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「ここに神田妙を殺した犯人がいる、と?」
入り口に仁王立ちし、権藤警部が声をあげた。篠塚と甲斐はゆっくりと移動し、権藤の側まできた。
「違う」
「違う?」
「暗号を盗んだことで、犯人はこの内輪に絞ることができる。だが、犯人には暗号を解くことなどできない。これは論理的ではないが、確実なことだ。なぜなら、私は犯人に直接聞いたのだから」
「直接!」
坂井寧々が驚いた声を出す。
「昨日の祭りのとき、私は犯人に連れ去られた。あの時はうまく逃れることができたが。私にも時間がない。それに私は犯人に同情する気もなければ、かばうつもりもない」
離れの金庫室が静まる。
「慧眼なお嬢さん。今あなたは違うと言いました。神田妙を殺した犯人と、上月松一を殺した犯人は別だと、そういうことでしょうか?」
「その考えがそもそも間違っている。神田妙は殺されてなどいない。先ほどの手紙の言葉を借りるならば、尊敬する神田勇治郎に失望され、そこにあった凶器で、果てた、ということだ」
「自殺、だと?」
「そう考えて残される矛盾は凶器の銃の行方だけだ」
「はい。確かにその通りです。ではこの中の誰かが銃を持っていったと」
「最初の事件が起きた時、犯人が身内にいる可能性は考慮されていなかった。その時に全員の持ち物を調べていたら、すぐに凶器は見つかったであろうな。それに、警察が調べれば、上月松一を恨んでいた人間がこの中にいるだろうことはすぐに分かるだろう。だが、一つ目の事件との類似性もあり、同一犯と考えるものがいれば、犯人は安全だともいえる」
「誰ですか?」
「それは警察の仕事だ」
「ですがあなたは犯人を知っている」
「証拠がない」
「誰なんだ!」
「誰なの!」
神田剛と木林真雪が同時に声をあげる。
「甲斐よ、少し想像せよ。いや、皆も思い出してくれ。妙が死んでいた部屋の惨状を。扉の外からでいい。鏡の前に、血だらけで倒れている」
甲斐は聞いた話でしかないので、確かに想像するしかない。
「甲斐よ、妙は生きているか?」
「は? そんなこと分からない」
「死んでいるか?」
「分からない」
「では、どうして血だらけで倒れているのだ?」
「誰かに襲われて?」
「この部屋で何かがあったのは確実だ。そして皆が、その直前に大きな音を聞いている」
「うん、聞いた。確か扉が勢いよく閉まるような」
「そうだ。あるいは、何かが弾けるような音がした、そう証言するのが普通だ。だが、一人だけ、銃で撃たれて倒れていたと証言したものがいる」
甲斐は昨日の朝のことを思い出す。神田妙の部屋を見せてもらったときのことだ。
「そして、そう証言したものに、私は昨日の祭りで脅迫された。だが、何一つ証拠はない」
「誰なんだね」
再び声をあげた神田剛に、篠塚は俯く。甲斐は代わりにその人物の名を告げた。
「木林さゆりさんです」




