貸せるはずがない。莫大な利子をつけるというなら話は別だが、それでも安定択をとるのなら絶対にしない取引だろう。


「案外、すんなりと呑み込むのですね。頼み事は別のことでしょうか?」


 頷いて質問に答える。


「ああ。税金を徴収するために、議会を興したくて。それについて、サザビーに協力して欲しいんだよ」


活動報告あります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



hsub8z5zdno020cehytofvvfdchw_iga_9s_dw_2
コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。