1
[春陽]
3歳から始めたサッカー。
地元の弱小チームで双子の妹である碧と一緒に切磋琢磨していた。
12歳になった時クラブチームが大きい大会で優勝を果たした、監督はそれに喜び親たちもこんなことはもう一生ないかもしれないと優勝のご褒美として何故かアメリカ旅行に連れて行ってくれることになったのが12歳の夏休みだった。
初めてのパスポート、初めての飛行機、他のチームメイトたちはお祭りのように騒いでいたが1人だけ喜んでいない人物がいた。
「いい加減機嫌直しなよ、ハル」
アメリカ旅行に行けばサッカーの練習が出来なくなる。
当初アメリカに行く事を拒否した春陽。
そんな春陽を無理やりアメリカへ行かせたのは春陽と碧2人の母だった。
「今回行かなかったらサッカーでの遠征代は出さないから」
ほぼ無理やりすぎる交換条件だったが春陽はそれを承諾しアメリカへ向かうことになったのだった。
終始不機嫌なのは変わりなかったが。
そうこうしているうちにアメリカへ着いたチームメイトたちと監督やコーチに付き添われながら観光地を巡った。
「あれって、春陽?」
春陽を除いて
「監督! 春陽がいません!」
NYの中心に碧の声が響いた
チームメイトたちから少し遠く離れた場所にいた。
視界にいたはずのチームメイトたちがいなかった。
元の場所に戻れば会えると思ったがそうはいかず気づけばサッカー場のような場所に辿り着いていた。
コロコロと足元にボールが転がってきた、それを手に取ると遠くの方から
「ねー、ボールこっちに蹴ってくれない?」
同い年くらいの女の子が英語で話しかけてきた。
英語で何を言っているか分からなかったがボールを2日以上触っていなかったせいか触りたくてしょうがなかった。
それに彼女は気付いたのか「サッカーやるの?」と聞いてきた。
次に彼女は日本語で話しかけてきた。
「日本話せるの?」
「うん、お母さんが日本人だからね」
彼女はキラと言った、俺たちはすぐに仲良くなった。
俺たちはサッカーの話で盛り上がった、どの選手が好きか?どこのチームを応援しているか?話は尽きなかった。
いつしかキラは俺をハルと呼んでいた。
「ハルはどうしてアメリカに来たの?」
「俺の所属してるサッカーチームが優勝して」
「ふーん、で? 他の子達は?」
「……」
「もしかして迷子?」
「……」
「他の子達がどこにいるのか分からないの?」
「みんなといた場所は?」
「分からないのね」
「ここに辿り着く前にいた場所は?」
キラは次々に質問をしてくれた。
「あー、電光掲示板?」
「ん! タイムズスクエア!!」
「多分?」
「そっか、そっか、なら一緒に行こう? そこでみんな待ってるかもだから」
キラは俺の手を引いてタイムズスクエアまで連れて行ってくれた。
「ハル!」
遠く離れた方から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「碧!」
それは間違いなく碧の声だった。
その時、なぜか碧の俺を呼ぶ声に安心した。
コーチや監督、チームメイトたちの顔を見て涙が溢れてきた。
「よかったね」
キラの優しい声がさらに涙を溢れさせた。
「えっと、君は?」
監督はキラを不思議そうに見つめた。
「私キラ!
彼のことハルのこと道案内してきました!」
「おー、そうかそうか、いやーそれは本当にありがとうっ!それにしても日本語上手だなぁ」
「へへ、ありがとっ」
「私、もう行くね
これ私の番号、アメリカにいる時、困ったときとか案内して欲しい時、今回みたいに迷子になったら連絡してよ」
「うん、ありがとう」
それが俺とキラとの出会いだった。




