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「先程お前は、確かに誰かがダイヤルを回していました、と言ったであろう」
神田珠は篠塚桃花の髪を梳きながら、ええ、と頷く。
「その日は、誰が鍵を回す番だった?」
「妙お姉さまです」
「そして、鍵が開けられたのは……」
「お姉さまが撃たれる前」
「もし金庫が開けられたのだとして、その後閉められたのだとしたら、再び番号を合わせることができるのは、鍵を開けてから二十四時間後なのか、それとも鍵を閉めてから二十四時間後なのか、お前は分かるか?」
「え……えっと、どういうこと?」
「今の説明で分からないか。まぁ、問題は金庫がすでに開けられた後なのか、ということだな。つまり、妙は暗号の答えをすでに得ていたのか」
「そんな、まさか」
「それが動機かもしれないだろう。妙が金庫を開けることができるのだとしたら、妙を脅して中身を奪えばいい。あるいは実際にそうしたか。だが、だとしたら部屋で撃たれた、というのが分からぬな。そのままあの金庫があった部屋でいいじゃないか」
珠が相槌を打つ前に篠塚は続ける。
「それに鍵の暗号を持っていく必要がない。支離滅裂だ。それを持っていったのは、これから金庫の中身を奪う、と見せかけるためか? それなら暗号を解く必要がある。あるいは、暗号の答えだけを妙から聞き出した……いずれにせよ、どうもすっきりした展開ではない。犯人にとって金庫は重要なファクターではない。にも関わらず、金庫が事件にとって重要なファクターになっている、か。警察もそう考えたからこそ、金庫の中を確認すべきだ、という状況になっているわけか」
納得したのか、篠塚は大きく一度頷いた。
「桃花ちゃんは、暗号のことは、分かってるの?」
「答えが、ということか?」
そう、と珠が相槌を打つ。
「一口に暗号と言ってもいろいろな種類がある。だが、その中でもシンプルな暗号といえるだろう。求める答えがシンプルに書かれているのだから」
「へ?」
「もちろん、多少の細工は必要にはなるが」
「えええ?」
「だが、その答えで合っているのか、という保証はない。あの暗号から導き出せる数字など無数に存在する。それでも、おそらく正解と思われる数字は想像できる。それがもっとも神田勇治郎らしい、とも言えるからな」
「お祖父様らしいって」
「……」
そこで篠塚は口を閉ざす。後ろから珠がどうしたの、と声をかけてくるが、まるで聞こえていないように。




