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 【春陽】


 監督に呼ばれた。


「桜庭、オファーが来ている」


夢だった。

ずっと夢見ていた場所。

監督は続けて言った。


「今のオファーを断るともう2度はないかもしれない、今のオファー条件もかなり厳しい」

 

真っ先に浮かんだのはキラだった。

俺が海外に行けばさらに会えなくなる。

だから、キラに話した、話して別れる決断をした。


「私も一緒に行く」


「……それはできないだろ」


キラは俺についてこようとした、それはキラのキャリアを潰すことになることだと知っていた。


「いいよ! そんなの! ハルと一緒にいたいんだもん!」


キラは続けた。


「だって、あの日、言ってくれたじゃない? 離さないって」


それは高校時代に約束したものだった。


「キラ分かってるだろ?」

 

「わかんないよっ! わかんない……」


キラは分かっていた、俺も分かっていた。キラはバンドメンバーたちを捨ててまで俺にはついてこないと。


「わかんない……、分かりたくない」


キラに別れを告げた帰り道。


「送っていく」


「ううん、大丈夫、1人で帰れるから」


「……分かった」


それまでずっと手を繋いでいたのをを離さなければいけない。

でもそれができない。

離したくなかったから。


「ごめん、本当にごめん」

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