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六枚銅貨は寄せ集め、彼を造る四つの調べ。
お尻をすべて掛け合わせ、狂った数字の協奏曲。
だけど大事な六枚の、最後の行は失われ、
旅に出たと、かの人は言う。
どこへ行っても六枚は、最後の最後に現れる。
神田妙は机に置かれている神田勇治郎の残した暗号文を見ていた。なぜかここだけ五行しかない。そして六を作る四つの調べ。六を分解すれば、一、二、三、六のことだろう。一、二、三、六連のそれぞれのお尻をすべて掛けあわせれば、暗号の答えとなるのだろう。そして六行目は最後に存在している。
妙は立ち上がる。
左のこめかみをタップしながら計算をする。それらしい数字だ。どうしても先に金庫を開けなければならない。弟や妹に負ける訳にはいかない。きっとお祖父様も、そのようなことは考えていないはずだ。そしてもし負ければ、お祖父様は失望するだろう。あるいは逆か。いずれにせよ、金庫を開ければはっきりとする。
妙はそのまま自分の部屋を出て、金庫がある部屋へと移動する。途中で誰とも合わない。妹の珠は友達と遊んでいる。弟は先日あの学園から夏休みということで戻ってきて、おそらく父と話でもしているのだろう。母はきっと台所だ。家政婦を雇っているのだから、彼女たちに任せればいいと思うのだが、料理だけはいつも母の領分だった。私には無理だろう。その家政婦とも合わない。
そのまま金庫の前に座り、ダイヤルを順に合わせる。
カチリ、と今までとは違う音がする。取っ手を持ち手前に引っ張ると抵抗なく金庫は開いた。金庫の中に光が差し込み、中の様子が分かる。といっても、非常にシンプルだ。まず目についたのは封筒だ。それを取り出して、妙は中を見る。手紙のようだ。おそらく勇治郎からのだろう、非常に几帳面な文字が並んでいる。
「まず初めに、どうやら金庫の鍵を開けることができたみたいだな、さすが私の孫であると褒めておこう」
文面はまだ続いていて、それを目で追う。遺書だろうか、とも最初は思えたが、どうやらそうではない。これはむしろ……
すべてを読み終えてから、金庫の中をもう一度見る。おそらく、手紙が言っていたのは、あれのことだ。
改めて見ると黒光りする、それ、は怪しいまでの存在感がある。そして強い誘惑がある。早くこれを持てと訴えているように。
私はそれを手に取ろうとして腕を伸ばす。その、黒いオートマチックを。
ガタ。
突然の背後の物音に驚き、私は振り返った。




